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逃げて逃げて逃げる




付き合っている人がいる。
その人とは一緒に住んでいる、昨夜会社の人と呑みに行くと言い帰って来たのかも分からなが玄関を覗いたら靴があったらか帰って来た事は分かった、分かったんだけど明らかにこの家には無い筈の赤いヒールも無造作に置いてあった。まじかよと彼が眠っているだろうドアを見て、ため息を吐きそのまま洗面所に向かい顔を洗う。眼鏡を外しコンタクトをつけ、ネクタイを結ぶ。そしてリビングに戻り、ソファに散らかった服を洗濯機に投げる、彼のモノじゃない、女の服も一緒に。
コーヒーの豆をひいている間ベランダに出て煙草を取り出す。彼は煙草を嫌がる。だから極力家では吸わないようにしているが、ルールを守らない彼が悪い。これぐらいいいだろう。6月後半の外は朝でも蒸し暑い。7月になるまでネクタイを外せないのが厄介だなぁとぼーっと外を見て短くなった煙草を隠してある灰皿に押し込め、部屋の中に入るとちょうどいいタイミングで豆がひけていた。お湯を入れ、立ったままコーヒーを飲みながら携帯をチェックする、あと少しで上司が迎えに来る時間だ。いったんコップを机に置き、自分の部屋からジャケットと鞄を取り出しすとリビングに戻るとキャミソール姿の女が立っていた。淹れたてのコーヒーを勝手に飲んでいた。
誰ですかとも言わない。ただ女を見て、服着たらどうですか?と言うだけ。余計な事は言いたくない、まず朝から言い合いとか疲れるだけ、ただでさえここ最近残業続きでろくに寝ていない。やっと早めに帰れた昨日、起きたら彼は女を連れ込んでるし、最悪な朝だ。女は笑って「徹君の何なの?」と聞いてきた。

いや、まずお前が誰だよ。と言いかけたけどやめた。
甘ったるい香水の匂いで気持ち悪くなりそう。よかった、朝ごはん食べてなくて。女を見て「ただの同居人です。職場が近いんで一緒に住ませてもらってます」と答えた。確かにこの家は俺の職場から一駅。かなり立地がいい。ただの同居人ではないが。恋人関係の筈なんだけどそれは俺だけだったのかもしれない。それかここ最近彼が起きる前には家出てる帰るのは遅い。
最後に話したのいつだっけ?まともに話してないや。
携帯のメッセージのやり取りもここ最近やってない。
もしかして彼は俺に飽きて女に走っちゃったのかな。でも仕方ない。だって相手しなかった俺が悪い。身体を合わせたのだって覚えていない。女に走っても仕方無い。

仕方ない。
そう思い込むことしかできない。
ガチャリとドアが開き、上半身裸の彼が出てきた。首筋には何か所も赤い印があった。随分楽しく激しい夜だったんでしょうね。彼は俺がいる事に驚いている。口を開こうとしたらタイミングよく携帯が鳴った、上司からだ。
堂々とテーブルの上に置いていた煙草をポケットにしまい、2人の横を通り過ぎる。靴を履き携帯持っていない手で鞄を持ちドアノブを握る。そして横に回し部屋から出る。いつもならエレベーターを使うがじっとしているのが嫌だった。階段を勢いよく駆け下りて、駐車場に停まっている上司の車に乗り込む。
車から流れるラジオは6月30日を知らせていた。


会社につき、上司の車から降りそのままオフィスに向かう。
気持ち悪い、甘い匂いがまだ鼻に残っている。煙草吸いたい。先ほどから胸ポケットにしまってある携帯が震えている。多分及川さんだろう。携帯を取り出し電源を切る。
浮気なんて慣れているのに。
及川さんはモテる。中学の頃からずっと。好きだと言われても、付き合っても彼の隣には女は絶対にいた。俺は何の為にいるのか分からなかった。高校は城西に来ると思っていたんだろう、でも高校が一緒になった所でまた女と一緒にいる姿を見なくてはならないって考えたら中学2年の最初の進路相談で青葉城西には行かないと言っていた。
鴉原バレー部の監督、並川から声をかけてもらった時から心は鴉原にしかなかった。もし鴉原落ちたら白鳥沢。鴉原に行った事で及川さんに怒られた。どうして城西じゃないの?一緒にバレーしたかったし、一緒に過ごしたったって言われたが、俺にはどうでもいいことだったから、なぜ?どうして?そこまで俺にこだわる必要ありますか?と聞いたら不機嫌になってお前の恋人は誰だよって言われた。

まず付き合ってるかどうかも怪しいのにいまだに恋人とか言うんだ、この人。関係ないと思っていたから自分の事を報告なんてしなかったし、連絡のやり取りなんてほとんどしなかった。たまたま部員と買い出ししていたら楽しそう女と腕を組んでいる及川さんの姿を見て、やっぱり俺達は恋人ではないと思った。だから普通に俺は彼女を作った。彼女の存在がばれた時は犯されたけど。
懲りずに彼女を作った。
何故か及川さんに俺の彼女の存在がばれる?内通者でもいるのか?鴉原に?って思ったけど鴉原が城西とそこまで関わりが無い事を知ってるから、デートしている時にでも城西の誰かに見られたんだろう。
及川さんは高校卒業したら東京に行くと言っていた、来年待ってると言われたけど、なぜ待たれるのか?まだこの恋人ごっこは続いてるのか?だからもう終わりにしませんか?って言ったらまた犯された。意味が分からない。

大学は京都に行った。
行きたい学業が京都にあったから。
京都には牛島さんもいた。これは驚いた、しかも同じ大学。大学でもバレーは続けた。大学を進学すると同時に携帯変えた、勿論番号も。これで俺と及川さんは関わる事はない。バレーを続けていてもリーグが違うから試合では合わない。
全日本強化合宿の話が来たが、俺は大学でバレーを辞めるから断ったら牛島さんに怒られた。誘いが来たんだから行けと。だって強化合宿なんて絶対及川さんいるじゃん。最後の最後まで行かないって拒否をしてたんだけど勝手に監督が名前登録して、折角だから行って来いと言われた。本当に恨む。案の定いましたよ。
牛島さんの他にも木兎さん、西谷、鴉原の篠久保もいた。よかった。やはり高校時代にセッターとして3本指に入った俺をコーチたちは見る、そんなに見られても困る。だから牛島さんの後ろによく隠れた。人付き合いが苦手だから、コーチにじろじろ見られたらやりづらい。一緒の大学だから必然と牛島さんとのセットが多かった。合宿は楽しかった。でも最終日に及川さんに呼び止められた。ふざけんなって。

正直言って避けまくっていた。
及川さんは牛島さんが苦手だってことは分かってる。だからあえて牛島さんの隣にいた。ずるいって分かってる。でも話したくないんだ、何となくだけど。部屋だって篠久保と一緒。及川さんと話す余裕なんて俺には無かった。
でも捕まった。説教付きで。
いきなり携帯は繋がらない、どこの大学に行ったかも分からない。やっと居場所が分かったと思ったら京都だし、しかも牛島と一緒とか最悪なんだけど。どうして東京来なかったの?

「思ったんですけど、及川さんってどうして俺に構うんですか?」
「はぁ?好きだから決まってるでしょう」
「でも好きとか言いながらよく女と遊んでましたよね。だからてっきり俺遊ばれてるのかなって思いました、いや、違う、今でも思ってます」

天才と呼ばれ続けた男を抱いてすっきりしましたか?
好きって言えば俺も及川さんを好きになると思ってましたか?
俺正直今、あんたを好きか嫌いかって聞かれたら嫌いです。

「嫌いならどうして俺の告白断らなかったんだよ」
「断る前に抱かれてましたから。断る余裕も無かった。この人は自分の手で天才をどん底に落としたいんだろうなぁって」

携帯が鳴る。
ディスプレイには牛島さんと表記されていた。電話だと画面をスライドしようとしたら腕を掴まれた。

「彰弥は俺の事を見てくれない」
「そういう及川さんも俺の事見てないでしょう。いい加減俺じゃなくてもいいんじゃないですか?」
「違う、見てる。見てるよ。でも彰弥は俺なんて見てない。中学の頃からななやん、ななやんと思ったら次は鴉原。俺の事なんてちっとも見てくれなかった」
「そりゃ蒼空は幼馴染だし、鴉原はチームだったから」
「北一でもチームだったでしょう」

中学と高校の頃では彰弥は別人のようだった。
嫉妬に狂いそうだった。でも彰弥は俺のモノだとどこかで思っていた。見てない、見てほしい、もし女と一緒にいれば嫉妬してくれるかもしれない。でも彰弥は嫉妬なんてしない、てか彼女普通に作るし、意味が分からない。

「及川さんはよく分からない人ですね」
「それは彰弥も一緒でしょう」

強く握られた腕から手が離れる。痕がくっきり残っていた。
及川さんはそのまま俺の肩に顔を埋め小さな声でもう一度チャンスを下さいと言ってた。そのあとに連絡先も交換した。我ながら甘いなぁって思った。
時間が合えば一緒にいる事が増えた。毎日電話もした、今までとは思えないぐらいに優しかった。久しぶりに抱かれた時は気持ちよかった。この時は愛されてるなぁって思った。だから就職先も東京にした。京都に本社を持つ大きな会社、先輩には城西の花巻さん、後輩には国見がいた。城西サンドだ。姉妹会社には岩泉さんと黒尾さんもいた。及川さんは実業団に入り、今では日本代表のセッターとして活躍している。
東京に上京して一緒に住むことになって、でも忙し会社に勤めてるから時間が合わない。そして今日とうとう女を連れ込んでいた。

まぁ、何度も言うけど仕方ない事なんだろうなぁって思う。
エレベーターから降り、そのまま自分のデスクに座ろうとしたらいつの間にかオフィスには上司と見知らぬ男性が隣に立っていた。呼ばれ応接間に行き開口一番に「京都の本社に来ないか」とのお誘いだった。

