120312 09:24
【HOST CLUB 'snow white' 00】HOST CLUB 'snow white'
chapter 00 [
prologue ]
…どうしてこうなった。
知らない森の中、私は独りさ迷い歩いている。もう一度言おう。
…どうしてこうなった。
何度目なのか、数え切れないほど吐いた溜め息。いや最早溜め息しか出ない。
新車を買ったので、今まで行った事がない場所に行ってみよう。そう思った私がバカだった。迂闊過ぎた。行った事がない場所に行こうと思った時点で、間違いだった。こうなったのは私のミスだ。完璧なペーパードライバーだし。
あーあ、駐車場からどうやってここまで歩いて来たのかも分からない。帰れないよこれじゃあ。アッハハハ。笑うしかない。
鞄には、充電の切れたPSPとDS、空っぽのペットボトル、バッテリー切れ寸前の携帯電話。これが女の鞄だろうか。化粧ポーチとか入れた事あったか?仕事もすっぴんですか何か?
…お腹が減った。喉も渇いた。比較的充電がまだ無事だったiPodを開いて、時刻を確認。
…18時。ハハハ。道理で暗いし、足元が分からない訳だよ…。HAHAHA。
こんな所で野宿も嫌だけど、野垂れ死ぬのもごめんだ。取り敢えず、先に進もう。方向も分からないけれど。
水の流れる音を聞いて、無意識の内に走った。川がある開けた場所に出た。ああ、水だ!オアシスだ!
夢中で水を体に注ぎ込んで、顔を上げる。視界の中に、明かりが点いた家を見つけた。
「…た、助かった!」
絞り出すように掠れた声が出た。その家に向けて、最後の力を振り絞り、走った。空腹感は忘れていた。腹が減り過ぎて、若干具合が悪くなっていたけれど。
ドアを開けると、軽やかなメロディが頭上で聞こえた。んお、綺麗なお家ですね。
長く暗闇を歩いていた所為か、照明が眩し過ぎる気がした。
「いらっしゃいませ、」
…いらっしゃいませ…ですと?
あ、ここは何かのお店でしたか。なるほどなるほど。
「だ、大丈夫ですか!?」
目が店内の明るさに慣れてきた頃、さっきいらっしゃいませと言った人が、私に近付いて来た。
で、デカい。残念な身長の私にしてみりゃあ、大抵の人がデカい。
と言うか、今大丈夫ですかって聞かれたよね、私。
ふと、入り口付近にあった鏡に目が動く。
「ふぎゃ、」
どこぞのヤマンバがいた。頭はボサボサ、汗だか川の水だかで、服はびしょびしょ。こりゃあ心配されるのは当たり前だ。
慌てて、髪だけある程度直した。それを、その男の人はクスクス笑って見ていた。あー恥ずかしい。
結局、シャワーと服をお借りした。流石にメンズのスウェットはぶかぶか。
ソファに座って、店の中を挙動不審に見回す。何の店だ?酒屋さん?
心地良いクラシックが流れる中、さっきの人が戻ってきた。
「服、洗濯して乾かしておきますから」
「…な、何から何まで申し訳ないです、」
その人はまた笑った。何か怖そうな感じだったけど、笑うと素敵ですね。
受け取った飲み物を一口。
「…ここって何かのお店なんですか?」
グラスをテーブルに置く。疑問をぶつけたら、一瞬彼はキョトンとしてから笑顔で言った。
「…ここは、ホストクラブですよ」
(´^ω^`) HA?
逃げるには、遅すぎた。
(…ホストクラブ…ホスト…男…イケメン…イケメン怖い…殺される…)
「…殺される!?」
「…何でそうなるんですか」
服は乾かしてもらってるし、第一帰り道分からないし、ってか今飲んだの酒だよね!?これじゃ車も乗れねー!
私が落とす肩を、その人は抱いた。
ヒィッ近い!イケメン怖い!
「まぁ、夜は長いですし…楽しみましょうよ」
いやいやいやいやいや!楽しめない!
こうして、快楽と癒やしの夜が幕を開けた。
(生き地獄とはこの事か…)
To be continued.
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