スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

何の問題もありません



仕事中の事故で薬指を欠損し、職場を退職した主人公「わたし」。
街に出て職を探していると、なんでも標本にしてくれる不思議な標本室の求人募集を見つける。
その標本室で働く唯一の人間であり、標本技師である弟子丸氏。
視線がとても印象的で、危うげですきのない造形をした弟子丸氏に靴をもらい、見つめられるたびに、何かが少しずつ狂い始める。

とか言ってみる。


すごく綺麗な文章。
言葉選びが丁寧なのかな。
内容も美しく、わずかに恐怖を含んでいる。
そのアンバランスさがどちらも際立たせているんだろうと思う。

読み終わった直後に残る、不快感。
言い表せぬ置いていかれたような疎外感。
電車の中で、思わず眉をひそめてしまった。

この本には、私の好きな推理小説のように明確な答えは書いていない。
主人公の行動によって、何が起こったのか、何が変化したのか。
明確な答えを、読者には知る術がない。
できるのは、想像することだけ。
最初は不愉快だった。
しかし、時間がたてばじわじわとそのミステリアスな魅力に囚われる。
その想像が楽しくなってくる。

「自由になんてなりたくないんです。
 この靴をはいたまま、標本室で、彼に封じ込められていたいんです」
物語を象徴するセリフはこれだろうと思う。
でも、
「何の問題もありません」
主人公が、不安がる依頼人たちにかける言葉。
やけにこれが印象に残っている。
問題しかないだろうと、思いながら読んでいたからかもしれないけど。


フランス映画苦手なんだけど・・・見ようかな
前の記事へ 次の記事へ
カレンダー
<< 2024年03月 >>
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
最近の記事一覧
アーカイブ