「今すぐってわけでもないんだ。君のような優秀な人材をぜひ本社で活かしたいと思ってね。返事は3、4日で聞かせてくれ」

今日いきなり上司が迎えに来た理由はこれか。
どうしようか。迷ってたら今朝の出来事を思い出して、あの家に戻りたくないなぁって思った。戻りたくないならこのまま京都に逃げてしまうか。そっちの方が楽かもしれない。

「京都に行きたいです」
誰にも相談せずに勝手に決めるのはお前の悪い癖だ。と牛島さんに言われたような気がする。でもね、牛島さん、俺は逃げたいんだ。東京から、及川さんから。弱いから、強がっているけど本当は嫌だった。潰れそうな感情を必死に繋ぎ止める事で精一杯だ。顔に出さないようにしていたけど本当は泣きたかった。やめた筈の煙草に手を出して、このイラつきを煙と一緒に吐き出せたらどんなに良かったか。嫌な事だけが自分の中に溜まっていく。
辛い、逃げたい。誰もいない所に。

「本当かい?うれしいよ」
「でも、私が京都に行く事は誰にも言わないで下さい。あ、周囲から何か言われるのが嫌とかでは無く静かに去りたいと思いまして」
「ハハハ、君らしいね、分かったよ、黙っておく。じゃあ来月の7日に京都に来てもらうよ。明日から引っ越しの準備とか必要だろうし、午前勤務でいいよ」
「いや、大丈夫です、引っ越し準備とかはいらないです。全部あっちで揃えるので、今まで通りの勤務時間で大丈夫です。」

4,5は休日で仕事も休みだ、それまでにネットなどで不動産を探し、家具も今のうち注文しとけば間に合うだろう。どうしても帰りたくなかった。元からあの家には自分の私物が少ないから好都合だ。

「今日中に本社の住所をメールで送るからその付近で住まいを探しなさい。資料関係は用意しとくから」
「ありがとうございます」


また俺は及川さんから逃げる。
今度は全員から逃げる。
残された時間は会社の仮眠室で過ごそう、ベットもあるしシャワーもある。スーツは新着を用意しとこう。新しい携帯契約して今の携帯は捨てよう。全部全部。及川さん以外のも全部捨ててしまおう。

上司に頭を下げ部屋からでる。
廊下を歩き、オフィスとは反対方向へ歩く。

少しぐらいサボってもいいだろう。
喫煙所に向かう。

「あー煙草吸いたい」

俺は逃げる事しか出来ない

寒いです




こんばんはーーーー!!!生きてます。はい、柑浪でっす。
いやいや寒いですね。びっくりするぐらい寒いです。本当に寒い。炬燵を出す季節になりましたね。ここ最近スマホでネタを書いてたのですが、携帯を壊し、いや、もう内部破損してますと言われ、おいおい私アイフォン6にしてまだ1年経ってないのに4代目なんですけど???と思いあとバックアップとってなかった為書いてたネタが全部消えました。辛い。本当白鳥沢ブームが来てつらい。天童君がもう好きで好きで友達にも全力で天童君を推しているのですがなかなか好きになってくれない、こんなにもゲスなのに!!!魅力の塊じゃないか!そう言ったら友達は伊達工について熱く語りだした。これは友達と会って議論をしなくてはならないと柑浪の中で決まった。

ちょっとした設定なのですが、あ、柑浪の自己満です。
主人公たちの中学校を考えてたら柑浪寝れなくなり、本当自分の主人公たち大好きだなって改めて思いました。許して下さい。

北川第一中学出身
桐谷、七瀬、茶葉
ポジションは桐谷はリベロ、七瀬、茶葉はWS。
茶葉は最後の最後まで影山を支えてきたが全中の試合でリベロと交換しており、ベンチにいた。高校に入っても影山とは仲がいい。
桐谷、七瀬は及川達が3年の時にはすでにレギュラー。
七瀬は次期エース及び次期主将
桐谷はベストリベロ賞を獲った。

千鳥山中出身
大久保、大倉、篠久保
ポジションは大久保、大倉MB
3年で大久保は主将
西谷とは仲がいい。

蒼崎は東峰と同じ中学。
ポジションはセッター。



中学2年の全中決勝、北川第一は王者白鳥沢に負けたが主将及川はゼストセッター賞、2年の桐谷はゼストリベロ賞を獲った。悲しみに触れている暇は無かった。白鳥沢に勝つにはどうしたらいいのか?学校に帰ったらミーティングだった。
荷物を持ち、外に出ようとしたら腕を引っ張らる、振り向くとスーツ姿の女性が立っていた、サングラスをしていて顔は分からない。身長も高い、今の桐谷の10センチ上。誰ですか?と問いかけた、彼女はくすくす笑い、サングラスを外す、サングラス外した顔に見覚えがあり、目を見開いた。彼女は元全日本女子の主将を務め天才セッターとも呼ばれた並川だった。確か昨年まだ26歳という若さで引退し、今となっては公の場に出ない並川がどうしてここにいるのか?
首を傾げる。

「貴方セッターに興味ない?」
「セッターですか?」
「そう、セッター」

今までセッターをやりたいとは思わなかった。先輩にはベストセッター賞を獲った及川、下には天才と呼ばれる後輩影山がいたから必然的にセッターになろうとは考えない。もしセッターやりたいと思っても2人の実力には及ばない、だったら自分はチームの背中を守る守護神でいた方がいいのでは。
しかし並川は桐谷に言った、セッターをやらないか?と。

「貴方は普通に牛島君のスパイクを受けていたわね。読みも外れていない。勘?それとも牛島君のスパイクは読める範囲内なのかしら?」
「よく見てますね」
「放課後自主練もしない、朝練も参加しない貴方が誰よりも努力をしてなさそうなのにどうしてチームで1番上手なのかしら?私は貴方に才能があるとは思ってないわ」

並川の言葉に普段感情を表に出さない桐谷が驚いた。
桐谷は練習が終わった後の自主練には参加しない、部員で1番早く帰宅する、そして朝練は週に2回参加すればいい方だ。幼馴染の七瀬だけ知っている。どうして参加しないのか?

「社会人チームの練習に参加してるんでしょう」
「知ってて聞いてるんですか?」
「ここまでしか知らない。どうして自主練は参加しないのに社会人の練習には参加するのかなって疑問をもっただけよ」

口を開こうとしたら後ろから桐谷を呼ぶ声が聞こえた。
あら、残念答えが聞こえないのね。と並川が言った瞬間桐谷は先に帰ってていいです、あとから追いかけます。と言った。しかしこちらはバズだ、どうやって帰るつもりだろうか?戸惑う七瀬にバックを預け、ウォークマンとイヤホン、そして携帯を取り出し、先に行っててって伝えて、ミーティングには間に合うように帰るから。まだ用事がある、まだこの人とさよならしてはいけない。後で謝っとくから。そう言って七瀬に背を向けもう一度並川の前に立つ。にやりと笑い

「中学の練習が物足りない?」
並川の問いかけに首を振る。

「違いますよ、中学の部活にはマネージャーが必要ないんです。俺の親どっちとも単身赴任で双子の妹1人家に置いて部活に熱中する程馬鹿じゃないし、女1人で夜家にいたら色々と物騒でしょう。だから自主練に参加しないで、1回家に帰り、妹と一緒に社会人バレーの練習に参加する。そしたら妹は家で1人になる事はない。部活は遅くても6時には終わる」
学校から家まで走れば10分で着く。
自主練をしたら家に帰るのが8時を過ぎてしまう。中学生の女を1人家にいるのは危険だと思ったから。だから最初から桐谷は自主練に参加しなかった。妹も部活に入ってれば同じ時間帯に一緒に帰宅できる。幸い妹は運動部ではない為自主練は無かった。

「社会人バレーを勧めてくれたのは妹です。自主練できない分チームに置いてかれてしまってはいけないって。」
「優しいのね」
「社会人って中学生だからって手を抜くわけじゃないから必然的に牛島さんのスパイクのコースが読めちゃうんです、どんなに牛島さんが強くてもまだ社会人には敵わない」

牛島さんにとって悔しいと思いますよ。
だって全部と言っていいほど拾われてしまうのだから。

「牛島さんの表情筋を動かせるのは今の所俺だけじゃないですか?」
「確かに。本当桐谷君って期待を裏切らないわ、もしろリベロじゃ勿体ない。貴方はセッターの方が向いてると思うんだけど」
「そうですか?」
「自分の上げたトスで勝敗が決まるのよ、セッターはコート上の司令塔。セッターの指示次第でチームが変わる。楽しいわ、自分のセットアップで得点を獲れるの」

桐谷君はコートをよく見ている。
相手の動きも見ている。

「桐谷君は頭の回転がずば抜けて早いわ。どんなにボールが乱れてもその瞬間で考え最高のトスを上げらると思うの」
「凄いプレッシャーかけますね」
「私ね、来年から鴉原高校に就任するのよ」

その先の言葉を聞く前に桐谷は笑い
「鴉原に来い。ですか?」
と聞く。

「そうよ、白鳥沢でも青葉城西でもない鴉原に来なさい。絶対に全国へ連れってたあげるわ。あと貴方幼馴染も欲しいから言っといて頂戴」
「鴉原って推薦無いって聞くんですけど」
「無いわ。だから死ぬ気でかかってきなさいよ。私は待ってるわ」

そう言ってサングラスをかけ車のキーを取り出し、送っていくわと。

「鴉原に来る前にセッターの練習もしといて。学校じゃ無理なら社会人バレーで教わってきなさい。私は初っ端から桐谷君をセッターとして使う気だから」
「分かりました。」
「あと、七瀬君にも社会人バレー誘ってあげたら?自主練終わってでも参加できるでしょう?時間的に」
「いや、自主練した後にもう一回バレーって結構きつくないですか?」
「そうかしら?桐谷君だけが社会人バレーに参加して自分は誘ってもらえないって結構悲しいんじゃない?幼馴染としては」

