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case 00 in 女神はほほ笑む

第零中隊女神隊が部隊として創設されてすぐの事である。

隊長として部隊運営をざっくりと指名された八菱重工の巴弐式は、非常に頭を抱え込んでいた…。

出会った当初から、非常に個性的なRAが出揃ったところから自分がまさか全員をまとめる長になるとは思っていなかった訳だから、人心の掌握など考えていなかった…。

自室のベッドに座り込んで眉間にシワを寄せてブスッとした(-"-;)こんな表情を顔に現すとあれこれ考える…。

掴みにくそうな存在が二人…。

会室で冷たく冷めた眼差しを痛いほどに投げつけていた…ブサイk…もとい金髪姉妹…。

記憶の片隅では内藤姉妹だったか…と巴は記憶を振り返るとあれこれ考えたが遂には頭の中が煮えきり、ブシュ〜と頭頂部からもうもうと湯気が立ち上る勢いで頭の中から何かが煮えたような音が聞こえ始めたため、作業(考え事)を止めた…。

巴『あぁああっ!もう分からん!』

意を決して部屋を飛び出してみるが結局の所、考えは固まらずの状態である、ルーンナイツの考えは良く分からないし掴みにくそうな存在だ…。
あれこれ考えつつ艦内を歩いてぶらりとしてみる、ほどなくしてランが元気よく艦内をジョギングしている…息も乱れないきれいなフォームを崩すことなく向こうから走ってきた…。

ラン『ヤッホー!タイチョー!』
軽い挨拶が先にランから飛び出ると巴はすぐに眉間のシワを緩めて軽く挨拶を返す。

巴『ラン!お疲れ!』

すぐに彼女ともすれ違う…ランは人当たりがよく…堅物と化した巴はなんとなくわかりやすい返事を返すと意外に受けが良かったのかなんなのか…結構気に入られているのが会話からわかる…。

ランが去った後ですぐに眉間のシワが寄る……。

(-"- )のような表情を繰り返していると次第にそのシワが深くなるのがなんとなくわかる…。
ウダウダと考えても仕方ないが部屋に戻ったところで考えがまとまるわけでも無いとふらふらと食堂に足を向けた…。

食堂に入ると割と広々とした食堂で右隅にドリンクと食品の自販機がおいてありその反対側の左隅は厨房の見えるカウンターがありその奥に人影がもぞもぞと動いていた…。

巴は、腰に下げた銃に右手を添え忍び足で近づいて恐る恐るカウンター越しにその人影の様子をうかがうと腰辺りまで伸びた金髪、ロングストレートの後ろ姿が見えた。
巴(金髪…何をやっているのかしら…。)

巴が金髪の姿を伺うと戸棚の中に何やら箱を入れているのをみると…巴はすぐに察した…。

巴(箱…まさかっ!?)

とっさに腰に挿した拳銃を抜き出して金髪の後ろ姿に銃口を向け声を大きく張り上げて威嚇をする。

巴『両手を挙げて、そこを動くな!』

大きな声で威嚇をした後カウンター越しだが摺り足で一歩近づいて再び声を張り上げる。

巴『ゆっくりこちらに体を向けろ!』

すると、金髪は一瞬、巴の声でビクッとすると右手に箱缶を持ったままゆっくりと回れ右をし巴をじっと見つめた…。
巴は記憶の片隅を呼び起こしたところ彼女は確か…第五兵器開発工廠の冷たい眼差しをした姉ルーンナイツと言ったところまでは覚えていた…。

ルーンナイツは、巴の表情をみて微笑むとイラッときたのか巴は、眉間のシワをよせて銃口をルーンナイツの眉間に向け突きつけて威嚇するように声を出した!

巴『ルーンナイツ!貴様っ!何をやっている!爆破工作かっ!』

するとその言葉にルーンナイツは反応したのか右手に持っていた箱缶をおもむろに差し出すとその缶には銘柄が入っていた…。

ルーンナイツ『フォートナムマイソン…シッキム…。』

巴『は…はぁ…。』

ルーンナイツ『ご…ご一緒にシッキムティーで…ティータイムはいかが?』

巴『い…いや…こっちが聞きたいのは何をしていたかであって…。』

ルーンナイツ『ただ、私は…日課であるティータイム用の紅茶の箱を戸棚にしまっていただけ…ですわ…。』

ルーンナイツは先ほど入れたばかりの紅茶の缶を取り出してカウンターに置くと封を切ってない事も見せ更には固形物が入っていない事もわかりやすく振る…。
今までの緊張が一気に冷めると巴は、構えていた銃を腰に収めると誤解も解ける…。

