蘭が目を輝かせていた【新しいおもちゃ】である試作型強襲艤装ハマユリを組み付けた巡洋艦アデリアと女神隊一向は、四国の上空をゆっくりと通り過ぎ目指すは太平洋、海賊の現る海域へと梶をきった。
航行して、どれくらい経ったのだろうか、海賊の現れる海域に到着した後も、続く長いクルーズに一同は、飽きをみせており次第に、その当直は、マンネリになって行った。
それも、そのはず、例の海賊船は神出鬼没…何時現れるかがわからない、まして昼間ならいざ知らず夜間もずっと哨戒航行でメンバーは、交代で灯りも点けずにレーダーやソナー、望遠鏡の映像とにらめっことなる。
ランに至っては、担当コンソールの周辺に生活スペースを設けてしまうほどだった。
それから、幾日かしての昼間だった…。
蘭・『だだだっ第二戦闘配置!!(対艦戦闘)モビーディック(海賊戦艦)を望遠で確認、距離15000!』
ランが、マイク越しに叫ぶと、巴や流奈、奈都、ユウキが慌ててブリッジに駆け込んで席に着くと巴が巡洋艦アデリアの操縦桿を握り指示を出す。
巴・『相手は大艦巨砲、一発でも当たれば即座に轟沈する…各探知機器の探知ハイトを上げて敵弾の探知強化!当たる前に回避する!』
巴の指示に合わせ、蘭や流奈はコンソールを操作し探知のレベルを上げるとOKを出す、そして、ユウキが副官コンソールで望遠の映像とサーマルの映像を出して巴の座席に投げるとぼやいた…。
ユウキ・『えらく…でかくないか…あんな戦艦に勝てるのか?』
弱気にぼやいたユウキに巴は、笑って答えると皆の気を引き締めた
巴・『勝てるか?じゃない!勝つんだよ!たかだか戦艦一隻、こっちが勝って当然!さぁ…始めるよっ!!』
その一声を入れるとアデリアのブリッジはピンと緊張感が張りつめ一気に戦闘モードに切り替わる。
蘭がコンソールを操作し巴に声をかける。
蘭・『試作型エネルギーブースター【ハマユリ】始動…供給エネルギー40%をブースト…出力は50%…!』
新しいおもちゃであるハマユリは、エネルギーの増幅器である
これによってエネルギー兵器の出力が増加する兵器である
その稼働率を見て巴は、エネルギーブースト率を68%に引き上げを伝えると蘭は操作し増幅率を上げると、ブリッジの灯りが薄暗くなった。
巴は、操縦桿周辺の計器を見ると正常稼働していると分かった。
巴・『艦機能には問題ない…増幅率68%でロック…増幅エネルギーを艦首レイルキャノンに伝達及び充填開始、有効射程ギリギリで発射!』
細かな指示をするとユウキがまだ距離のある海賊船に照準を合わせるためにコンソールを操作すると巴の見ている画面の海賊船に枠取られる…
巴は、それを見て頷くと操縦桿を強く握りスロットルを上げた。
巴・『全缶全速前進!一気に距離8000に縮める!この先は、火砲が苛烈になる…敵弾の…。』
言いかけた瞬間だった…天を裂く轟雷のような爆音が海賊船からなり響きアデリアのブリッジの真横、スレスレを何かがすれ違った瞬間…強い衝撃がブリッジを揺らした…。
奈都・『敵弾…左舷後方、上部エンジンスタビライザに被弾…同上スケィルチャフ使用不能…被害は、最小。』
奈都の素早い被弾分析を聴きながら蘭に指示を飛ばすと、舵を一気に反対に切る
巴・『蘭ッ!左舷後方スタビライザのエネルギー配分を微調整!左舷中軸のスタビライザと下軸のスタビライザに分配!』
蘭は既に、巴の指示を聞く前にエネルギー分配を完了したと伝えると巴は、操舵に集中してくれと励ますと再びコンソールを操作した。
海賊船からの火砲は距離を詰める毎に苛烈を様した…。
相手は戦艦、砲門の数ですら女神隊の駆る巡洋艦アデリアの倍近くを擁し圧倒的な火力を見せつけ、戦力の違い思い知らす…。
回避運動を続ける巴は、操縦桿を握る手は常に緊張していた…。
【一発でも当たれば即、撃沈される…。】
かすった火砲の一撃はスタビライザ半分を吹き飛ばすほどの威力…直撃すれば、どうなるかも容易に想像できる、あまつさえ、海賊船の砲撃は、驚くほど正確で、巴が予想していた以上の砲撃技術が有ったのだ。
所々では、回避が間に合わず…砲弾は、着弾ギリギリで船体をかすめる…そのたびに、巴は、ふぅとしんどそうに息をつくと。
巴・『蘭、流奈姉、チャフミサイル、垂直発射管両舷、1から3番に装填、ビーム攪乱幕を同発射管、4番から6番に装填、敵艦より150で拡散…ジャマー、レベルを200に上げて全力で防御!』
二人に指示をする巴の表情に余裕はなかった…。
蘭と流奈は、(-"- )のような表情を見せる巴を察すると軽く返事をし二人は、指が踊るようにコンソールのキーを押していくと瞬く間に準備が整う、それを、見計らって巴は合図をした!
チャフの充填されたミサイルが巨大な海賊船めがけて順に飛んで行くと、海賊船は花びらが舞い散るように破片が飛ぶ…。
そして、そのミサイルの群中に混ぜ合わせて飛んだビーム攪乱幕粒子の入ったミサイルに機銃の弾が着弾したのか青い煙が光ると、先ほどまでの艦砲が拡散し始め、アデリアに向かってこなくなった。
巴・『攪乱幕、影響範囲外へ迂回…あ〜敵艦後方へ回り込んでハマユリの直結したレールキャノンでエンジン部へ砲撃、足の死んだところに、強制接岸!』
巴の表情は、少しだが余裕の表情が浮かべるようになっていた…。
それでも艦砲は、依然と続いており予断は許せない状況であるのは間違いない…
回避運動をしながら次第にエンジン部へアデリアの艦首が向きつつある