言うだけ言ってみます。
桐谷は並川の後を追って歩き出す。


2年後鴉原で待ってるわ。






2年後の春。
鴉原高校体育館廊下を猛スピードで走る2人。

「てめぇ!ふざけんな、最初に入部届を渡すのは俺だ!」
「はぁ?何言ってるか意味分からないんだけど、てか隣で走らないでくれる?目障り、早くくたばれ」

握っている入部届は既にくしゃくしゃになっていた。
勢いよく体育館の扉を開くと監督の並川の他に制服姿の新入部員が3人いた。

「おせぇよ、5組」
「お前等の担任クソ話長いって有名だからしゃーねぇよ」
「でも最後だと思ってなくて全力疾走してきたんだ」
「お前等早くね?クソ!絶対1番だと思ってたのに」
「1年の教室ガラガラだと思ったらもう終わってたんだ」

ため息を吐き、3人の所まで歩く。
そして監督の後ろには先輩達が立っていた。本当に最強が揃ったなと誰もが言う。

北川第一中学で主将を務め、白鳥沢を破って全国へ行った
七瀬蒼空、そして天才リベロと呼ばれた桐谷彰弥
強豪千鳥山中学主将を務めた大久保叔、エースだった篠久保瑛太
同じく強豪校のセッターを務めた蒼崎梓
並川が自ら声をかけた5人が揃った。

「揃ったわね。ようこそ、鴉原へ」

ーーー今年は全国へ行くわよ









終わり。
1年の時は
4組 大久保 七瀬
5組 桐谷 篠久保
6組 蒼崎
3組に茄智

2年の時は
4組 桐谷 七瀬 大久保
6組 蒼崎 篠久保
3組 茄智

鴉原は1組から3組が進学クラス
4組から6組が特進クラス
制服も若干違う
学年ごとにネクタイの色が違う
男女共通ネクタイ
進学クラス
白のブレザー 中のワイシャツが白
ズボンはグレーのチェック
特進クラス
白のブレザー 中のワイシャツはグレー
ズボンはグレーのチェック

夏服はポロシャツ
特進科は城西と制服が似ている為たまに間違われる。



妄想って楽しいですね。自己満です。

お久しぶり



いやああああ乱世乱世!!
お前監獄学園ご存じない??と友達に言われ、主人公浩史なのに見ないの??正気でござるか??と言われくそおお。見たら絶対はまるから嫌なんだよ!!!1話見てほぉらはまってしまったよ、くそおおお。はい、生きてます。いあや。パソコンはぶっ壊れるわ、スマホは1年も経ってないのにすでに4代目だ、ちょっと私の電気製品大丈夫でしょうか。はい、柑浪でっす。お元気だったでしょうか。ここ最近ハイキューのIHの映画見てきたのですが、いやあ、1回漫画読み返しましたね。もうね、この台詞言わないのおおおお???と友達と突っ込んでいました。でも及川さんが想像以上に喋って飛雄ちゃんが想像以上にお美しかった。結婚してほしい。

ハイキュー2期ですね。梟谷全力待機です。CVありがとうございます。
友達が赤葦の声って誰がやってたの?と聞いてきたので進撃のマルコ、マルコだよ、ほら
マルコ。と言ったら、ごめん分からないと言われてしまった。あああ、2期です。赤葦さん喋ります。興奮です。画面から離れられない。設定見ただけで美味しい。こんなにもおいしいだなんて、ごちそうさまとしか言いようがない。好きです。










「これだから天才は嫌いなんだよ」

そうこれはただの八つ当たり。
牛島に勝てない、背後には天才セッター影山飛雄がいる。
IH影山達には勝った、しかし決勝戦で牛島率いる白鳥沢には勝てなかった。女子はあの強豪校新山女子を破り全国への切符を手に入れた。青葉城西女子バレー部にも天才がいた。及川にとって気に食わなかった。
どうせ天才は何もしなくても上手になるんだろう。
男子の練習が終わり、天才と呼ばれている桐谷弥生が及川の元に来て男子が練習終わったあと体育館を使わせてほしいと来た。正直桐谷の顔を見たくなかった。
天才だ、今目の前にいる女は天才だ。
嫌いだ、大嫌いだ。
自然と手が出ていた。そして文頭の言葉と同時に頬を叩いていた。これは無意識だった。掌に残る痛みで自我を戻す。男子バレー部は何も言えずただ及川を見る事しか出来ない。時間が止まったように誰も言葉を発さない、あの岩泉も。女子は桐谷しかいない。助けを呼びたくても隣の体育館、頬を叩いた音ぐらいでは隣には聞こえない。ただボールの音だけが響く。頬を叩かれた桐谷は目を見開き顔を上げようとしない。ぎゅっと拳を握り、唇をかみしめた。
おい、とやった花巻が桐谷の肩に手を置く。
あれ?弥生ちゃんってこんなに細かったっけ?思わず肩に置いた手を引っ込めてしまった。俯いて何も言わない。花巻がおろおろしている中松川は及川と桐谷を離し、岩泉に及川を任せ桐谷の視線に合うようにしゃがむ、元から長い前髪で今桐谷がどのような表情をしているか分からない。肩が震えていない、泣いていない。
弥生ちゃんと言葉を発した、大丈夫?湿布貰いに行こう。そう問いかけても無反応。やっと時間を取り戻したのか岩泉の怒声が響く。クソ川女子に手出してんじゃねぇよ。

「たかが天才だろうと、牛島だろうと6人で強い方が強い」

小さく桐谷にしか聞こえないような声を松川は聞き取った。何を言っているのだろうか。いきなりそんな事を言って。
私は青葉城西の女子バレー部。同じ学校なのに敵同士。
私だけ。私だけが及川さんの敵。だって私は天才と呼ばれているから。
松川は目を見開いて何も言えなくなった。同じ学校なのに、同じ喜びを分かち合いたいのにたった一人桐谷弥生という天才がいる為女子が全国に切符を手に入れても喜んでくれない。そうすべては私のせい。
好きで天才になった訳じゃない。私だって努力した。身長は無い、パワーだってない。だから人一倍技術を磨いた、人一倍練習した。人一倍セッターとして負けたくないって気持ちは大きかった筈なのに。周囲はいつの間にか私を天才と呼んだ。高校から始めたセッター。たった1年で全国に名を轟かせる存在となった、自由自在に試合を支配する、セッター。何だ、桐谷弥生は影山飛雄の女バージョン。勝てる筈が無い。

私を天才と呼んだのは誰?
私を天才にしたのは貴方達でしょう。
負けたからって勝手な事言わないで。
何も知らないくせに、何も私の努力を知らないくせに。
好き勝手に言ってんじゃねぇよ。

でも悔しい。
どうして私は敵なの。同じ仲間だと思ってくれないの。
どうして他の部員には笑うのに私には笑わないの?私には話かけてくれないの。
私だけ、そう私だけ。

私はいつになったら青葉城西の仲間になれるの。

頭がふわふわし、だんだん思考回路が停止してきた。桐谷はこれから自分自身に何が起こるか予想できた。だから早くここから出なくては、女子がいる場所に戻らなくては。松川の肩を掴みがたがた震えている膝を無理矢理伸ばす、早くここから出なきゃ、早く。動け足、動け動け動け。吐く息が多くなる、駄目、もう少し待って。まだここで倒れるわけにはいかない。男子には弱い所を見せたくない。男子には、及川さんにはこんな姿を見せたくない。私は強い。決めたじゃないか、天才として生きるって。周囲が勝手に天才と呼ぶんだから私は天才を演じるって決めたのにどうして及川のたった一言で傷ついている?私は強い。

私は強い。強いんだから。

「松川さん、私は強いですか?」

「え?」

「私はちゃんと天才を演じられていますか?」

背後にいた花巻も言葉を失った。
今桐谷は何を言った。天才を演じる?何を言っている。天才は演じられる訳がない。生まれた時からバレーの神様に選ばれたと言ってもおかしくない君がどうしてそんな事を言う。
膝が笑い立位が保てない、松川の肩を力強くつかむ、ジャージには皺が出来ている。顔を下げ、膝は完全に床につく。

落ち着け、落ち着くんだ弥生。
自分の中で必死に問いかける。ここで暴走しては駄目。私は天才よ。弱い所を他人に見せちゃいけないの。立ち上がれ、たまには私の言う事を聞きなさいよ。

落ち着け。
でも口は勝手に動く

「勝手に天才って呼びやがって」

違う、こんな事を言いたいわけじゃない

「天才にしたのはお前等だろ」

違う違う。

「私の努力も知らないくせに。私がどんなに天才と呼ばれても平気だった振りをしていたのにそうやって簡単に私の心を踏みにじる」

最低だ。
そう言おうとしたが言葉にならなかった。
吐く息がリミッターを超え、上手に息が吸えない。先ほどの言葉は遠くにいた及川達にも聞こえていた。花巻はすぐに「七瀬を呼んでこい」と指示し、国見が隣の体育館に走る。松川の肩を掴んでいた手は下へ下がり、自然と目からは涙、花巻と松川はすぐに桐谷の身体を横にした、苦しい、助けてと求めている。

「弥生ちゃん、大丈夫だからね」
だからお願い息を吸って。
ばたばたと足音が近づいてくる、息を切らした七瀬と大久保が桐谷へ駆け寄った。

「誰でもいいから保健室から紙袋持ってきて。紙袋よ、ビニール袋じゃないからね」

金田一と国見はすぐに保健室に向かう。
大丈夫、大丈夫だからね。と七瀬は桐谷を抱きしめ背中をゆっくり叩く。
七瀬の声を聞いたて安心したのか更に瞳からは大粒の涙が流れた。

数分もしないうちに金田一達は戻って来ており、後ろには保健室の先生もいた。ゆっくり体を寝かせ、足を高くし、口元に紙袋を当てる。ゆっくり息を吸うのよ。
だんだん呼吸はゆっくりになり、そうその調子、もう少しよ、頑張りなさい。その言葉に桐谷は小さく「もう頑張りたくない」と言った。桐谷の言葉を聞いた七瀬と花巻は何とも言えない顔でただ泣いている桐谷を見る事しかできなかった。
呼吸は落ち着き意識を失った桐谷。すみませんと保険医に頭を下げ、あとは大丈夫ですと言い保険医は何かあったらすぐ来なさいよ。と言って保健室に戻る。