巴『あー…要するに趣味の紅茶の缶をそこに入れていたってだけでスパイでもなんでも無いって話しなのね…。』

ルーンナイツ『ええ…部屋の棚に入りきらない缶をただ、こちらに入れに来ただけですわ…。』

注釈をいれるように答えを言うとポットに湯をいれて温め始めると先ほど差し出したシッキムの箱のシールをはがし開ける準備をし温まったポットの湯を今度はカップに注いでしばらく待つ…加えて温まったティーポットの蓋を外して細かい網目の金網を差し込んで込んでシッキムの茶葉を匙で一杯入れる…この動作はさすがに手慣れているようで流れるように洗練されている…。
ルーンナイツは、カップに手を当てて温まったのを確認したあとドリップポットについだお湯をティーポットにゆっくりと注ぎだしティーポットの蓋を閉め砂時計を返し時間を図る…。

巴はルーンナイツが楽しそうに笑っている顔をみてつい、ぷふっと吹いてしまった…。

ルーンナイツ『何ですの?私の顔に何かついているのですか?』

巴『あいや…悪気はないわよ…ただ楽しそうにしているから…こっちまで面白い気持ちになってねぇ…。』

不思議と巴の堅苦しい表情がほころんだところにルーンナイツは振り向くとその柔和な表情が目に入りルーンナイツもぷふっと笑みがこぼれた。

巴『えっ…あたしなんか言った?』

ルーンナイツ『いえいえ…なんでもありませんわ…ぷふっ…ただ堅苦しいお顔の隊長がそんな優しいお顔をなされるなんて意外でしたから…ぷふっ…。』

巴『ルーンナイツ…悪気があってじゃなぁいのはわかったけど…堅苦しいってゆうのは間違いよっ!』
二人は大分砕けた感じで笑い合うと巴が先に口を開けたところでルーンナイツは、一旦待てのハンドサインをするとどうやら砂時計の砂が落ちきったようだ…。
ルーンナイツは、カップの湯を流しに捨てティーポットの蓋をあけ茶葉の開きと紅茶の色を見るとその香りを楽しそうに利いている…。

お嬢様の風合いが似合う…これで戦闘員だと言うと全くその気配はなかった…。

ルーンナイツ『出来ましたわ…続きは席で楽しみましょう…。』

そう言うと盆にポットとカップとカップ受けを用意してカウンターを出ると近場の席にそれを広げた…。
本格的なティータイムで有るのがよくわかる…加えて近くにあった箱を開けると中にはスコーンやマカロンが入っていた…。巴は、それをみて舌鼓を打つとルーンナイツは笑いながらいかがと手で促し巴はそれに答えるよう菓子に手を伸ばした。

ルーンナイツ『家事は苦手でも炊事ができるので…手作りのスコーンとマカロンを作ってみましたわ…。』

巴『どれどれ…このスコーンをいただいて…。』

大きなスコーンを半分に砕いて一端を巴は口にすると、ほんのりとした甘味が口に広がって離さない…そこにシッキムティーを口に流す…。スッと入り込む柔らく強くない渋みが甘味を中和しつつも適宜な甘味に変わり先ほど口にしたスコーンが口から程よくホロホロと溶けていく…。

巴の誤解もスコーンと同じようにホロホロと溶けていった…二人にはなんとも言えない幸福感が包んでいた…。

ルーンナイツ『ところで…隊長さんは、何をされていたのですか?』

ルーンナイツはふとした疑問を投げかけると巴はそうだと言わんばかりに思い出した事を話し出した。
これから長い付き合いになることから互いに良い関係を築くにはといったことルーンナイツから見た今の雰囲気…気になったことは全て口から自然と出た。
巴『最初に会った時から全員が粒ぞろい…もちろんあんただってそうさ…えらく周りと隔絶するような雰囲気を持っていたし…。』

ルーンナイツ『なるほど、隊長さんはそう捉えていらっしゃったのですね…。』

ルーンナイツの口元が緩むと巴は緊張感が拭われる、最初に会った時のことを直ぐに思い出す…。
冷たく冷え切った眼差しに合わせてさりげなく発していた殺意のような敵意。
数日前とは打って変わった雰囲気を受け巴は考えを改めた。

ルーンナイツ『あれは、そう…緊張していただけでして…最も実は、私より妹の方が緊張しておりましたのよ…。』

巴『あぁ…確か05だったけ?』

そう言うとルーンナイツは一呼吸置いてシッキティームを口に流しながら頷く、巴はなるほどと思うと05の顔を思い出す。

巴『戦闘員…いや、あたしと同類のRAとは思えないけど…。』

ルーンナイツ『その通りですわ…彼女は、どちらかと言えば戦闘がメインでは無く情報…えぇと…電子戦がメインになりますの。』

巴は今のルーンナイツの言葉、電子戦と言う概念が今ひとつ理解できないでいたためにその細かなところを聞きただそうと口を開くとルーンナイツはさらりと答える。

ルーンナイツ『単純に言えばハッキング、クラッキング、情報操作、踏み込んで言えばそこから電子機器の遠隔操作と言った具合から友軍のミサイルの命中補正など…ソフトウェア関連の支援と言ったのが電子戦ですわね。』

