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*選ばれなくても其処にいられるのだから
12/04 17:04
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Sくんとの出会いのお話、続き。




送ってもらうってゆってもそんな遠くないし、すぐ着いちゃうなー、とか考えながら歩いてた。少し遠回りしてるあたしがいた。
そしたら急にSくんが、

「このへんにDVD借りれるとこない?」

「え?TSUTAYAあるけど…なんで?」

「俺もう終電ないからさ、なんか借りてネカフェとかで観ようと思って」

「え?!終電!!!なんで降りてんの?」

なにこのひと、って思ったけど、終電のないひとを適当に置いていくこともできなくて、TSUTAYAまで一緒に行く流れに。
歩きながら、ふと嫌な予感。TSUTAYAって何時まで?
調べてみる。



閉店時間5分過ぎてた…
まだこのまま歩いて20分はかかる。完全にアウト。

まだそれに気づいてない時、観たいDVDの話してて、気づいたら「一人でネカフェ泊まる」が「一緒にDVD観る」になってた。

ほんとに、自然に。
なにあの話力。



あたし、歩いて家帰れる距離だよ。今考えたらSくんだってホテル泊まるよりタクで帰った方が安いと思う。あのときはほんとうにいろいろ思考がおかしかった。

でも、そういえばこのへんにネカフェなんてない。
そのことをSくんに言ったら

「…ちょっとへんなこと言ってもいい?」

「ん?」

「(観たいDVDがある)確率は下がるけど、このへんにホテルとかないん?しほちゃんがいやじゃないならやけど…」

この時、なんて返事したか覚えてない。でもとりあえず2人でケータイで近くのホテルを探して、やっと空きのあるビジネスホテルが見つかった。

ホテルに入る前にコンビニで飲み物を買う。2人で一本のカルピス。

部屋に入って、どんなDVDが観れるか確認する。
まあ、なんとなく予想してた通りやけど、わけわからんのが数本しかなかった。観たかったやつはもちろんない。とりあえず適当にひとつ選んでみる。
Sくんはベッドに横になりながら、あたしはそのベッドに座って鑑賞。観てる後ろからこしょばしてくるSくん。ぜんぜん見る気ないやんw
やたら耳をこしょばされる。

「耳こしょばすん好きやねん」

なんやそれ。

つまらないDVDもそのうち終わって、時間も午前3時くらいだったかな。
おやすみを言って、Sくんが横になってる隣のベッドに入る。ほんとうに、そのまま寝るつもりだった。あたしたちは今日、あのDVDが観たかったから今ここにいるだけ。それだけだから。

ベッドに入って、数分

「そっち行っていい?」

「なにもしないならいーよ」

「じゃあやめとくわ」

「うん」

………

「やっぱり行っていい?」

「……なにもしないなら、」


Sくんが、ベッドに入ってくる。
向かい合って横になって。ただそうしてた。
どれくらい時間が経ったかわからない。
少しSくんの顔が動いた、と思ったら、キスされた。
拒否する気持ちはわかなかった。
すごくすごく、優しいキスだった。

それ以上は、拒否したらすぐにやめてくれた。
優しい人なのか、余裕があるからなのか。

彼はそのまま眠りについた。
絵のような、綺麗な寝顔見ながら、あたしはぜんぜん眠れなくて。朝方少しだけ微睡んで、夢を見た。

次の日あたしは予定があったから、少し余裕をもった早めのアラームで目覚めた。ああ、起きなきゃ、でも眠い、、
隣でSくんもまだむにゃむにゃしてた。
少しずつ目さめてきて、おはようを言い合って。

そこから、昨日の続きが始まって。

「ほらもう、時間ないし、やめよ」

「うん。だから、途中まで」

「ええぇ、うそ、ちょっとー!!」


最後までやってはないよ。


可愛い、と何度も言われて
あのまま溶けそうだった。

嘘でも効くんだよ、ああゆうときの「可愛い」は。



ロビーにおりて、飲み物が無料だったから、2人で向かい合って座って、選んだ飲み物を飲む。
穏やかな朝。
このまま普通にさよならして、何もなかったように家に帰って、友達と会うんだ。
そうぼんやり考えてたら、

「ケータイ貸して?」

「え?…はい」

あたしのケータイでなにかしてるSくん。

「俺もうケータイ電池切れてLINEわからんから、この番号登録しといてな。またどっか遊びにいこう」

この人はどこまでもずるい。
このまま連絡先を交換しなければ、無理矢理でも忘れることができたのに。

ホテルを出る時、
「早く帰ってきてね?」
思わず出た言葉。

「早く帰ってきて、ってなんかいいな」

「彼女にいっつも言われるやろ?」

「いや…あんま言わんな」

Sくんは仕事で地方にいる。
彼女は地元の人。このへんに住んでる。

2人でホテル泊まって、あんなことして、普通に彼女の話をするあたしたち。ただの友達みたいに。

ホテルに行く前、コンビニでSくんがタバコ吸ってるとき、
「二次会のあとなにしてたんって彼女に聞かれたらどうするん」
って聞いたら
「終電逃してホテルでDVD観とったって言うわ」
ってさらっと言ってた。
間違ってない。
でも、大きな嘘。

そうやって、優しい顔で、平気で彼女に嘘つけるんだね。
今まで同じような嘘、どれくらいついてきたの?


でも、分かってしまう
どれだけそんなことを繰り返してたとしても、
絶対的に彼女が一番なこと

Sくんはきっと、そうゆう人だ

根拠はないけど





帰り道、駅に近づいて
「もうすぐ駅に着いちゃうね」
って言ったら

「家まで送るで」

当たり前のように言うSくん。
家まで数メートルのところまで送ってくれた。

「…じゃあ」

「うん、ありがとう」

「今度こそ観たかったDVD観よな」

「それまで観たらあかんで」

手を振って別れる。

家のドアを開ける直前、そっと振り返って、Sくんの背中を見えなくなるまで見送った。


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B N


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