「よく頑張ったね、早く帰ろうっか」

七瀬は大久保に部室から荷物を取って来てと指示をし、そのまま桐谷をおんぶする。力を抜けきって全体重が七瀬にかかる。重くなったな、こいつ。と苦笑いしながら進もうとすると岩泉に桐谷を奪われ、送っていくと言った。

「及川は頭を冷やせ」

「おい、岩泉いいのかよ。今の及川はお前が一番適任だと思うけど」

「いい、俺はあいつを説教するつもりもねぇ」

そう言って岩泉と七瀬は体育館を後にする。
長い廊下を歩いていると岩泉が聞かないのか?と問いかけてきた。その質問にうーんと答え

「あたしは弥生がここまで追い込まれている事を知ってて放置してましたから何も言えませんよ」

「はぁ?」

「ずっと知ってました、天才って言われててすごく傷ついていたことを。でもそこであたしが弥生を助けてしまったら弥生はこれから先ずっとあたしを頼ってしまう。嬉しいんだけど、何があったらあたしがいるって、あたしがいるから他は何もいらないって思っちゃいけないって思ったから気付かないふりをしてました」

弥生は強がりで他人に弱さを見せたくない。
プライドが許さないんですよ。
あたし中心の世界だった。七瀬蒼空がいれば桐谷弥生は十分だった、蒼空がいるから他は何もいらない、蒼空がいるから天才と呼ばれようとも気にしない。だって蒼空は絶対に裏切らないから。蒼空だけが桐谷弥生を天才扱いをしない。

「弥生をあたし中心じゃない世界に連れてってくれるのは及川さんかなって思ったんだけどまだ早かったなぁ。多分及川さんの一言で弥生あーなっちゃったんですよね」

「そうだな」

「あたし以外で弥生を動かせるのは及川さんだけですよ。弥生本当は及川さんと話したいと思ってたし、弥生以外に向ける笑顔とかが凄く羨ましいと思ってましたから。でもあの子素直じゃないから自分から言えずに溜め込んでしまって本日大爆発」

暫く歩き、大久保が手を振り「二人の荷物だよ」と言って、一回俺も荷物持ってくるわ。と桐谷を背中から降ろそうとしたら背後から足音が聞こえ、4人の前には息切れをした及川が岩泉の荷物を持っていた。
え?どうしたんですか?とガチトーンで大久保が問いかけると

「岩ちゃん、俺を殴れ。さっきマッキー、まっつんにも殴ってもらった。あとは岩ちゃんだけ。あ、待って。七瀬ちゃんも殴って」

「待って、及川さんどうしましたか?」
と聞こうとした瞬間岩泉の拳は及川の頬を殴っていた。流石パワー5、及川は数センチ吹っ飛ぶ。わお。と言葉を失う七瀬と大久保。岩泉の殴りを見て岩泉には逆らわないようにしようと決めた2人。

「まぁ、あたしもご指名もらったからいっちょ殴らせてもらいまーす」

「え?嘘、さっきのでダメージ大きいから軽く、ほんと軽くでお願い」

「えー。弥生を泣かせた罪、こりゃ重いぜ」

七瀬は及川の胸倉を掴み腕を振り落とすがいつになっても痛みは来ない。にやりと笑って七瀬は及川の頬を軽く叩き

「今度弥生を泣かせたら急所狙うからな」

ハハハハハと笑いながら桐谷の荷物を及川に投げ、岩泉さん弥生を及川さんにバトンタッチと言う。戸惑いながらも及川に桐谷を渡す。前から抱きかかえる。

「弥生ちゃんってこんなに軽かったんだ」

「これでも太った方ですよ。ねぇ大久保」

「あー確かに。最近太ももに肉ついてきたよね」

そう言いながらハーフパンツを少しめくるとやめてよ。と顔を真っ赤にしながら抗議する及川の姿。おやおや女慣れしている及川さんがどうして顔を真っ赤にさせているんですかー?とからかう。

「いい加減気付け」

「何をさ」

「てめぇ桐谷の事好きなんだろう。天才だからって毛嫌いしてたかもしれねぇけど、桐谷が七瀬や大久保、女バレにはコロコロ変わる表情に嫉妬してたんだろ。俺には笑ってくれないとかほざきやがって。全部てめぇが捻くれてたからだろうが。もっと早く素直になっていればこうなる事も無かったのにな。嫌われても当然だな」

「どうしよう、今更気づいちゃったよ。絶対弥生ちゃん俺の事嫌いになったって。トビオに奪われても仕方ない事やっちゃったよ。どうしよう。岩ちゃーーん」

「だからぁ、てめぇが桐谷を送って起きたら謝ればいいだろうが」

「え?家に連れ込んでもいいの?」

「変な事したら女バレセコム発動させますからね」

「はい」

及川は桐谷と自分の荷物を背負い、じゃあ責任とらせていただきますと言って帰路。及川の背中を見送った3人はため息を吐き

「及川さんが素直になってデレデレになって弥生が戸惑う」

「何言っても及川さんは可愛い、本当弥生ちゃん可愛いしか言わない」

「あー想像つくわ」

どんまい、桐谷。





及川は両手がふさがっており、自分自身で玄関を開ける事が出来ない。この時間帯両親も帰ってきている。しかし玄関を開けてもらわないと自分は中に入れない。仕方なくピンポンを押し、他所専用の声を作った母親の声がスピーカー越しから聞こえる。
徹だけど、今両手塞がってて玄関開けられないからあけてと言う。どうやってピンポン押したかと言うと唯一塞がっていないのは足だけ、バランスを崩さないように片膝でプルプルしながらピンポンを押したのだった。玄関を開け、出てきたのは実の姉。顔をポカーンとして及川を見てた。及川が抱きしめているのは明らかに女、及川が家に女を連れ込んだ事は一度もない。彼女はいた、しかし親がいない日でも連れ込まなかった事を姉は知っている。弟が女を連れてきた。

「お母さん!徹が、徹が女連れてきた」

「ちょっと姉ちゃん」

玄関に入り、靴を脱ぐ、桐谷の靴も脱がそうとするが出来ない。そこに甥の猛が来た。

「猛、弥生ちゃんの靴を脱がせて」

「弥生ってよく徹が言ってた可愛い子?」

「いや、うるせぇよ、いいから脱がして」

へーいと靴を脱がしてもらい、そのまま2階の自分の部屋に行く。引きっぱなしの布団の上に寝かせ、横に座る。寝ている桐谷の頬を触り、先ほど叩いてしまった為赤くなってしまっている。ごめんね。と優しく撫でる。

「俺ね、弥生ちゃんの事好きなんだ」

天才って言って遠ざけていた。
本当は最初から好きだったのかもしれない。人一倍努力していた事は知っていた。練習が終わっても最後まで残っていたのは桐谷。背が低い事を気にして毎日牛乳を飲んでいる事も知っていた。でも自分が拗らせていたから、桐谷を好きって心のどこかで認めたくなくて酷い事ばかりしていた。

もう逃げないよ。
これからは今まで酷い事してきたから、その分優しくする。
だから俺に甘えて。俺を頼って。
七瀬ちゃんじゃなくて俺を見て。俺だけを考えて。

こう見えても俺独占欲強いんだ。
教室から桐谷の体育を見ていた事もあった。桐谷は顔がいい、男子がちょくちょく話かけて普段動かさない表情を動かしていたのを見てかなり嫉妬した事も覚えている。俺だけ、他の男にはその表情を見せないで。心の中でドロドロした感情が生まれた。

「んっ」

もぞもぞと動き出した薄っすら目を開け目線だけ動かす。

「おはよう」

「・・おはよう?」

「状況把握できてない感じだね。戸惑った顔も可愛いよ」

桐谷は勢いよく起き上がり、なぜ及川がここにいるのか?必死に記憶を取り戻そうとするが、体育館で及川に叩かれた後記憶がなくなっている。どうしてここにいる。いや、まずここはどこだ?自分の部屋ではない。周囲を見渡すと男子のユニホームが目に入った。嘘でしょうと今度は横にいる及川を見て言葉を失う。どうしてそんな表情をしているのか?私は貴方の嫌いな天才なのにどうしてそんな優しい目で私を見る。
そんな顔を知らない。思わず及川と距離をとろうとするが、すぐさま腕を掴まれ遠ざかる所が及川の胸に収まってしまった。及川の力強く桐谷を抱きしめる。

「素直になれなくてごめんね。今までごめんね」

「え?及川さん?」

「ごめんね、最低な事しかしなかったのに。でもね俺、弥生ちゃんの事好きだって気付いた」

「ほぉ」

「好きです。弥生ちゃんが俺の事好きじゃなくてもいいから気持ちだけは伝えさせて。そしてこれから弥生ちゃんが俺の事を好きになってくれるように努力するから」

「ちょっと待て。展開が読めない」

「弥生ちゃんが俺に頼って俺だけを見て俺にしか見せない表情を俺だけが見たいって思っちゃった。ごめんね、でも許して、好きだから」

桐谷を抱きしめる腕をほどき、両手で頬を包み込む。

「顔真っ赤、期待しちゃうよ」

「いや、その、え?」

「もしここでちゅーしたら嫌?」

「え?」

「嫌か、嫌じゃないかって言ったら?」

「嫌じゃない」

「もーーー。可愛すぎ。襲っちゃうよ、可愛いでしょう」

「お、及川さん?」

「今日弥生ちゃんは及川さんの家でお泊りね」

「は?え?」

及川は顔を近づかせ、軽くキスをし、いったん唇を離し桐谷の表情を見る。真っ赤だった顔は更に赤くなり、ちゅーしちゃったと独り言を言ってた為我慢が効かずもう一度キスをする、今度は角度を変え、濃厚なキス、苦しく口を開くと舌が入り桐谷の咥内を犯す。唾液が混じり合う音が静かな空間に響き桐谷の聴覚までも犯す。
唇が離れ、どちらかの唾液か分からない唾液が桐谷の口からこぼれる。もう一度顔を近づけようとしたが勢いよく襖が開く。

