10月10日は銀さんこと、我らが坂田銀時の誕生日です!!
銀さんおめでと〜♪\(≧▽≦)/
では、ここから先は土方くんと一緒に銀さんをお祝いしたいと思います!
大丈夫な方はどうぞ付き合いください(*^-^*)
銀時誕生日記念・銀土
『雨と煙草とプレゼント』
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土方十四郎はかぶき町の見回りを終え、真選組屯所に戻ろうと歩いていた。
ところがさっきまでの晴天が嘘のように、太陽を黒い雲が覆い隠したかと思うと、いきなりバラバラと雨が降りだした。
「チッ、降ってきやがった!どうすっかな…」
もちろん傘など持っていない。土方は立ち止まり、今通りすぎたばかりの建物をチラッと振り返った。
「どうせもう休憩時間なんだし、少しぐらい構わねぇよな…」
誰にでもなく自分自身に言い訳をすると、通い慣れた万事屋へ駆け出した。
雨宿りにやってきた土方を銀時は喜んで迎え入れた。
「良かったな、大して濡れなくて。ま、しばらくゆっくりしてけばいいじゃん。なんならご宿泊コースでも結構ですけど?」
「んな訳いくか!通り雨だろ、やんだらすぐ仕事に戻る」
「へいへい、休憩だけね。んじゃ飲み物でも持ってくるわ。コーヒーでいいだろ?」
と銀時は台所へ消えていく。
土方は一服しようとポケットに手を入れて、そこにあるはずの物が無いことに気付いた。
「しまった、煙草切れてんだった」
少し先にある自販機で買うつもりだったのが、突然の雨に失念してしまっていたのだ。
それを聞いた銀時は姿を見せず声だけで応える。
「あっ煙草?そういやお前こないだ来たとき忘れてったろ。封切ってなかったからしまっといたんだ。そこの机の引き出しに入れたはずだから開けてみて」
土方は言われた通り机の前に立ち、三段ある引き出しの一番上を開けた。
ガランとした引き出しの中には、土方が愛煙しているマヨボロだけがポツンと置かれていた。
(おー、あったあった。しかし他に何もねぇってどうなんだよ。一応仕事机じゃねぇのか、コレ…)
煙草以外の物が一切入っていなかったことに呆れ、他の引き出しが気になった土方は、二番目の引き出しを開けてみた。
そこには紙類が数枚、無造作に入っていただけだった。
「ん?」
中身までは詮索するつもりはなかった。だが、奥の方にあった紙から自分の名が透けて見えた気がして、思わず手に取ってしまった。
(これは…)
四つにたたまれた薄い紙。それを広げた土方の目にまず飛び込んできたのは、『婚姻届』の文字だった。
驚いたことに゛夫になる人゛の欄には「坂田銀時」、そして゛妻になる人゛の欄には「土方十四郎」と書き込まれていた。
この癖のある文字は銀時のものに違いない。
(何やってんだ、あいつ…)
よく見ると、銀時の名前の横にはしっかり「坂田」の判子まで押されている。
(こんなもん、どうしようってんだ?結婚なんて…夫婦になんて、俺たちがなれる訳もねぇのに。馬鹿だな…ほんとに大馬鹿だ)
けれど土方はそこから目を離せないでいる。
銀時はどういうつもりでこれを書いたのか。
ただの気まぐれか、それとも――
(俺ァこんな薄っぺらい紙切れ一枚に縛られるのなんざ、まっぴら御免だ。俺が妻ってのも気に入らねぇ。だが…)
考えながらも土方の手はポケットを探り、いつも仕事で使っている判子を取り出していた。
そして銀時によって書かれた自分の名前の横に「土方」と捺印した。
(これで本当にあいつと一緒になれるなら、それも悪くねぇ……って何してんだかな。俺も負けないぐらい、相当な馬鹿じゃねぇか)
そのとき銀時が戻ってくる気配を感じた。土方は急いで婚姻届けを元通りに机の引き出しにしまった。
(これ見たとき、どんな顔するんだろうな)
土方の顔には自然と笑みが浮かんでいる。
「煙草あったか?」
飲み物を両手に銀時が台所から部屋に戻ってきた。
