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天使の翼(影菅)

 俺はこんな影山が見たかったんじゃない。ただひたすらに、夢に向かってがむしゃらに走る姿が好きだったんだ。こんなところで立ち止まってはいけない。俺のことで悩む、あいつなんて見たくない。
「……どうすれば、今のあいつを救える?」
「ボクたち天使には現世に生きる人間を救えはしないよ」
「あいつはこんなことで腐っちゃいけないんだ。俺はただ腐っていくアイツを見てるしか出来ないのか?何も出来ないのか?」
「菅原くん……」
「俺は最期まで何もしてやれないままなのか……」
「……何にも手段がないって訳じゃないよ。でも、それにはそれ相応の罰を受けなくちゃならない」
「それでもキミは、彼を救いたいの?」
「……あぁ」
「たとえキミが消えてしまうとしても?」
「……」
「消えてしまったら、きっと転生も叶わなくなる。それでもキミは彼を救いたいの?」
 天使の問い掛けに、一瞬言葉を無くす。消える。消滅。叶えられなかった夢を、改めてやり直すことが出来なくなる。重い選択を迫られていることを理解した。
 だが、俺の中の答えは既に決まっていた。それでも俺は、影山を──。
「俺はあいつを救いたい」
「それが菅原くんの答え?」
「ああ、俺の答えだよ」
 俺の人生がここで終わるというのなら、俺の生きた意味は、きっと影山と共に過ごした日々と、あいつに恋をしたことだから。
「分かった。意外とキミは頑固者だからね。ボクはもう何も言わない」
「ありがとう」
「お礼を言われることなんてしてないよ」

陽夜

「……何か緊張する」
「え?」
「え、って何だよ」
「だって、陽は女の子慣れしてるから、こういうことも緊張しないと思ってた」
「それ偏見。俺だって初めては緊張すんだよ。それに、こういうことしたいと思うのは、お前だけだし。これから先もお前にしかしたいと思わない」
「……陽」

というエロ展開

陽夜

「お前さ、何でそんなに不機嫌なの?」
「え?」
「俺のこと、ずっと睨んでさ」
「そんなことしてないって」
「いや、してたから言ってんだけど」
「……」
陽に指摘されて思い知る。彼と、彼と一緒に話してた女の子に嫉妬していたこと。
俺は陽のことが好きなんだってことを。

影菅

好きだ、と自分の気持ちを素直に、ありのまま伝えられたら、どんなに良かったか。この胸に抱え続けた苦しみは、きっと今より小さなものだったかもしれない。
でも、言えなかった。
相手は世界の頂を目指す、選手。
そして、将来を有望視された、天才。
そんな後輩に、自分の気持ちなど、伝えられるはずなど無かった。

影菅

仕事を終え、自宅に帰ると、リビングのソファーで寝る影山の姿があった。そっと彼に近付き、息を潜めて、じっと見つめる。普段は鋭さが目立つ瞳も今は閉じられ、規則正しい寝息を立てている。時折、むにゃむにゃと口を動かす姿に、ふっと笑みが零れる。
こんな彼の姿をきっと誰も知らないだろう。
それは、菅原だけが知る、無防備で愛しい横顔。
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