「ちょっと徹、いい加減彼女見せなさいよってちょー美人じゃん」

「姉ちゃん!邪魔しないでよ」

「てか夕飯出来てるんですけど、早く降りてきなさい」

「分かったよ、弥生ちゃん立てる?」

「私もいいんですか?」

「もちろん、てか食べないとダメでしょう」

さり気なく手を結び、リードする。
姉は及川に近づき

「ちゃんと避妊しなきゃダメよ」
と耳元で囁く。
その言葉に顔を真っ赤にさせ、今日は手出さないよ。と怒った。




次の日部活中

「弥生ちゃん、さっき突き指したでしょう、ちょっと見せて」

「いや、大丈夫ですから練習戻って下さい」

「大丈夫じゃないでしょう。将来のお嫁さんが傷ついてたら嫌でしょう」

「え?お嫁になるんですか?私」

「当たり前でしょう」

「何でしょうか、岩泉さん、この気持ち」

「俺に聞かないで下さいよ、花巻さん」

「先日の荒ぶっていた及川はどこに行ったのでしょうか?岩泉さん」

「だから俺に聞かないで下さいよ、松川さん」

「今日手を繋いできた時は驚いてシュークリーム落としたわ」

「付き合ったのか?って聞いたら、弥生ちゃん、さぁ?って答えたんだけど大丈夫?」

「駄目だろう」

「てか昨日泊まって手出さなかった事がすげぇよな」

「でもライン荒ぶってたな、可愛い、手出したい、生殺しだって」

「知らねぇよ」

「いつ手出すかなぁ」

「俺は一か月」

「いや、半年かもしれねぇな」

「クソ川の誕生日に俺の誕プレは弥生ちゃんがいいですって言うな」

「ちょ!それはあり得るわ」

「絶対言って、駄目です、IH近いんで、練習しますって振られる」

「ざまぁ」


本日も青葉城西は平和です

溜まりに溜まったネタを投稿しまくるぜっ!


このお話はフィクションです、実際にはあり得ないので、うわ、こいつの頭ほんとやべぇな。という気持ちで読んで下さい。私の小説は。そしてここ最近。いや、ずっと前からか、桐谷率高すぎて自分でも驚いております。そろそろ変態主将の話とかも書きたいなぁと思ったここ最近。はい、ネタいきまーーーす!!




医者の父さんが深刻な顔をして言う。躊躇い、重い口を開く。お前は記憶をなくす病気だと。ここ最近頭痛が酷く、物忘れが酷かった。物忘れと言っても勉強内容とかは覚えている、人をよく忘れていた、担任を呼びに行く途中担任の顔と名前が分からなく職員室の前で立っていた事。顔と名前が一致しない、女だっけ?いや、男だったような気がする。毎日会っているのに忘れてしまうことに違和感を感じて父さんのところに行けば、俺は病気らしい。治す方法は見つかってて、でもそれは日本じゃ治せないから海外に行かなくてはならない。父さんじゃ治せないの?と聞いたら、静かに首を横に振っただけ。
でも今海外に行ったら春高に行けない。春高連覇がかかっている今、セッターの俺がチームから退けるのは痛い。だったら病気を治すよりバレーがしたい。記憶が無くなってもいい、バレーさえ覚えてればそれだけでいい。

父さんと約束をした。
春高が終わったらすぐに海外に行くことを。
一度失った記憶は戻らない可能性がある。戻る事例案もあるが、絶対に戻る確証はない。
その日から日記を書くようにした、日記なんて小学校の夏休み以来だ。とりあえず自分の事も忘れてしまうらしいから自分のことから書く。
俺の名前は桐谷彰弥、今は17歳。鴉原高校2年、部活はバレー、ポジションセッター。左利き。好きな食べ物は唐揚げ、あとコーヒーも好き。ユニホームの背番号は5。あと、バレー部の事も書いた。
主将は3番大久保叔、ボジションミドルブロッカー。性格は性悪。同じ歳。エース、1番篠久保瑛太。ボジション、ウィングスパイカー、性格はうざい。2番リベロ、すげぇリベロ、俺は蒼崎梓を超えるリベロを知らない。4番、七瀬蒼空、俺の幼馴染。いつも世話になっている人。6番茶葉靖昭、1年エース、とりあえずすげぇ。7番大倉京治、同じく1年、こいつもすげぇ。でも2人してうるさい。

家族は4人。
医者の父さん、デザイナーの母さん、双子の妹

本当に忘れちゃうのかな?
バレーしてる自分も。


今日も朝から頭痛が酷い。
日記帳を鞄に入れ、学校に行く。すれ違う人がおはようと挨拶をするが、思い出せない。誰だっけ?クラスメイト?同じ教室に入ったからクラスメイトか。俺は自分でも人とあまり関わらないタイプだから、あと顔に出さないから思い出せなくてもクラスメイトは気付かないだろう。でも違和感はある。昨日まで覚えていただろう人間の顔が今日になって忘れている。普段気にも留めなかったのにどうして俺はこうにも必死にクラスメイトを思い出そうとしているのか?

失うのが怖い、恐怖感。
あっちは覚えているのに俺は知らない。一方通行。分からない、勉強は分かるのに人の事は分からない。分からない事がこんなにも怖いのか。
全部忘れてしまったら俺はこの世界で独りぼっちだと思ってしまうのか?

-----忘れてしまったらしい。クラスメイトを。
-----今日のお弁当は大好きな唐揚げ
-----今日も晴れている、バレーがしたい。

たまたまバレー雑誌を見た。
鴉原特集、そこに書かれていたのは、天才セッター桐谷彰弥。俺は天才なのか?でもここに書かれているということは天才だったのだろう。
どこか天才なのか?
でも俺って天才なの?って聞いたら。お前何言ってんの?って言われそうだから聞かない。天才セッター。何だろう、このフレーズ、とても嫌だ。

俺を天才と呼んだのは誰だっけ?
思い出せない。あぁ、今日も頭が痛い。




-----桐谷彰弥は天才セッター
-----でも俺は天才が嫌いだったような気がする
-----覚えてないけど。

雨が降っている、帰り道、傘を持ってないから雨宿りしていた。多分通り雨だからやむだろう、それまで待っていよう。気圧の変化があるといつも以上に頭が痛くなる、今日は先生を忘れてしまったらしい。
でもそこまで先生とは関わらないから大丈夫だろう。早く雨やまないかな。

「桐谷さんっすか?」

傘をさして、黒いジャージ姿の4人。
鳥野か、影山が声をかける。あれ?影山ってバレー部だよね?ポジションどこだっけ?
隣にいるのは誰?でも試合した時結構印象残っている、背番号何番だっけ?ポジションは?嘘?忘れちゃった?顔には出さないけど、正直驚いている。俺は影山と仲が良かったのか?それともライバルとかだったのか?分からない、何も分からない。メガネの男はなに?そばかすの男は誰?

「うおおお、桐谷さん今日部活休みっすか?」

「うるせぇぞ、日向」

小さいのが日向。
日向日向と頭の中で何回もリピートする、早く日記帳に書きたいけど今は書けない。日向、忘れないように。鳥野の日向。

「休みだよ、鳥野も?」

「うっす。今から月島の家で勉強会っす」

「頭の悪い王様とチビのために時間を使うなんて本当に勿体無い」

なんだと。と言い争っている。
メガネの長身が月島。チビは日向。

「まぁ、いい勉強になるって、ツッキー」

「山口、2人を甘えさせないで」

そばかすが山口。
影山と日向と月島山口。
忘れるな、覚えろ。日記帳に書くまで忘れるな。

「そう、頑張ってね」

「傘貸しますか?俺、日向の傘に入れてもらうんで」

「大丈夫、もうすぐ止むと思うから、それまで待ってる」

多分借りても忘れちゃうから返せない。
4人は一礼して帰る。すぐに鞄から日記帳を出して書く。

------鳥野のバレー部に会った。
------黒髪が影山、小さいのが日向、長身のメガネは、月島、そばかすは山口。
------次会っても大丈夫なように書いとく。


「お前最近人の顔を見て考える事多くね?」

部活中に篠久保に言われた。
最近顔と名前が一致しない。誰が誰だか不安な時がある。でもまだ少し考えた、思い出せる時があるから考える。その場面が多くなったから問いかけたんだろう。バレーだけは忘れたくないとか言ってたけど、バレー以外にも鴉原の人間は忘れたくない。勿論家族も。失うには大きすぎる。忘れないように毎日喋って毎日顔を見て、頭の中で名前を繰り返す。まだ奪わないで欲しいから、俺はこのメンバーとバレーをしたい。春高に行きたい。

「気のせいだよ」

気のせいじゃない。
気付かないでよ、バカ。お前は変なところで勘が鋭いから嫌いだよ、昔から。いつお前と会ったかも忘れちゃったのに、昔からとか言っちゃう俺本当に嫌だ。

-------鴉原のエースは篠久保
-------エースに最高のトスを上げるのが俺の役目。早く春高に行きたい。忘れないうちにオレンジのセンターコートに立ちたい。まだ忘れたく無いから。


朝起きたら忘れていた、茄智を。部屋に入って来た女が誰だか分からなかった、一瞬驚いて何も言えなかったけど、同じ家にいるという事は家族だ。間が空いてしまったけどおはようって言ったら、泣いてしまった。忘れちゃったんだねって何回も繰り返してた。日記帳を見て、彼女の名前は茄智、俺の双子の妹。
傷付けてしまった。
妹を。どうして俺は記憶を取り戻すよりもバレーを選んでしまったんだろうか?今になって後悔した。俺が忘れた事で人は傷付いている。ごめんって言っても許されない事。俺はバカだ。バレーを選んでしまった。強がっていた、記憶を失っても大丈夫だと。でも全然大丈夫じゃない、むしろ精神的にきつい。あの人は俺の何だった?分からない、不安。