ルーンナイツの言葉の羅列が頭にすんなり入ってくると巴は、頭の中でまとめる…ルーンナイツの妹05は、どちらかと言えばハイテク分野に長けているとでは逆にこのルーンナイツの存在は何者なのかという疑問が再び湧き出るそちらもせっかくの機会だからと問う。

巴『ハイテク担当が05ならルーンナイツ…あんたは何者なのさ?』

ルーンナイツ『それは、単純に言えば物理担当…踏み込めば、妹を補佐する方ですわ…戦闘能力にウエイトをおいでますので…直衛機のような…。』

巴『なるほど…エスコート役なのね〜。』

これで疑問が晴れる、第五兵器開発工廠の新鋭機は電子戦と一対で成す特殊な機体郡と言う具合だと…気になったことは晴れるがいまだに不思議なのが人当たりの良い月産工業のランだ…。

ここのところを聞くと意外な言葉がでてくる…。

巴『ランについては…どう思う?』

ルーン『ランさん?月産工業のRAですわね…正直言うと最初は、05と同じかと思ってましたが…全くの真逆で苦手なタイプですわね…。』

巴『苦手?苦手って何が?』

ルーンナイツがランのことを苦手なタイプと聞き、意外なことに巴は驚きつつもその理由を問いただす。

ルーン『人当たりと元気が良いのはよろしいのですが…心に土足で踏み込んできそうな感じがして…何か嫌な感じがしましてね…。』
確かに一理は、ある…人当たりが良すぎて心の闇まで覗こうとする…そのくらいの懸念であるそうなればチームとしては瓦解しかねないランには、ある程度線を引いて当たる部分がルーンナイツと05にはあるらしい…分かりたいが今ひとつのようだ…活発で快活な性格が仇になると…巴は留意する…。

それでも…少し…二人の間の距離は縮まったような気がした…。

First contact in 女神はほほ笑む

1980年末期…アメリカ連合公国は、先進国群として東の大国であるロシア帝国に対する軍備のために周辺国を吸収し強大化、従わなくば力ずくでの施政により、日本もアメリカ連合公国の力に屈し国土の70%を占領される、この時、初めてアメリカ連合公国は最初期の有人人型兵器AG【M1スチュアート】が投入され…日本の自衛隊は、ほとんどなすすべなく、圧倒されてしまう。
しかし、日本は、当時のAGをもとに極秘裏に無人人型兵器pacel(パセリ) を開発…国土南西の主要兵器開発地域と首都圏を解放する多大なる戦果を上げた…それから…数年…。
pacelを消失したもの日本は、独自で開発した第一世代型汎用AG【流月:ルゲツ】の投入によってアメリカ連合公国との戦闘を拮抗させ今に至る


90年中期…雪の降る。
トーキョーシティの旧自衛隊施設ネリマベース…。

長身で容姿の整った一人の女性が門前で衛兵と話をしていた。

女『新設される部隊の召集がここでと聞いたのだけど…?』

手元の黒いファイルの中身を衛兵に見せるが明らかに衛兵より10cm近く大きく圧倒していた。

衛兵は、大柄な女性を前に少々戸惑いつつファイルの内容に目を通す、中身は単純に【隊員通過許可証】と書かれて居たので衛兵はその点は、承諾した…。

衛兵『新設の部隊?いや、聞いた事が無い…申し訳ないが、こちらで無く、そこの事務棟館内
の受付で聞いてくれ…。』

どうやら、新設される部隊の内容は極一部の人間だけにしか伝わっていないようで、女は、上層部クラスの秘匿度で有るのではないかと予想すると、にっこり笑い寒空の中、衛護をする衛兵にねぎらいと礼をするとベースの事務棟に足を運んだ…。


受付に立ち寄ると窓口では疲れた表情を見せる女性士官が事務処理をしているのが、受付窓から伺える…。
女は、着ていたコートを脱ぎ、積もった雪を払い一段落つくと、受付の窓を軽くノックした、それに、気が付いたのか事務官は、こちらに体を向けるが顔がまだ書類に向いていた。
事務官『あぁ〜ごめんなさいね〜立て続けの処理業務があってね〜。』
事務官は、書類を引き出しにしまい、女の方へ顔を向けて窓口から見上げるように彼女を覗くと、少々驚いた顔を浮かべながらに笑った。
事務官『はいはいはい…ごめんなさいね、大きな女性だったもので…小さい頃にバレーボールでもしていたのかしらん?』
おばちゃん笑いをする事務官に笑いながらにバレーボールは良くやっていてとても楽しかった思い出を返し、本題に入るとおばちゃん笑いをしていた事務官も仕事の顔に切り替わった。
女『今日付けでここ配属になりましてね…総理大臣直令の…。』
途中まで言いかけると事務
官は、一枚の用紙を取り出した…。

