■「たっちゃん・・・!」
「ん?なんだ、ましろ?」
朝、だんだん白くなりつつある息と眼鏡を面倒くさそうに遠い瞳で見つめながら学校への道を歩いている途中隣を歩いていたましろに言われた。
「たっちゃんはもう自分を演じなくていんだよ?」
「え・・・?」
突然のことで何を言われたか分からなかった。
「たっちゃんは・・・いつも神様に許しを請いているんだよね?」
「・・・何がだ?」
一瞬何の事かと思ったがなんだかその言葉に重みを感じでひっかかるものが自分の中にあるのを覚えた。
「素直になっていいんだよ。たっちゃん・・・・」
そう言って俺の頭にポンと手を乗せたましろになんだか泣きたくなった。
これまでずっと自分は自分というものを演じ続けてきた。その気持ちはある。
皆が求める「佐伯雉鷹」像に近づこうとずっと背伸びをし続けてきた。
それが・・・隣をあるくこの男には伝わっていたのだろうか。
「言わなくても分かってるよ。たっちゃん・・・」
「ましろ・・・・・」
雉鷹は一瞬神に救われたような気持ちでましろをみた。
「たっちゃんはましろが好き・・・ずっと昔からそうなんだよね?」
「は・・・・・?」
一瞬にして雉鷹の顔が不機嫌なそれに変わる。
「お前・・・頭・・・・・」
大丈夫かと言おうとしたら
「今日も決まってるでしょ?」と自慢のエリンギのように横にはみ出た頭をなでる。
「たっちゃん知ってる。今日は俺の誕生日だよ」
「・・・・・・・・・知ってる」
ずっと一緒に生きてきた。ずっとずっと今までずっと。
「だから・・・・・」
「大人になったら俺のお嫁さんになってね」
「ふざけるなあああああ!!!!」
そういってにっと笑ったましろに雉鷹はなぜか耳まで真っ赤にして怒鳴りを上げた。
こいつがこういう性格なのは分かってる。
昔から「大人になったら結婚してね」などど俺をからかってきた。
でも・・・・・
不器用ながらに自分に「敵じゃない」と隙を見せてくれるお前に何度も自分は救われたような。背中を支えられて生きてきたような感覚はある。
あくまで”好き”ではなくて”隙”である。
「・・・・・・・・隙だらけだぞ。ましろ」
そう言って雉鷹はましろのマフラーのうしろの隙間にポケットから取り出した何かを入れる。
「あ!今”好き!”って言ったー・・!!」
嬉しそうに先ゆく俺についてくるましろにため息をつきながら今日も俺は神に許しを請うのだろう・・・・そう考えていた。
この気持ちはきっと伝わらない。俺からの感謝の気持ち・・・・・
ましろ。生まれてきてくれてありがとう。お前が友達で俺は・・・・・・・・
コトン。走っておいかけようとしたましろのマフラーから落ちたそれは確かにプレゼント用の包みにつつまれていた。
しかし
”メリークリスマス”と描かれた包みを見てましろは少々青ざめる
「たっちゃん冗談が下手すぎだよ・・・」
流石に引いた・・・・そう思ったましろであったが中身は自分の好きなアーティストのアルバムだと分かり笑みを見せる。
「・・・・・・・・・・・・・・有難うたっちゃん。さすが俺のお嫁さんだね!」
そう言って浮かれる彼をちらりと見たのち雉鷹は今日も礼拝堂のあるその学校へと足を進めるのであった。
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■たっちゃんとましろの話。私はこの二人が好きなのでなぜかこうなるのですが・・・久しぶりに描いた。
これ雉鷹の話だろとか思いつつ不器用な雉たつと心の広い(?)いや心のヒロイン?(何)ましろが好きです。