何回も謝った。ごめんって。
思い出すから、絶対に思い出すから。だから今はごめんなさい。

今は俺のわがままを聞いて下さい。

ーーー妹を忘れてしまった。兄失格だ。

あぁ、今日も頭が痛い。

目の前にいる人たちは誰だ?
青葉城西と書かれているジャージ。どこだっけ?どうして俺に話かける?知り合い?俺を知っているって事はバレー関係者かもしれない。隣にいる蒼空と喋っているって事はそうだ、確信は出来ないけど。
今までは顔を見て暫く考えたら名前が出てきたけど、今は違う、名前が出てこない。あなたは誰ですか?先輩?後輩?それとも同級生?本当に分からない。

思い出せ。頑張れよ、俺の記憶力。

「おーい、彰弥。ぼーっとしてどうした?」

「え?あ、ごめん。何か言った?」

「言ってねぇけど、顔色悪いよ、帰る?」

「大丈夫」
目の前の人がこちらに向かって歩く。ココア色の瞳、世の中の女性が騒ぐイケメン。甘い瞳でこちらを見ても俺には分からない。誰だ?誰、思い出せ、目の前の人は俺とどういう関係だったのか?
頬に触れた手が暖かいのに、涙が出そうなるのを必死
堪える。この大きな手を知っているのにどうして名前が思い出せないんだ。

「俺に電話してみて下さい」

「どうして?」

「電話帳全部消しちゃったんですよ、間違って」

彼はいいよ。と笑い、電話を鳴らす。聞き覚えのあるロック調の曲、ディスプレイにある名前は「及川徹」及川さん、忘れるな、目の前の人は及川さんだ。
後ろにいた蒼空は驚いていた、そうだろう、だって電話帳消したのにディスプレイに名前が表示されたから。消していない。
蒼空に腕を引かれる、ちょっとお前と話したいって。そうだよ、蒼空には言わなきゃ、どうして独りで抱え込んでしまおうとしてしまったのか。蒼空はずっと俺の味方だったじゃん。

「すみません、及川さん。ちっと野暮用思い出したんでここで失礼します」

「わかった、じゃあね」

「岩泉さんも、松川さんも花巻さんもお先失礼します」

左から松川さん、花巻さん、岩泉さん。
頭の中で繰り返す、呪文のように。

「ねぇ、お前どうしたの?さっきのなに?」

「ごめん」

「ごめんじゃ分からねぇから」

「俺さ、病気なんだって。記憶がなくなっちゃう」

「え?」

記憶がなくなっちゃう病気。
蒼空の顔を見ずに言う。多分蒼空は怒っている。どうしてもっと早く言わない?もし、蒼空が同じ病気で俺が同じ立場だったら殴ってた。何年一緒にいると思っている?どうして言わない?俺じゃ頼りにならないのか?と。同じ気持ちなんだろう、殴らないのは蒼空の優しさ。

「治るの?」

今まで聞いたこと無い声のトーン。
震えそうな声を抑える。
治るの方法はあると。

「じゃあ治せよ」

「でも海外なんだよ、バレーから離れなくちゃいけないんだ、春高だって近いのに。やだよ、まだバレーをしたい」

「はぁ?」

蒼空は胸倉を掴んで言う。

「お前は記憶を無くしてまでもバレーやりてぇのかよ?バカじゃねぇの?記憶なくしたら戻ってこねぇかもしれない、バレーは出来ても俺らの事は覚えていない。それでお前は満足か?」

「嫌だ、忘れたくない。本当は何も忘れたくない。でも起きたら妹の顔忘れちゃうし、さっきの人達も忘れた。あの人達は誰なのか、分からない。バカだ、もっと早く治してたら妹が傷つかなくてすんだ。でもお前等とバレーがしたい気持ちの方が強かった」

「バレーはいつでもできるだろ。どうして今にこだわる?」

そこで気付いた。
蒼空はその先の言葉を言えなかった。どうして今に拘るのか?答えはひとつ、天才が作り上げた最高のチームが春高2連勝を目指している。という見出しの雑誌を頭の中で浮かべた。いつもそうだ、自分は天才では無い、でも周囲は天才と呼ぶから天才を演じなければならない。昨年の春高も優勝した、プレッシャーが大きい。ここで予選敗退でもしたらマスコミは、桐谷彰弥は天才では無かった。と勝手に言うだろう。それが嫌だった。だったら記憶を無くしてまでもバレーをして、頂点に輝いて、天才のまま姿を消したい。
バカだな、本当バカだよ、お前は。と蒼空は泣きそうになる。お前は天才じゃ無いんだからもう天才というレッテルを剥がしてもいいんだ、なのにお前は。

胸倉を掴む手が彰弥を抱きしめる。

「俺はお前に忘れて欲しくない。記憶があるうちに海外に行って欲しい、もし記憶を無くしたら俺の事忘れちゃうんだろう。そんなの嫌だ」

何年の付き合いだと思っているんだ。
もし春高を連覇しても、次の日には初めまして。だったら洒落にならない。

「なぁ、たまには俺の我儘聞いてくれよ」

「うん」

「鴉原の事は俺たちに任せてよ、お前を天才と呼んだ人間達にギャフンって言わせるからさ、お前が安心して海外で過ごせるようにするから」

「もしさ、もしだよ、俺がお前を忘れちゃったら全力で殴って。でもお前は俺を忘れないで、またバカみたいに一緒に居て欲しい。人見知りの俺の隣にいて」

「バーカ。お前の面倒見るのは慣れてるから記憶無くしても全力で思い出させてやるよ。だから、な?行って来い、待ってるから。お前の帰りを。俺も、鴉原のメンバーも」

「うん、ありがとう」

「おー、泣け泣け。目が腫れるぐらいに泣いてスッキリしろや」

マンションに着くまでずっと泣いていた。
歩きながら、蒼空の後ろに隠れて、周囲はどうしたのだろうか?と興味本位に2人を見るが、気にしない。蒼空は呑気に歌を歌い、オートロックの自動ドアの前には妹の茄智と茄智の恋人の篠久保が2人の帰りを待っていた。多分茄智から話を聞いたのだろう、瑛太は彰弥の頭を叩き、蒼空同様どうして言わなかった?と自動ドアの前で説教をしていた。
いつもなら言い返す彰弥だったが、言われるまま、また泣く。うるせぇ、アホ。と小さく言うだけ。
家には父親がいて、蒼空がニカっと笑い、こいつ覚悟決めましたよ。と言う。

そうか。と言い携帯を取り出し、どこの言葉か分からないが誰かと電話をしている。

「明日の午後の便でドイツに行くぞ」

「分かった」

「春高連覇してやっから任せろや。ちゃんと治してから日本に戻って来いよ、分かったか?あとあっちでもバレーしてろよ、いつ戻ってくるか分からねぇけど、高校 は無理でも大学がある。今度は敵として戦うかもしれねぇし、だったらお前をけちょんけちょんに潰してやっからな」

「うるせぇ。お前が唖然とするすげぇセッターになって帰って来てやる」

「日本戻って来たら一番最初に俺にトスちょうだいね」

ーーーー治す、治す、治して日本に戻る
ーーーーそれまで我慢
ーーーーありがとう

朝になって、誰かの記憶を失ったような気がする、でもバレー部は覚えていた、父さんも。昨日のうちに必要な物をバックに入れて家を出る。玄関には茄智と篠久保、そして、玄関を出たら蒼空がいた。2年間は最低でもドイツで暮らす事になると言っていたから一応退学届けを出して、他の事は母さんに任せた。
朝部活に顔を出してそのままドイツに行く。

鴉原でバレーをするのはこれが最後になる。
朝のミーティングでまずは言う、病気の事を。そしてドイツに行く事。

沈黙の中口を開いたのは大久保。

「大学は絶対こっち来いよ、絶対だからな」

「桐谷さん、ドイツ語喋れるんっすか?英語でも危ないって聞いたのに。俺そこが不安っすよ、そこらのチンピラに絡まれないか、いや、その前に身長が小さすぎてあっちでは逆に目立っちゃいます、日本に、戻ってくる時はあと10センチ伸ばしてきてくださいね」

「10センチとか難易度高くない?だって彰弥くん今170無いのに。第三成長期ぐらいこないと無理だよ、そんな、野望。あ、お土産はドイツの美味しいお菓子でいいよ?あと一年に一回は帰って来てよね?」

「あれっすか?もし20歳以上までドイツにいたら俺にビール買って来てくださいよ。ドイツの本場のビールちょー飲みたかったんですよね」

「あれか、飲み会しようぜ、帰ったら」

こいつら本当バカだな。
なんでお土産買わなきゃいけねぇんだよ、アホ。

「まずは俺にお土産でしょう。春高連覇」

「ひゅー。言うねぇ。まぁ、最高の土産をドイツに持ってってやるよ」

授業が始まるまでバカやって、父さんと蒼空と茄智と空港に行く。空港に行く途中蒼空に問いかけた。あの及川さんと俺はどういう関係だったのか。普通じゃない事もわかってる。だって好きな人を見る瞳だったから。もし、恋人だったら俺はどうしたらいいか分からない。勝手にドイツに行くし、記憶も無くしてしまった。このまま及川さんを思い出せなかったら俺は最低な人間だ。

「彰弥にぞっこん、おまけに束縛激しい、嫉妬深い、でもそんな及川さんをお前は大好きだよ」

「そうなんだ、想像つかない」

「そりゃそうだわな、茄智には猛反対されおまけに泣かれ、彰弥傷付けたら殺す。って脅してたぐらい。」

「さすが俺の妹」

空港につき、父さんが手続きをしている。
これから2年間以上は日本を離れる。バレー部と約束した、バレーを続けると。そしてバレー部も約束してくれた、春高連覇する。

行くぞと言われ

「彰弥、絶対治してね。わたしの事ちゃんと思い出すんだよ」

「うん、ありがとう。絶対思い出すね」

「定期的に連絡しろよー。あとあっちで人見知り発揮すんなよ、ぼっちになるからな」

「うるせぇよ」

「 ドイツ着いたら連絡してね、絶対だよ、夜中だろうが朝だろうが電話出るから」

「分かった、じゃあ行ってくるね」

俺はドイツへ行く。
記憶を取り戻しに。

ねたです


ネタねたねた

ねぇ!聞いて岩ちゃん!!最近彰弥が構ってくれないのーーー!!!!