【配属届出書】
簡単な書類だったことに女は、驚きつつ配属届出書に記入をすませ事務官に渡すと一通り目を通した事務官は、特設の会議室があるのでそちらに行くようにと女に伝えた。
女『分かりました、ありがとうございます、では、そちらに向かってみますね。』
女は、事務官に礼を言うと軽く手を振り指定された部屋に向かう、すれ違う士官は皆、珍しそうに女をみる
凛とした出で立ちにスラリとし制服を着こなした姿はさながら外国人のモデルのようだった。
時々、女性士官が通り過ぎるが士官の制服は鶯色、しかし、女の制服は白く右腕には細い一本の赤いラインが一周しており異質な感じがっていた。

女は、目的の会議室につくと、ドアをノックして、入室する…。

部屋は、意外と中規模の広さがあり中央にはブリーフィングコンソールが設置されていたが、誰もいなかった…

誰も居ない会議室を一通り見回して本当に誰も居ないのを確認すると女は眉間にシワを寄せてぶすっとした顔をした
(-"-;)

椅子に座って待つ…5分…10分…。
女は、苛立ちを隠せないようで腕を組み人差し指で拍子をうつ…。

15分…。
ヒールの足音が入り口で止まる気配がするとノックの音がして誰かが入ってくる…

入って来た人は、女を見るなりに少しうなずき一言ぼやいた
人『…一人…か…05…大丈夫…一人しか居ない。』

05を呼ぶ金髪の女に対して女は、立ち上がると、金髪の後ろに目を向けた
05と呼ばれた少女は金髪の女の後ろをついて歩くように女を冷たく冷めた目で見られた…女は、その冷めた目に動じず金髪の二人にあいさつをする…。
女『はじめまして、私は、RA04、巴弐式…新設される部隊へ配属される者です、あなた達も同様で?』
巴弐式と名乗る女は、大体の質問を投げかけながら握手を求めるが金髪二人は、表情を変えずに女性側が少しうなずきかげんに問答に応える。

金髪女『えぇ…配属される者でして、私は、RA005ルーンナイツですわ…こちらが、妹の…05…ホワイトナイツ…ですわ。』
軽く自己紹介を済ませたナイツ姉妹は、巴の掛けた席から、少し離れた位置で腰を下ろした。

巴と名乗る女は、どことなく二人から受ける、冷めた目線になんとなくだが不安を覚える、その答えは簡単だった、姉のルーンナイツと自分を比べた時の体付き…明らかに軍人としては、華奢に見える、おまけにその妹は、年端も行かない幼さが顔から伺え戦闘経験は、ほとんどなさそうなのである…。
巴は、非常に不快に思った…。
軍には彼女等のように間に合わせのような人間がいるのだろうと、自らの存在も間に合わせのような物なのかもと…。


しばらくして入ってきたのは、ようやく正規軍の制服姿それも白と黒のモノクロのデザインの制服の黒人である、巴はすぐさまにモノクロ制服の人を見ると…立ち上がり気をつけをする…。
それを、見てナイツ姉妹もゆっくりと様子を伺うように席を立った。

制服は、書類に目を通し、そこにいる人間の顔を確認すると口を開いた。
制服『着ているのは、巴弐式、ルーンナイツ、ホワイトナイツか…ランは…どうした?。』

制服は全員の顔を確認し腕時計を見るとため息を付いたところで
巴が話すことの許可を求めると制服は承諾した。

巴『申し訳ありません、ランと呼ばれる者を存じ上げかねますが、そのような者がこちらの新設部隊の一員で?』

その問いに制服は、少し驚いた、詳細の情報が個々に行き渡って、おらず新設部隊の召集だけが個々に行き渡ってしまった…手違いと語る。
制服は、少し考えて居ると…召集時間ギリギリになって、茶髪の少女が乗り込んで来た…。

ドアを、開けて入ると少女はすぐさまに敬礼をして自ら名乗る
茶髪『遅刻、申し訳ごさいません、RA03:ラン、只今、出向いたしましたっ!』

蘭は、少々肩で息をしていたようで走った事が伺えた…。
制服は、腕時計を確認しうなずくと蘭を見て笑う
制服『さすがは、月産工業だ…狼の毛皮を着た羊にだけは、なるなよ。』