「あぁ、助かった」
煙草の箱を手にそう言った土方が珍しく微笑んでいるのを見て、銀時の顔が曇った。
「…んだよ…煙草あったぐれぇで嬉しそうに…」
「あぁ?何か言ったか?」
「いや別に〜?おめーどんだけ煙草好きなんだっつー話。煙いし臭ェし身体にゃ悪いし、ったくどこがいいんだか」
唇を尖らせ、どうやら煙草に妬いているらしい銀時が土方には可笑しくて可愛く映った。
「あぁ、全くどこがいいんだろうな。でも好きになっちまったんだから仕方ねぇ。一生つき合う覚悟は出来てるさ。もう…手放せそうもねぇしな」
土方は話しながら煙草に火を付け、美味そうに紫煙をくゆらせている。
銀時は土方の傍によると、いきなり煙草を取り上げ、灰皿にギュッと力いっぱい押し付けた。
「オイッ何すんだよ!」
そう言った土方の唇は銀時の強引な唇に塞がれてしまった。
「…ふっ…んんっ…」
二人ともに息が苦しくなってきた頃、やっと唇が離された。
「そんなもんよりこっちのがイイだろ?」
「さぁな。それはお前の頑張り次第じゃねーの」
「言ってくれるじゃねーか。それなら俺の本気見せてやるよ。どうなってもしらねぇからな」
ほんのひとときかぶき町を濡らした雨はすっかり上がってしまったが、土方の休憩時間は随分と延長された。
それから暫く経った10月10日のこと。
万事屋の電話が鳴った。
銀時が出ると相手は珍しく土方だった。
「こないだ引き出しに煙草しまっといてくれただろ。あれからそこ開けたか?」
「いや開けてないけど。なんで?」
「今開けてみれば何か出てくるかもしれねーぞ」
「えっなんか入ってんの?」
「そうだな。返事、かな」
「はあ?意味わかんね…」
受話器を肩に挟み、ゴソゴソと引き出しを探っていた銀時が手にしたもの。
(もしかして…これ…?)
それはあの日土方が見つけた婚姻届け。
これは、結婚を反対され江戸に駆け落ちしてきたばかりの若いカップルからの依頼で、銀時が婚姻届けの証人になった時に余ったものだった。
結婚なんてお上が決めた制度で正直どうでもいいと思ってる。
でも、役所に届けを提出し「私たちこれで夫婦に、家族になれました」と話す二人の幸せに満ち溢れた笑顔が眩しくて…ほんの少しだけうらやましかった。
だから俺も書いてみたくなったんだ。これから先の人生ずっと一緒にいたいと本気で想う人の名前、土方十四郎と。
(…なんで土方の判子が押してあるんだ…?いつの間にこんな…
返事って俺の望み叶えてくれるってことか…)
「おい、どうした?見つかったか」
戸惑いや喜び、様々な想いが押し寄せ、無言になってしまった銀時に土方が声をかけた。
その受話器の向こうから聞こえる声に、銀時はハッと我にかえった。
「あぁ…」
いつの間にか涙が頬を濡らしていた。
(電話でよかった…こんな顔見せれねぇ)
と手の甲でゴシゴシと拭ったその時。
「本日の主役がなんて顔してんだ」
受話器から聞こえるはずのの声が直接耳に届いた。驚いて顔をあげると、土方が部屋の入り口に立っていた。
「お前なんで…」
「サプライズってやつ?一回やってみたかったんだよな。誕生日プレゼント気に入ってくれたか」
そう訊ねる土方を力いっぱい抱きしめた。
「おい、苦し…っ!もうわかったから離せって」
「離さねーよ。俺は何があっても一生お前を離さないって心に決めたからな。土方…本当にいいんだな?」
「あぁ。言っただろ?覚悟はとっくにできてるって」
「…今日は俺の人生で最高の誕生日だよ」
「何言ってんだ。今年だけじゃねぇ、来年も、5年後も10年後もその先もずっとお前の誕生日を祝ってやるよ。あっそういや今年の分はまだだったな。
誕生日おめでとう」
「ありがとう…お前のこと好きになってよかったよ」
二人の影が重なった。もう言葉はいらない。二人だけの時間の始まり――
END.
HAPPY BIRTHDAY TO GINTOKI!!
2011.10.10