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2011/9/19 Mon 00:34
First【跡部×木手】





初めて出会ったのは、全国大会。
偶然眼にしたその一戦。
そこに、アイツは居た…

手に入れたいと心から思った。
何もかも手にしている筈の自分が、
たった一人の男を……

だからこそ、欲望の侭に求めた。
コイツは誰にも渡さないと――




First




全国大会、青春学園中等部の初戦。
幾度か彼等と渉り合った氷帝学園中等部はその一戦に興味を惹かれ、大会に姿を現していた。
いよいよその最終戦、シングルス1が始まる。


「いよいよ、最終戦、ですね」

「そうだな。まぁ、青学の勝ちは動かねぇだろ。次はあの手塚だしな」

観戦席で鳳がそう呟くと隣に座っていた宍戸が小さく頷いてそれに答える。
全選手が見守る中、審判の合図で激闘が始まった。
ラリーの応酬。互いに譲れない戦いを目の当たりにしコートに立つ選手同様観戦席も緊張感に包まれる。

「ハッ、やるじゃねぇか…手塚よ」

これが奴の実力かと跡部が高揚した様にそう呟いた。



試合は後半に差し掛かり手塚がリードすると小さく欠伸をして何気なく相手コートへと視線を向ける。
そこに映ったのは、一人の男――


「…アーン?」

深い紫微色の髪と火に焼けた小麦色の肌。漆黒の鋭い眼光。
端正な顔立ちとそれを引立てる眼鏡。細い腰とバランスの取れた肉体。
その全てに魅せられる、人を惹き付ける言い様の無い不思議な力。



「なんだ…アイツは」

そう跡部が呟いて見せれば隣に居た忍足が口を開く。

「沖縄比嘉中の部長、木手やろ。なんや跡部、気になるんか?」

滅多に他人への興味を示す事の無い相手がそう口にした事自体珍しく、軽く顔を覗き込みながら問い掛けを返す。
対して跡部は忍足の言葉を聞いてか聞かずか不敵な笑みを浮かべて見せた。

その瞬間、忍足は胸中で呟く。
『あの木手とかいう奴、ご愁傷様やな』と

跡部という男がこういう笑みを浮かべる時は大概面倒な事を考えている時で…それをよく知っていたからこそ忍足は木手の身を按じずにはいられなかった。





苦戦を強いられたものの手塚が勝利を収めればチームメイトもそれに応える様に温かく彼を出迎えた。敗者である比嘉中は挨拶が終わりその場を後にする。

観戦席で一部始終を眺めていたものの跡部は立ち上がり部員の声掛けも聞かず給水所へと向かった。
気になっていた筈の勝敗よりも今頭にあるのは、あの男の事。



いざ向かってみると予測通り、目的の人物はそこに居た。
一人で立ち竦む姿は心無しか小さく、頼りなくも見える。
気配に気付き振り返った相手の表情は先程コートで見た強気な物とは違った。


「君は、確か……、」


「跡部景吾。名前ぐらいは聞いた事あんだろ。アーン?」


えぇ、と小さく答える姿を見ればゆっくりと近付く。先刻の一戦で疲労しているためか怪訝そうな眼差しは向けるものの一歩も動かない相手にまた笑みを浮かばせた。


「お前の事が気になったんでな。この俺様が直々に会いに来てやった訳だ」

「…誰も、頼んでなんかいませんがね」

そう呟いて先程よりも眼光を強くする。その表情を見ればまた満足そうに笑い、そうして相手の腰へと腕を回した。

「なっ…!?」

急に何をすんですかと口を開くであろうことを優に予測し、それを遮るかの様に一言告げる。



「気に入った。俺様のモノになれ、木手」



その言葉を理解することが出来ず一瞬硬直し、都合が良いとばかりに躯を抱き寄せる相手を睨む。
暫く動けずにいたものの跡部の体と自身の間に手を突っ撥ねて拒絶しようとするが、強い力にそれも敵わず溜息を吐き出した。


「君の言っていることがイマイチ理解出来ないんだけど、詳しく説明してもらえるかな、跡部君」

そう言って呆れた様に呟いてみせる。だがそれ以上の拒絶の色は無かった。


「分からねぇなら分かる様に言ってやる。
俺様はお前を気に入った。だから、俺様のモノになれ。
まぁ簡単に言えば、俺様のフィアンセにしてやるっつー事だ」

「フィ、アンセ…って……」

君はそっちの趣味があったんですかと問い掛ければ跡部は一瞬不愉快そうに眉を寄せた後答える。

「別に、元から性別なんざ気にしねぇ性質なだけだ。気に入ったから気に入った、それ以上の理由はいらねぇだろ」


そう笑う跡部の姿を見れば驚いた様に眼を丸くする。
少し考え相手の言う事は滅茶苦茶だがそういう人間なのだろうと認識してしまうとまた深い溜息を吐いて見せた。
そうして顔を上げれば小さくフッと笑みを浮かべ"変わった人だ"と口にする。


「君ほどの人間なら言い寄る子は多いし引く手数多でしょ。なんで態々俺みたいな人間にそういう感情を抱いたのか、心底疑問ですよ」

「自分の伴侶ぐらい自分で決める。その辺の女よりお前の方が余程楽しめそうだからな」
「……本当に変わってるね、君は」


そうして互いに笑い合う。

これが二人の始まり。


「ちゃんと、教えて下さいよ。君という人を…」



この男を知ってみるのも悪くは無い。

そう、心の中で思った。









〜始まりは君に出会ったあの日。
きっとあの日から、俺は君に魅せられていたに違いない〜






-終




→後書き*


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