優しすぎる君に甘えすぎちゃうから…
でも譲れないんだ。



「翔ちゃん図書館行かんと?」

「あ、うん。今行く」

優は俺と違って勉強もスポーツも出来る器用なやつ。
俺もそれなりに出来る方だと思うけど優には敵わない。

「翔ちゃん理系のなにすんの?」

「あ〜ほら、俺医者になろうと思って」

「え?まじで?すごいじゃん!」

「すごかないよ〜」

俺が医者になろうと思ったのは……
小さい時に公園の滑り台から落ちちゃったあいりを見て、泣きわめくあいりの隣りで俺も泣くことしか出来なくて、でも優は、
"あいりちゃんだいじょうぶだよ"
って言ってあいりの傷口を水で洗い流してあげてて、すごいと思ったのと同時に自分が悔しかった。


中学の時も、あいりが自分の気持ちに我慢出来なくて泣いてた時、俺は何もしてやれなかった。
だけど優は
"あいりは笑ってなきゃあいりじゃないよ"
って魔法をかけたように泣き止ませてた。



だからせめてあいりを一番に助けれる人になりたかった。


俺だってバカじゃないからわかってるよ。
大好きな人が誰を見てるのかぐらい。

だけど俺がこの恋をやめられないのは
優の優しさに甘えすぎてるから。

口には出してないけどきっと優は
俺があいりを好きだってわかってる。

これじゃダメだってわかってる。
わかってるけどもう少しこのまま
少しでも後悔しないままあいりのこと
想わせててほしいんだ。



何もあいつには敵わないけど
だけどこれだけは勝てるから。
誰よりもあいりを見てきたのは俺だと。