皮肉たっぷりに時間のことを注意すると…。
入室一番手の確認を始める…その問いにすぐ、巴が自ら挙手をすると制服は、書類に何かを記入した…。
制服『ふむ…八菱重工は堅実だなぁ…時間的に余裕を持ってここに来たか…よし、八菱重工の04、巴弐式…貴官が隊長を勤めよ。』

新設の部隊、隊長にざっくりと任命された巴は、制服に今回の件に関しての全ての問いを突き付けるとそれは、予想通りの質問とばかりにあっさり返す
そして、巴がとある質問を投げると制服からは、驚くべき答えが返ってきた…。

巴『この新設の部隊の司令官はどなたですか?この部隊の創設意図は?運営管轄部署はどちらに?』
複数の質問であるが制服は笑って応える、あまりにもシンプルすぎる質問に、制服は大笑いをした。
制服『はっはっは!…部隊の司令は私だ…外国人だろうと日本の心を知らない人間がいないわけが無かろう、改めて自己紹介だ、私は、柿崎・チャールズ・ダグラス…階級は中将だ…この部隊の創設意図は、簡単だ…一つは貴官等は、日本軍、最新戦闘AIでありながら人型汎用機動兵器レディアーマーのコアである…のは自分達で理解しているものとし…そのRAのみで構成された実験部隊として、日本をアメリカ連合公国からの全土解放も兼ねての新設である…ただ、機密レヴェルは高い…故に管轄部署としては…政府直轄の小規模中隊ではあるが…直轄の機動中隊だ…。』

ダグラスは雄弁に語る…。最新兵器である巴達は、自身が兵器であり戦うために作られた事はすでに、開発メーカーから伝えられていた。
だが初めて、最新鋭兵器として日本軍へ、召集され軍部隊として立ち上げられ、日本解放の希望を託された、この部隊は、占領された国土や人々を解放するための作戦の始まりの第一歩となり…日本解放作戦はゆっくりと着々と動き始めたのである…。

case X0 in 女神の渇望

80年代初頭…

日本は、かつての同盟国アメリカ連邦公国によって90パーセントを占領下におかれ国民達は厳しい戒厳令に苦しんでいた…。

その戒厳令も残酷なものである、いくつかのエリアによって日本は分けられてそのエリア毎に日本人収容所を設けた、その収容所は通称【コロニーズ】と呼ばれ、人々はそこに押し込められた。

もちろん、原住している日本人はそうだが、帰化した外国人ももろともコロニーズに押し込んだ。
それに反発した外国人といえどもその戒厳令に反発して幾人もの人間が血を流してきたほどだ…言い換えれば反発すれば即死刑である、もちろんコレには例外はなく、帰化アメリカ系日本人、つまりアメリカ人の血ですら流れたほどだ…。

それほどにアメリカ連邦公国は、人々に圧政と苦痛を与えていた…。

世界に誇る技術力や先端科学はアメリカに搾取されここまで衰退させたのは紛れもない75年のヴェトナムでの敗北からの反発であった…それがアメリカ連邦公国にとって経済や、科学技術の搾取へ邁進させ、周辺国を食い物とした結果だった…。

時は経ち。
198X年…。

日本はほぼ全ての領土をアメリカの占領下におかれ、日本国が消えようとしていたところに果実は実った…。

かねてより秘密裏に行われていた作戦。
【女神の涙作戦】の第一段階がようやく終了した。
それは、ろ獲したアメリカ軍の、M1スチュアートと呼ばれる最新人型機動兵器通称、AGの稼働データから研究開発された秘密兵器、Personal Armor Cell
通称、【パセリ】が完成したのだ。
パセリは、人工知能を搭載し、AGのような多彩な兵器運用を可能にした機体だった。
研究中の頃は、表情も無く本当にただの人形と言った具合のAIだったが今は、表情を持ち人間らしさをまんべんなく表現していた…。
それと同時にパセリは、自分が何のために造られたかも良く理解していた…。
研究員達は、パセリにいろいろな楽しい話、悲しい話、面白い話を話すが決まって最後は、パセリの出生を口にする、だからこそパセリは自分におかれた思いや希望と言った背負う物の大きさは重々承知していた…。
出撃の前夜…パセリの前に現れたのはパセリの開発者、矢下ヒロミ開発主任だ…。

矢下はパセリの足元に座ると片手には、缶ビールを持ち、酔った状態であった。
パセリは、矢下の様子を見ると笑って皮肉る…。
パセリ『ヒロミ、普段あまり、飲まないからそうなるのよ…飲むのやめたら?』