「知らねえよ」

俺の可愛い可愛い、もう女にも負けないぐらい可愛い俺の恋人がね、最近構ってくれないの。電話してもすぐ寝落ちしちゃうし。そんなに部活忙しいのかな?だって前までは忙しくても寝るの我慢して俺と喋ってくれたのに!!!それが今はないの!!
偵察気分で鴉原に行っても構ってくれないし!及川さん辛い、泣きたい。

「嫌われたんじゃねぇの?」

「嘘でもそれを言わないで!!悲しくなってくるから!!!!!」

「だって電話もしねぇ、ラインもしねぇ、会おうともしねぇって事は完璧避けられてるつう事じゃね?」

「 どうしよう!俺、立ち直れない」

悲しくて涙出そうだよ、及川さん。
確かにツンツンしてて素直になれないところはあるけど、まぁ、それが可愛いんだけどさ。今回はあまりにもツンツンし過ぎてるよ。及川さん死んじゃう。

「ちゃんと理由聞いたー?」

「おおお!!あずにゃん!!」

「まぁ、これはまだ他校公開禁止と言われてるが、あまりにも及川さんが病んでるからちょっとヒントを与えに来ましたよ。うちの文化祭って夏にやるんですよ、それの準備で忙しいから及川さんに対する扱いが酷いんじゃないですかー?」

「なるほど」

「それで今年はバレー部も出し物をするんですね、その名もバレロック。バンドを組むんです、イメージは不思議の国のアリス」

「ちょ!!それ詳しく!!!」

「アリスがボーカル、チシャがドラム、クイーンがベース、白ウサギ、帽子屋がギター」

「彰弥の役職は???アリス?女装でもするの?あ、でも彰弥が人前で歌うなんてイメージつかない!!!」

「勿論アリスは僕だよ。チシャが彰弥、クイーンが瑛太、白ウサギが蒼空、帽子屋が叔。今ね、瑛太と叔が必死こいて楽器を覚えてるの。彰弥と蒼空は経験者だから二人に教えてるんだよねぇ。」

「まじ?ほんと?ちなみにチシャの衣装って露出高い?」

「生足出しますよ、彼は。もー他の男子から狙われまくりますねぇ。しかも猫耳。あの白い肌から尻尾が生えてるんですよ?たまりませんねぇー」

ちょっと待った。
なにそれ?聞いてない。あ、聞いてないのは当たり前か。そんな姿をどこぞの野郎に見られなきゃいけないの?うわ、まじで嫌なんですけど。てかそんな姿見たら襲いたくなっちゃうじゃん、俺だったら襲うよ。だって彰弥の足って本当に綺麗なの。
俺だって彰弥の素足なんて試合の時しか、いや、待って。あの子試合中ロングサポーターだから素足なんてほんの数センチしか見れない。生足なんて希少価値思っているのに。文化祭ではそう簡単に抜いじゃうんだね。あとで足腰立たないぐらいに襲ってやる。
まだ2回しか彰弥を抱いた事無いけど、あのしまった身体が俺は好きだよ。本当しまる所はしまってて、腰が弱い彰弥が嫌がる姿が本当に好き。

想像しただけで勃ちそうだ。



「その衣装を着てめちゃくちゃに犯したいです」

「そのめちゃくちゃに犯してもいいですが、暫くお触り禁止になる覚悟があるならどうぞ。」

「いや、だって!チシャの衣装なんてレアでしょう、そこで犯さないでいつ犯すの?可愛い尻尾をブンブン振って俺の手でアンアン言ってる彰弥が見たい!!」

「変態だ」

岩ちゃんに変態って言われようとも関係ないね。後輩の目線が痛いのも知らないね。しゃーないね。でも認める。俺は彰弥が好きだから、彰弥がどんな姿をしててもそりゃ勃つさ。興奮するさ。なのに我慢しろは嫌でしょう??俺は嫌だよ!!!
我慢したら男として失格だと思う。

まぁまぁ、落ち着いて、及川徹。
とりあえず文化祭終わったら彰弥をめちゃくちゃに犯すの事は決定事項で、でもどうやってするかなんだよなぁ。絶対警戒心全開で俺に近寄ってくると思うんだよね、だってあの子猫だから。懐いた飼い主にしか近寄らないんだ、俺もね、結構苦労したよ、彰弥を飼い慣らすまでは。なっかなか心開いてくれない。そんな苦労している俺を見てななやんはドヤ顔で俺を見るの。見ろ!これが俺と彰弥の仲だ。誰にも邪魔できねぇよ。と言ってるような感じ。

あの時はムカついたなぁ。
高校に入ってすぐ、一目惚れつーものをして、でもななやんにあんな態度を取られてからは、暫く七ななやんに集中攻撃した記憶があるもん。

「ちなみに彰弥のチシャ姿ちゃーんと写メ撮りましたよー??ほんと可愛いでしょう?」

「それいくらで売ってくれる?」

「岩ちゃん先輩のヌードで手を打ちましょう」

「なんで俺が出てくんだよ!!」

「全国の岩及ファン又は及岩ファンが泣いて喜ぶからです」

え?なに、意味分からない単語が出て来たんですけど。岩及?及岩?

「まぁ、しゃーないから、本人連れて来ました」

「まじ神様、ほんと神様」

玄関には生足で、ほどよい筋肉、つきすぎず、細すぎず、黒いスーツみたいな感じ、上は。ロングブーツ、おまけに耳と尻尾。
俺たちの視線に気付いた彰弥は「にゃー」とやる気無さそうな声で言う。もう一度言うね、「にゃー」って言った、理性崩壊への一歩。
マッキーはパシャパシャ写真撮るし、まっつんはおー。って上から下まで撫で回すように見るし、やめて、そうやっていいの及川さんだけだから。
国見ちゃんに関しては腰を掴み、細っ。と驚いている。まぁ、くびれがありますからね、あの子。

「あ、及川さーん。明日うち練習お休みなんですよー。その服汚しても問題ないって衣服部の子言ってたんで、お好きにどうぞ」

「あざっす、今度何かおごるね」

「いえいえお気になさらず、ただどういうプレイしたかは教えてくださいね」

任せろ。
彰弥はかつかつとヒールの音を体育館に響きながらあずにゃんのところに行き思いっきり頭を殴った。勝手なこと言ってんじゃねぇよ。だって。可愛い。

「彰弥今日俺ん家でお泊まりね」

「嫌です、身の危険を感じる」

「身の危険な事をさせて下さい。最近構ってくれなかったから徹くんちょー元気なの。ほら、触ってみて」

ぐいっと手を掴んで俺の徹くんを触らせる。ふっくら盛り上がったのを確認すると顔を真っ赤にして、助けてと岩ちゃんやマッキー達に目線で訴える。残念、パワー5には勝てないよ、彰弥。もう一つの俺の手は背筋を下から上へなぞるように触れ、そして、小さなお尻の割れ目に指を入れ、ここに徹くんを入れ乱れた彰弥が見たい。って耳元で囁けば、ブルッと身体が震えた。知ってるよ、2回しか抱いてないけど、彰弥は耳と背筋がすげぇ弱いことを。
幻覚だって分かっているけど、耳が垂れているように見える。あぁあ、お持ち帰り決定ー。

あ、そうだ。今日クラスメイトっても腐った女の子だって自分で言ってたな、その子は俺が彰弥と付き合っている事を知ってる。何故かばれた。及川くんって女子には興味無いでしょう。って。はて、そんな素振りしただろうか。いつも及川さんの周りには可愛い女の子達がいる、でも手を出したりはしない、だって彰弥一筋だし、傷付ける事は絶対にしない。
及川くんの恋人は年下でしょう。どうして分かった?可愛くて可愛くて仕方ないって顔をたまにしてる。特にその恋人から連絡来た時の及川くんは本当に誰もが認めるイケメンを超えてるよ。って。
だからカミングアウト、写真も見せた。そしたら驚いていた。桐谷君じゃん。って。彰弥は有名人だ、月バレで何回か表紙を飾っている、顔が整っているかね。あの可愛い顔を乱しているのは俺ね。

よく落としたね。って褒められた。
結構苦労しました。
そんな腐ったお友達は、今度桐谷くんにこれ使って乱してあげなよ。と渡したのは尻尾の先端にローターがある、いわゆる大人の玩具。よく持ってるね。って言ったらお兄ちゃんが彼女にやろうとしたら全力で拒否られ、お前にあげるって言われた。と。そのお兄ちゃんに言っといて、最高だよ。

あぁ、今にもぶちこみたい、このローターを。

「岩ちゃん、俺帰ってもいい?」

「はぁ?」

「だってこんな可愛い彰弥を目の前にお預けとか酷くない?無茶苦茶にしてやりたい」

「死ね」

愛ゆえ、愛ゆえに岩ちゃんは俺にこんな事を言うんだ、そう、愛だ、愛。愛があれば何でもできる、それが俺と岩ちゃん、超絶信頼しあっているからね。
うわ、及川うぜぇとマッキーやまっつんに言われてもめげない。

「いや、及川さん、部活はちゃんとやらないと。あんた主将でしょう?」

「そうだ、そうだ。きりんもっと言ってやれ」

「じゃあケツ穴にバイブぶっ込んでもいい?」

「やだ、及川、そんなの持ち歩いてんの?卑猥、下品、最低。いつでもきりやんとヤレるように、しかも玩具かよ。えげつねぇな、どんなプレイさせる気だ」

「帰る事は我慢するから、だから俺の練習終わるまで、バイブぶっ込んで体育館にいてほしい。我慢している彰弥を見ながら練習とか捗るー」

「変態だ、おい、変態、そんな我慢している桐谷を部員に見せつける気か?変な気を起こす野郎がいるからやめろ、やったら殺す」

「信じてるよ、お前等」

「いや、俺帰りますよ」

ピローン。
彰弥が携帯を開き、ふふ。と笑い、そして、手を伸ばしてくる。表情は読み取れないから何考えているか分からないけど、可愛い。もう、何でも可愛いしか言えない。

