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言葉を捨てた少年。

ある日少年は、誰かの言葉で傷付いた。

暫く引きずり、少年は正しく日本語を使おうと学んだ。

ある日少年は、誰かを自分の正しい言葉で傷付けた。

辛そうに苦しむ誰かを見て、相手を思い遣る柔らかい言葉を使おうと意識した。

ある日少年は、誰かが誰かを罵声する声を聞いた。

なんて醜いんだろうと、その誰かを自分の反面教師にして、自分はそうなるまいと決意した。

ある日少年は、弱音を吐いて親友に心配を掛けてしまった。

心配することがどれだけ心を落ち着かせないものかを知っている少年は、申し訳なくなって弱音は吐くまいと決心した。

ある日少年は、弱音も吐かず罵声もせず、正しく柔らかな言葉で会話をしていると、怪しい、何か企んでいる。本性が見えないと次々に陰口を叩かれるようになった。







その日から少年は、言葉を発することをやめた。

寂死

さびしいよ、ねぇ。
さびしいよ、ねぇ。
さびしいよ、ねぇ。
聞いてよ。これが僕の心の本音。

さびしいよ、ねぇ。
さびしいよ、ねぇ。
さびしいよ、ねぇ。
ねぇねぇきみがいない、どこにもいない。

起きたいよ、ねぇ。
起きたいの、ねぇ。
起きたいの、に、起きないの。
きみがいない、世界がいらない。

薄れていく意識。

嗚呼、僕はもうすぐ君のところへ。

好きな色

どんないろーがすき!



「お母さんが居なくなって初めての朝

お父さんが慣れない手付きで作った朝ごはん

しかしトーストは見事に焦げており

照れたように焦げを削っている

見るからに空元気なお父さんの表情の色。」




………ごめんどこから突っ込めばいい?

絵を描く少女

私は絵を描くのが好きだ。

画家、とまではいかないけれど、なんとか絵で食いっぱぐれない程度には設けている。

描きたいもの、が、浮かぶ時もある。
あれを描こう、こう描こう、

あ、こんな色の動物も面白いな。

そんな調子だ。

リクエストを貰うより、自分の中に浮かんだ世界をアウトプットする方が得意で、だからイラストレーターと呼ばれるには少しだけ図々しい性格な私。

もちろん、ぺーぺーにだって舞い込んでくる仕事はある。
こんな感じ、あんな感じ。
大まかなリクエストを、私の見える世界にしてキャンバスに描き出すのだ。

最近の絵描き仲間達は、パソコンを使って鮮明な色や線を表現することに長け始めた。

それでも尚私はアナログで、目の前の真っ白な紙に表現する。

鉛筆の走る音、消しゴムの摩擦熱、ポロポロ生まれる消しカスに、揺れる机。
私はよくコピックと呼ばれる着色料を使っているのだけど、それで着色するときはキュッキュッと鳴る。

この全てのシチュエーションが揃って初めて、私は絵を描いている、となるのだ。

その間は興奮する。
奮闘する。

いつの間にか時間は過ぎていて、なんなら翌日になっているときもある。

私はそれだけ、絵を描くことが好きなのだ。

気分が乗らない日は外出をする。

ネタが尽きれば誰だって何も出来なくなるでしょう?

そうしてまた、集めてきたワクワクやドキドキ、不思議をキャンバスに吐き出すのだ。

これが私の生き甲斐。

そう呼べるのって、なんだか素敵だって、
貴方もそう思うでしょう?



再会 #3

その後トキハルさんと再会したい、なんて下心を持ちながら、空いた日なんかは直ぐBARに行くようになった。

そのせいかミチコさんとも凄く仲良くなって、常連さんなんかとも顔見知りくらいにはなれた気がする。

「じゃあアキちゃんはビアンってわけでもないんだねぇ」

「そうなりますね」

「それでも女の子選んじゃう気持ち分かるわ〜。女の子可愛いもんね。だからいろんな女の子と出会いたくてBAR始めたのがそもそもだもん」

「そうなんですか!?」

「そそ。まあ今となってはいろんな人の出会いの場になれて、隠さないで話せる憩いの場となってるからもうアタシ嬉しくってさぁ。マジで開いてよかったなって思ってるよ。」

そう話すミチコさんの笑顔がとても輝いていて、親のコネで妥協で入社した自分としては、そんなミチコさんに憧れのようなものを抱くようになっていた。

好きな事を稼ぎにしてる人って、こんなに輝いているんだ。
そう思うとわくわくすらした。
いいなぁ。
なんて、ほろ酔いでふわふわする頭で、他のお客さんの相手をしているミチコさんを眺めながらにんまり笑顔を浮かべていると、隣に誰かが座ってきた。
確かに今日は金曜で人も多い。
カウンター席の唯一の空席だったから仕方がなかったんだろうな。
ご挨拶くらいしなきゃ。
なんてへらりと笑顔を浮かべて隣を見ると、そこには会いたくて逢いたくて仕方がなかったトキハルさんその人がいた。

「トキハルさん!?」

「わあっ、びっくりした。そんな驚かなくても…」

「あ、すみません。ちょうど会いたいって思ってたから」

「あはは、俺に?そうなんだぁ、ありがとう」

酔ってるせいか素直に零れ落ちる言葉に、トキハルさんは少し照れ恥ずかしそうに笑った。
それがまた可愛くて、抱き締めたくなるのを必死に堪えてカクテルを一気飲みした。

「あ、トキハル久しぶり〜」

「最近仕事が立て込んじゃって。ミチコさん、適当にカクテルもらえる?あとアキちゃんにも」

「アキちゃんもう呑んだの!?強いねぇ。あはは、待っててね」

トキハルさんが僕のドリンクも頼んでくれた…!

なんだかドキドキが治らなくて、どうしていいか分からずにとりあえずありがとうございますだけ伝えた。

「アキちゃん、最近よく来てるの?」

「あ、はい。なんとなく居心地がよくて…」

それからトキハルさんとの会話が始まって、此処での過ごし方や、あと軽く仕事の話し、人間関係のグチ、過去の恋愛、様々な話で盛り上がった。
カクテルを飲みながら、スナックを時折挟みつつ、我ながら上出来だと思うくらいには話せたと思う。

まあ、トキハルさんが来る前から何回かお代わりしていたカクテルのおかげもあるのかもしれないけれど。

そんな会話の中で、ひとつだけ響いた言葉があった。


「俺さ、FTMなんだよね」


その言葉の衝撃で、目が丸くなったのは言うまでもない。