ヒロミ『うるさーい、飲まない食べない、あんたに言われたか無いわゆ〜。』

酔った様子から見てもヒロミの状態は、酒は滅法弱いようだ、顔が赤らんでいるし口の饒舌さが普段の倍以上でろれつも回っていない。
もともと、仕事中のヒロミは鋭い言葉と口数が少ない、いわゆる、職人気質の強い性格なのをパセリは良く見ているし、まわりからモテるほどの容姿の割りに性格のせいか独身で、そろそろ婚期も怪しくなる年齢だと言った所も良く知っている…もちろん、日常でお酒を飲むことなんてめったに無いのもパセリは良く見ているし良く知って居る…。
ここまでプライベートなことを知って居るのはヒロミが、毎日仕事を終えるとパセリを搭載したAIユニットを持ち帰って自宅で教育の名目でパセリにあれこれ吹き込んだり雑談したりしているから、人間らしさを育んで今のパセリがある…。

ふと、ヒロミが何かをぼそぼそと言っているようなのでパセリは、それに聞き入る。

ヒロミ『ひとり言だから聞かなかった事にして…。』

ヒロミ『あなたはこれから、、理不尽に人を殺す事になる…そして、下手をすればあなただって理不尽に殺されるから、本当はパセリを戦場に行かせたく無いの…でも、日本は今、理不尽な事を強いられているから行かせなきゃいけないの…。』

途中からヒロミの言葉の端々はふるえている、涙をこらえて話をしているようである…パセリはヒロミの背中を見てその背中が小さく見えた…。

ヒロミ『これから、あなたは残酷な世界に行かなきゃならない…無理やり行かせる私を…行かせる私たちをどうか許して欲しい…。』

ひとり言だから、パセリは何も言うまいとしても長い月日を共にした良き親であり良き上司であり良き友人であったヒロミとの思い出がまるで走馬灯のように思い出す…。

ヒロミ『パセリ…無事に帰って来たらちゃんとした体を作って一緒にどこかで暮らしましょ…ね…だから…だから、無事に…。』

わかって居る。
パセリはヒロミと永遠に別れるのだ…明日の明朝には、この育った第一兵器研究工廠と家族同然のメンバーとも別れを告げる…。
もう会えないこともわかっている…。

そう思うと不思議と悲しみがこみ上げてくると一緒に涙もあふれてくる…パセリは、ヒロミに悟られまいと嗚咽を殺して涙した…。

パセリは気が付くと先ほどまでふるえた声をしていたヒロミは、横になっている…彼女を起こさないように拾い上げるとコクピットの中にヒロミを入れて体が冷えないように適温に調節した…。

パセリ『ヒロミ…ありがとう…そしてサヨナラ…。』

生み出したことに意味があるパセリはその意味をすぐに受け入れるように努力していた…そしてその意味はこの数年になって大事なことにつながり、自分でなければ意味が無い事を理解したそして今、改めてそうヒロミが教えてくれた…だから、産みの親である彼女に…感謝の言葉をふとこぼした。
そして、パセリは、ゆっくりと眠りについた…。


case X0 END

case01 in 女神はほほ笑む

第零中隊女神隊として部隊が結成されてすぐの事である。

皆、自社の最新鋭そして、自社の威信をかけて造られた存在と言う壁が大きくなかなか打ち解ける事ができなかった時期がある…。

隊長としてそのガチガチとした緊張感のあるピリピリした空気が我慢ならない巴は何か打開策は無いかと日々ブリッジであれこれ調べながらの当直に就く。

巴(問題は…第五兵器開発研究工舎の白騎士…表情や感情を伺え無いから少し難しい所ね…。)
奈都が気難しい人格であるのを看破すると打ち解ける方法はより慎重になる。

ふうと息を吐いて、ブリッジの外に目を向けると横には、ルーンナイツが立っていた…。
もちろん、気配がなかったので巴は、一瞬ビクッとするとルーンナイツは微笑んだ。

ルーンナイツ『隊長さん…報告書ですか…精が出ますわね…。』

ルーンナイツは、巴を観察しながら合間を伺っていたようで空いたカップを交換し、暖かいコーヒーを差し出すと巴は軽く礼を言って受け取りとそのままコーヒーを口にした。

巴『報告書と言った気難しいのも上げないと部隊を造った意味が無いからね…。』

軽く一息ついてコーヒーを置いた所で巴は、ルーンナイツに質問した…それも妹ホワイトナイツについて単刀直入に話す。

巴『妹さんについて…詳しく教えて欲しい…あたしは正直、苦手なタイプなんだ…。』
その問いにルーンナイツはキョトンとした、巴はてっきり他人に分け隔ての無い人柄だと思ったのだ…あまりの直球な言葉にルーンナイツは一息吐いて空いたカップを置くと口を開く。