「今日サービスしてあげます。及川さんの及川さんが元気もりもりー。にさせてあげましょう。って言えって言われたんですけど、何すればいいんですか?まず及川さんの及川って及川さん何者?及川って2人いるんですか、うわ、やだわ」

「さっきやられた事忘れちゃってるよ、この子。まーじ小悪魔だわ、きりやん最高だ、及川固まっちまった、うける」

「及川さんの及川さんをもりもりー。にしてくれるの?じゃあ今日家に行こう」

「だから身の危険感じるから嫌だって」

「じゃあここで犯す」

「え?」

俺は後すざりする彰弥の腰を掴み、俺と彰弥を密着させる、マッキーやまっつんはおお!っ的な感じで俺たちを見てくる。いつの間にか女バレも集まってたけど気にしない、だって煽って来たのは彰弥だし、すこーしだけ残っていた理性を崩したのは彰弥だし、俺悪くないし、だから周囲がいようとも関係ない。犯す。
女バレからは、うわー及川最低ー。とか桐谷君汚さないで、天使なんだからってディスられてるけどいい、ディスればいい、俺はやる男だ。
ポカーンと俺を見る彰弥にキスをする、軽めのキス。腰を掴んでいない方の手で耳を触ると背筋が伸びる。耳から顎に手を置き上を向かせ、開いた口から舌を入れる、ん。んぁ、と可愛い声を出す。膝を足と足の間に入れ、股間を刺激する。ぎゅっと俺のTシャツを握る。

「ん、ん、あ、んんん!!」

離して欲しいんだろう、でも離さない。
うわーえげつねえ。とマッキーから言われる。国見ちゃんなんて金田一の目を隠して見せないようにしているからね。

口を離す、文句言われる前に膝を上下に動かす。必然的に股間は刺激され

「あ、やだ、あ、あ、あ、おいかわ、さ、ん、やだ、やだやだやだ、や、あっあっ」

控えめに声を出す。もっと出していいのに、でも彰弥は声を出そうとしない。彰弥が声を出すのは理性を完全に失ってから。二回しか抱いて無いけど、二回中理性失ったのは一回、ほんととことん攻めた結果ちょー喘いで可愛かった。
足がガクガク多分立っているのがやっとだろう、腰に手を添え、無理矢理立たせる。顔を上げるとそりゃ涙目で訴える可愛らしい恋人の姿ですよ、あー押し倒したい、微かに残っている理性保て。部員に見せびらかしたいが、彰弥の隅から隅まで見ていいのは俺だけ。ほんとにあの玩具ぶち込みたい。

「やめろ、クソ川ァア!!」

「ブホォ」

岩ちゃんに殴られて、彰弥から離される。ちなみに彰弥は岩ちゃんの腕の中。他の野郎だと今の彰弥は刺激が強いからダメだと代表して岩ちゃん、マッキーとまっつんは多分俺と同じ事して、彰弥を攻めると思うからダメだと判断したんだろう、いい判断だ、岩ちゃん、そこは褒めたいが今邪魔されると徹君が悲鳴あげちゃう。

「岩ちゃん、あのね、空気呼んで、今いいところ、アンアン言ってたでしょう」

「TPOわきまえろや。体育館、しかも部員がいる場所で桐谷を犯すな、桐谷の人見知りが悪化すんぞ、もう、青葉城西には行かねぇって言わても知らねぇかんな」

「あーあ。及川のせいで強豪校の鴉原と練習試合出来なくなるわー」

「んごぉ!あぁあ、彰弥ごめんね、ほんとごめん、理性ぶっ飛んでた」

暫くところじゃない、もう触れられないかもしれない。お願い、シャッターだけは降ろさないで。及川さん泣いちゃうから。号泣だから。
岩ちゃんの腕の中でブルブル震えている。
彰弥の頬触れると、俺の幻覚かもしれないけど、うっとりして俺の手に頬を寄せてくるようにも見えた。何可愛い。

「及川さんの家行ってもいいですよ」

「物足りなかった?」

「死ね、クソ」

無表情かもしれないけど耳赤いのバレてるからね。でも岩ちゃんから離れようね、何抱き合ってるの、及川さん嫉妬しちゃうから。岩ちゃんも満更じゃないでしょう。

「よーし練習再開するぞー」

「じゃあ桐谷君あたし達に貸して」

「え?」

いつの間にか女バレが近くまで来て、岩ちゃんから彰弥を奪い取り、やだ、可愛い、小顔。本当美人。とか言いながらベタベタ触る、ちょっと怒るよ。うちの女子はタッパが結構あるから彰弥より大きな子もいる。女子に負けたと。そんな顔をしているね。

「メイクしてもいい、絶対似合うって」

「てか猫耳可愛いー。本物みたい、足細いし白い。これさぁ、ニーハイの方がエロくない?」

「待ってろ、及川。ちょー可愛くしてきてあげるから、だからちゃーんと練習してなよね」

「あ、はい。いってらっしゃいませー」

人見知りの彰弥よ、生きて帰って来てね。
そして夜は激しく可愛がってあげる。だから練習頑張ってくるよー!及川さん。

「おい、クソ」

「もはや名前ではないよ、岩ちゃん」

「んな事どうでもいいんだよ。何であんな事した?独占欲が強いテメェだったら公共の場で桐谷が嫌がる事やらねぇだろ」

さすが岩ちゃん。
幼き頃からずっと一緒にいると俺の心の中までわかっちゃうんだね。まぁ、普通やらないよね、俺は彰弥が嫌がる事は絶対したくない。って最近思っている、でも今は彰弥大好きだけど、昔は大嫌いだった。トビオと同じぐらいに。サーブ教えて下さい。とかは言わない、いや、言ったら言ったでどうしたの?ってなるけど、でも彰弥はトビオとは正反対、唯一2人の共通点は「天才」だってこと。

俺は天才が嫌いだ。今も。
そこで矛盾が生まれる、天才が嫌いだったらどうして彰弥に手を出したのか。自分で言うのもなんだけど俺は女に困らない。彰弥と付き合う前だって何人もの女子と付き合っては別れるの繰り返し。ここまで夢中になったのは初めてだった。
何回試合出ても彰弥の目には俺は映らなかった、牛若ちゃんでも見てるのかな?って思ったけど違う。

彰弥は最初から俺たち県内のチームは見ていなかった。常に全国を見ていた。俺たちは敵じゃない。敵にもならない。そう言われているような感じ。

セッターとしては勝てない。だってあっちは全国3本指に入るセッター。全国に名を轟かせている。

興味本位で俺に近付かないで下さい。迷惑です。
天才嫌いなんでしょう。だったら喋らなきゃいい。試合中は無理かもしれないけど、視界に入れなきゃいい。

「確かに調子こいてた、でも彰弥が俺に意識するように、及川さんがいないとダメな身体にしてやろうと思った」

「はぁ?」

「さっき携帯見てたでしょう。あれななやんだよ。俺彰弥があんなに優しく笑うの初めて見た。心の底から冷え切った感じ。確かに幼馴染みだから仕方ないかもしれないけど、俺はまだななやんを越えられない。もしななやんと俺どっちかを選べってなったら迷わずななやんを選ぶ。それが悔しくて凄く嫌だ」

俺には前科がある。
天才と言い続け彰弥を狂わせた原因の1人。どうして彰弥が試合前にヘッドホンで音楽の世界に没頭しているか。その意味を分かった時、何で俺は勝手な事を言い続けてしまったのだろうと後悔した。
彰弥は天才では無い。

分かってあげられなかった。
いつの間にか惹かれていた、だけど鴉原は俺を認めてくれなかった。多分今も。あずにゃんとか叔くんは面白半分で彰弥の情報をくれるけど、彰弥の妹茄智ちゃんとななやんに関しては俺の事を嫌っている。まぁ、ななやんは表情とか態度には出さないけど、もし何かあったら先輩だからと言っても容赦なく殴るだろう。
恋人になるまで何回も頭を下げた。
結婚に反対される気持ちと同じだよね。

ようやくお許し貰っても信頼はゼロ。
傷付けたらぶっ殺す。と言われたぐらいだ。

「俺はななやんを越えられないんだなぁって改めて実感して焦った結果あーなったわけよ」

「バカだな、テメェは、仮面かぶってねぇで本性見せて勝負すればいいじゃねぇか。今までの分優しくしてぇのはわかるが、きもいわ、正直言って。多分桐谷も気付いてるぜ。桐谷は望んでいる、テメェが仮面被らず接してくれることを」

及川さんは優し過ぎる。
我慢してるんじゃないかってぐらいに。
たまに見せる悲しそうな顔が凄く嫌です。

「俺に相談してきた。気を遣わせてるんじゃねぇのか?とか本当はあの時泣いてたから同情して付き合ってくれたのか?とかよ」

「嘘でしょう、そんなの知らない」

「失いたく無かったら桐谷に本性見せろや、テメェのその腐った中身をな。七瀬を超えるに必死になってんじゃねぇよ」

あいつは自分の感情を隠すのが上手い。
あいつを潰す気か?
岩ちゃんに怒られるとは。

「七瀬は桐谷にとってヒーローなんだ。七瀬がいて桐谷がいる。桐谷がいて七瀬がいる、周囲からは変だと思われるがあいつらにとっては普通なんだ。今更変える事はできねぇ。そこを塗り替える事は誰にも出来やしねぇんだ。上書きしようとなんて考えない方がいい、テメェはテメェらしく桐谷を想ってやれ。気を遣わせんな、好きならちゃんと想い伝えろ。」

「かっけぇ、岩ちゃん」

「ったく、面倒くせぇな、テメェはよ」

全力で愛する。

「ありがとう、岩ちゃん」

「練習再開するぞ」


------及川さんはちゃんと彰弥を見てますか?

見てるよ、ちゃんと。
これからもずっと。
だからななやん、お前を越えようとは思わない、だからと言っても奪わせない。彰弥にとって及川徹がちゃんと記憶に残る存在になってやる。
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