コスモスを見て、綺麗だね、と君は言った。
大きいもので、君の鼻先を擽るほどに成長しているコスモスは、君を彩るのにちょうどいいスパイスになった。
笑顔でコスモスと戯れる君。
愛おしい。
お土産に一つ持って帰ろうと手を掛けると、驚いたような表情で僕に迫ってくるもので。
慌てて後ずさった僕のすぐ側に、君の顔が。
「千切っちゃだめだよ!」
「え、…あ。」
「可哀想だ。」
「君によく似合うので、一差し持ち帰ろうかと」
「それはだめだ。ここに居てこそのコスモスだ」
吐息の掛かるほどの距離。
そんな自覚のない君は、僕が手を掛けようとしたコスモスに愛を向けている。
まるで三角関係。
君が僕の恋する対象だと知らずして、君はこのコスモスに愛を魅せた。何百と咲くこのコスモスに。
恋とは、とてもじゃないがおしとやかではない。
博愛主義な君が、幾万と存在する生物に愛を向けているのは存じ上げている。
それでもここで、恋をしたのだ。
コスモスに向ける笑顔の君に。
コスモスと戯れる笑顔の君に。
まさか最初の嫉妬相手が、コスモスだなんて思わなかったよ。
なんてね。はは。