ルーンナイツ『意外ですわ…人の好き嫌いがあなたにも有るようで…。』

少し嘲笑気味に笑い思っていたイメージとの違いを口にすると巴は、ブスッとした顔を見せたところでルーンナイツ、言葉を続けた。
ルーンナイツ『ホワイトナイツは、自分を上手く表現する事が苦手なの…言いたくても言えない…内気な子ですから…でも話せる機会があれば隊長ともじっくりお話がしたいとは言っておりましたわ…。』

奈都の事を一通り聞くと巴は軽くなるほどと頷いて少し笑った…結局の所、二人共声をかけたがって居たがどう接して良いかが分からずじまいだった…二人の気持ちが空回りしていたようだ。
その点で言えばこの、ルーンナイツは社交的で打ち解けようとしていたのも納得する。

巴は、報告書の作成を途中で切り上げると早速、行動しようと動く。

巴『ルーンナイツ…交代で哨戒任務をよろしく!』

いきなりのパスに驚きつつも操舵管を握りしめるルーンナイツは手がプルプルと震えていた。

ルーンナイツ『えぇっ!?操艦方法は、私…分かりませんよ!!』

暴露した所で巴は笑いながら『大丈夫、簡単だから』と言って艦の奥へ姿を消して行ったのである…。

巴の笑い声が聞こえなくなったのを見計らってルーンナイツは、操舵管をガチガチに握っていた手を離して椅子に腰を掛けると深いため息をついてうまく行きますように願いながらブリッジの外を眺め始めた…。

巴は、スタスタ歩いてホワイトナイツを探す…食堂、武器庫、自室、書庫、浴室…くまなく探し回ったが結局、奈都はいなかった…最後に通りかかったトレーニングルームを覗くとそこにホワイトナイツの姿があった…。

ホワイトナイツは、見たことの無い武器を一人黙々と振るい、あたかもそこに敵兵が居るように戦うシャドウに集中していてトレーニングルームに入ってきた巴には気づいていなかった。

巴は、しばらくホワイトナイツのシャドウを黙って見ていると汗で武器が奈都の手から滑り、足先数センチに深く突き刺さりそれと同時に巴の存在に気が付いた。

ホワイトナイツ『わざとじゃありません…失礼しました。』

慌ててその武器を取ろうと走り寄るが変わりに巴が突き刺さった武器を引き抜いた。

巴『変わった…武器ね〜銃と剣が一体化して…すごく不思議…。』

引き抜いた武器をペタペタと触ったり逆さにして片目を瞑って刃を見ると巴は驚いた。
巴『鋭い…こんなに鋭い刃物を見たのは初めてだわ…それに軽くて…見たことは無い武器だけどかなり高いレベルの完成度でまとまった武器ね…。』

巴は手に持った武器を返すと同時にホワイトナイツの顔に、タオルを投げてやると自身もパリッとした制服を脱ぎ捨てて壁から自身の得物である長槍を取り出すと切っ先は、ホワイトナイツの胸元に向け、キッとした鋭い眼光を彼女の目へと合わせると分かったのかその銃剣を独特の構えを取り身構える…。

互いの間合いには冷たい空気が流れ出しじりじりとした緊張感が漂う。

巴(白騎士のお手並み拝見かな…。)

ホワイトナイツ(隊長との初手合わせ…手は抜けない!!)

互いの思いが言葉を介さずにフッと伝わった瞬間…先手を打ったのは、巴だった。
そして、ホワイトナイツが予想する槍使いとは全く異なる攻め方をする…。

槍を横に薙払うと床に突き立ててそれを支点に蹴り込んで来た。
槍としての使い方より支柱のような使い方をされた物だからホワイトナイツは一瞬、出遅れ慌てながら防御の体勢を取ると一旦は、凌いだがこれは巴にとっての布石であった…。

槍を縦横にさばいてホワイトナイツに一撃たりとも手を出させないように絶え間なく流れるように線を描くとホワイトナイツが大きくバックステップをしたかと思うと激しい銃声が巴を襲った…。
ホワイトナイツの切っ先と目線は確実に巴の眉間を捉えていたし巴は前進しての苛烈な攻撃をしていはずだがこの銃声で巴は一瞬にして顔色を変えた…。
首を傾げ獣のように息を荒らげて銃声の放たれた先を避けると、鋭い眼光をホワイトナイツに浴びせると頬からピリッとした痛みと一緒に赤くぬるっとした液体が伝う…飛んできたのは実弾だ…。
鋭い眼光を押し返すホワイトナイツは、鋭い目つきをする巴を見ながら余裕をしだいに取り戻し呼吸を整える。

