ポケットの中身

2015/03/18 00:40 :進撃×海賊
“正義”の戒め(リヴァロ/進撃×海賊)

※「ガキはガキのままだ」の続き




北の海で拾ったガキはリバースマウンテンを越えたところで目を覚ました。
その報告を受けて船医室に行くと、ガキはまるで野良猫みたいに船医や海兵を威嚇していた。
「何をやってる。」
「リヴァイ少佐!気を付けてください。この子供、戦い慣れてます。」
「負傷者は出たのか。」
「不覚にも二名。」
舌打ちをする。
ガキっていったってロブ・ルッチのような奴もいるから油断はできねぇってのに。
俺はため息をついて一歩前に出る。
「てめえら邪魔だ。外にいろ。」
「しかし、少佐お一人ではっ。」
「殺されねぇよ。いいから出ろ。」
一睨みすれば船医も海兵も渋々出ていく。
ガキと二人になって改めて向き直った。
「ガキ、海賊だな。」
「そうだ!この船は海軍の軍艦だな!」
「ああ。今はインペルダウンへ向かっている。その後にマリー・ジョアに帰港する予定だ。」
「…!アンタがこの船で一番偉いんだな。」
「だったら何だ。」
「アンタを殺して軍艦を奪う!!」
そう言うとガキは構えて刀を抜こうとした。
だがいくら戦い慣れていても経験が違う。
行動が遅い。
両腕を掴んでベッドに押し倒す。
「放せ!」
「バカが。てめえみたいなガキが海軍の軍艦を乗っ取れるわけねぇだろ。もう少し考えて行動しろ。」
「うるせぇ!やるんだよ!」
バタバタと足を動かして腹を蹴られるが、別段痛くもない。
衰弱してるガキが抵抗したって、俺は負ける気がしないしな。
「この軍艦はインペルダウンに向かってるって言ったよな。海賊ならそのままぶち込んだっていいんだ。」
本当は法的手続きを一応しなけりゃならねぇが、ガキを脅すにはちょうどいい状況だろう。
「それが嫌なら一旦一般人を装って匿われるとか、」
「あんたらに助けられる!?冗談じゃねぇ!今更“正義”面すんじゃねぇよ!あの時…誰も助けに来なかった癖に!!」
一際大きく吠えたガキの目は、俺じゃない何かを睨み付けていた。
淀んだ瞳は地獄を見てきたかのようで。
「…悪い。」
このガキが何を見たのかはわからねぇ。
何で海賊を名乗ってんのかもわからねぇ。
ただこのガキの目は必死で生きようとしていた。
だから、惹かれたのかもしれない。




「…以上です。」
「ご苦労、リヴァイ中将。」
センゴク元帥にシャボンディ諸島でのことを報告する。
特に捕まえた悪党がいるわけでは無いから、報告自体はすぐに終わった。
こんなこと書類で済ませりゃいいのに、この人がわざわざ俺を呼ぶのには理由がある。
「ところでトラファルガーについてだが、最近勤怠が目立つそうだな。」
ほら来た。
「時々勝手に本部から姿を眩ますようだし、特にデスクワークは提出書類が皆無と聞く。このまま規律を守らないようでは下の者たちに示しがつかん。」
「元々海兵じゃないですからね。あいつには窮屈なんじゃないんですか。」
「…彼を躾ける為に君を監視役にしたのだが。」
センゴク元帥の目が鋭くなる。
あいつを躾けるなんて無理な話だと思うが。
「王下七武海でも無い海賊が“正義”を背負わずに海軍に従属してんだ。そのくらい好きにさせてやって下さい。」
「彼の境遇には確かに同情する。だがそれとこれとは、」
「別って言うならお門違いだ。」
フレバンスは“正義”が見捨てた国だ。
正しい知識も理解も得られずに潰された白い町。
その生き残りが世界を恨んで俺の前に現れた。
海賊だとしても、二度と取りこぼしがないように“正義”の戒めとして、海軍のそばに置いておきたい。
それだけなのに。
「…トラファルガーの好きにさせてやって下さい。責任は全て俺が負うって話だろう。」
「甘いな、リヴァイ中将。いつか噛み付かれるぞ。」
「承知の上で隣に置いてんです。話はそれだけですか。」
睨み付ければセンゴクはため息をついてうなずく。
まだ言いたいことはありそうだったが、いいってんなら終わりで構わないだろう。
軽く敬礼をして部屋を出る。
そばにいるだけでいいんだ。
お前は自由でいろ、ロー。


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