巴は、ホワイトナイツの余裕の現れ出した表情?を伺うとにっと笑った…。
巴『そんな隠し弾があるのは…キ・ミ・だけじゃないんだよぉっ!』気合いを入れたかのように大きな声を張り上げるとホワイトナイツに火線を定められない用に左右に細かく飛んで近づくと下からガンブレードを小突いてやる、どうやら、そこに火線を定めていたようで跳ね上げた拍子に銃声が巴の耳をつんざいた!
間一髪で火線をずらしたが一歩遅ければ、眉間に弾が当たっている事になっていたとは容易に想像がつくと自分の想像力の豊かさに笑いがこみ上げてきた。
巴『ホワイトナイツ!なかなか楽しいことをしてくれるね…まぁ、やるんなら本気でやろうか、その方が楽しいでしょう!』

笑いながら…【殺し合い】を楽しむ巴はどうやら、堅物の気を大幅に緩めて笑い出すと無口で薄い表情のホワイトナイツもつられて笑い出した。

大分二人は、打ち解け始めたようだ。

巴は、それでも容赦なく攻め立てるとはホワイトナイツのガンブレードを右に左にと弾きそれに合わせてホワイトナイツは、弾かれたガンブレードの衝撃を利用し体ごと回転し切りかかる…。
タイミングが悪い場合には、足で穂先をずらし体ごと穂先をかわして巴の目先にスピードの乗った状態で切りかかる…。
無論、巴ですらバカではないのだ切りかかるホワイトナイツの切っ先を予測して後ろに後退すると横に薙る、ホワイトナイツは素早く反応して槍より飛ぶと着地を狙って足元を払うと華麗にステップを踏んで左右に飛ぶ姿は巴の視界を惑わせるほど早かった…。
巴が反射的に突いたホワイトナイツは残像でハッと気が付くとホワイトナイツはすでに背後を取り、切りかかりにくる体勢をとっていた。

巴『甘いっ!舐めるなっ!』
巴は、ホワイトナイツが後ろを取る事を予測していたようでそのままの体勢から…足刀を蹴りだして飛び込んできたホワイトナイツは吹き飛ばされ離れたところから…再び間合いを蛇のように静かにかつ素早く詰め出す。
そこからは、ホワイトナイツの素早いスピードに巴は、圧倒される…。
右から飛び込んで切りかかると防御するがホワイトナイツはガンブレードを爆振させて切り込む…その衝撃に槍ごと体が弾かれる、一発、一発のインパクトが凄まじく一撃、一撃に体が衝撃に持って行かれる、体勢を立て直そうとしたが左から再び、切り込むホワイトナイツを見て賭けに出た…。
体勢の整ってないまま、後ろに飛び退くと、切るタイミングを失い空振ったホワイトナイツに向かって体勢を立て直した巴は、思いっきり槍を切り上げると、それに出遅れて回避は間に合わないとホワイトナイツは、ガンブレードを盾にした瞬間だ…爆発と共にガンブレードが弾け飛んだ!

手には爆振の振動から痺れが走り天井にガンブレードが突き刺さった…。

暴発したのかと…思っていたが立ち込める匂いは嗅いだことのある硝煙の匂い…しかしながら…その匂いは、自分からではなく巴から漂ってきた…。
ハッとして巴の槍を見る…煙が…ゆっくりあがっていた…。
間違いない、巴の槍から発せらていた、まさかとは思いもよら無かった…。
巴『隠し弾は…ホワイトナイツあなただけのものじゃないって言ったでしょ…。』
ガンブレーダーはもう一人いた世界は広い事をホワイトナイツは思い知らされた、巴は形は違えど、使う武器が異なるが似ていた…。
面白い世界を見えた事に嬉しさを覚え凛とたたずむ巴の清々しい笑みにホワイトナイツは惹かれ一人じゃない事をホワイトナイツ改めて実感するのだった。

巴『さぁホワイトナイツ…これでトレーニングはおしまい、シャワーを浴びて何か飲もうか喉が渇いたでしょ、あたしゃもうカラカラでね!』
ホワイトナイツは、巴二式の笑みを見て自然と心が躍っていた、ルーンナイツ以外にも家族を得たような幸せな気持ちに…なっていた…。
ホワイトナイツ『了解…巴二式…ゆっくり話したい事…沢山ある…早くシャワーを浴びよう。』
巴『…巴二式なんて長い…奈都!あたしは、巴で良いよ…そっちの方がしっくりくるし…。』

巴と略して呼んで欲しいと言われまたホワイトナイツと呼ばれるよりなぜか自分に新しく付けられた【奈都】と呼ばれる事にもまた嬉しさを感じた
何故だか心の距離が縮まったような気持ちの良い感覚だった…。

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