今日はバレンタインなのでバレンタインSSを書いてみた。
何とか当日に間に合って良かった…!こういうのは当日にアップするのが大事かなと思ってるので。
ロッソとヴィオーラのバレンタインの一コマ、みたいな感じで。
しかしまぁ、バレンタインなのに甘々とかイチャラブの鱗片もないね!_(:3 」∠ )_
そういう要素ゼロですがこの2人はまぁそういうの似合わないしな。私が書けない←
きっと2人で仲良くはんぶんこしたんだと思いますよ、そんな一時が幸せなのかと(*´∀`*)
以下、SS投下しておきます〜
◆◇◆
──人には、一時の気の迷いと云うものがあるらしい。そんな事を、昔何処かで聞いた事がある。
今、アメジストの瞳が映し出すのは可愛らしいラッピングが施された一つの小さな箱。
ピンクの包装紙と紅いリボンが何とも少女趣味で可愛らしい。
しかし、そんな華やかなものを目の当たりにしているというのに目の前の麗人の表情は何処か浮かないもので。
むしろ──何やら後悔の念に駆られている表情。
「何故私はこんなものを……!」
時間は少々遡り、所要があってこの亜空間から大勢の人で賑わう街の大通りに出向いていた時。
何やら人だかりが出来ているのでほんの少しの好奇心に突き動かされ人だかりの方へと足を運んでみれば、如何やら人間達がとある催しを開催しているらしい。
──人間とは面白いイベントを思いつくものだ。
僅かな感心、それだけで終わっていれば良いものを……。
「……そう、これは気の迷い。人間がよく言っている一時の気の迷い……」
「あれーヴィオ、もう帰ってたの?」
「ぎゃあああぁっ!?」
そう自分に言い聞かせ眼前の箱に手を伸ばそうとした刹那、不意に背後から掛けられた声に口から心臓が飛び出そうになる。
そしてほぼ反射的に背後を振り返ると同時に、目にも止まらぬ速さで眼前の箱を掴み後ろ手に隠してしまう。何という早業か。
「ん? どうかした? 兎も角おかえりー」
「あ、はい。只今戻りました」
振り返った先には色鮮やかな緋色を身に纏った鳥の亜人が1人。
ほにゃっと気の抜けた顔つきでひらひらと手を振ってみせる。
彼こそがヴィオ──本名はヴィオーラなのだが──の主であり、世界に唯一無二の存在である不死鳥、ロッソその人である。
本人はそんな稀有な存在とは似ても似つかぬ程間の抜けた人柄であるが。
些か動揺するもののすぐさま気を取り直しいつもの調子に戻ったヴィオーラの内心など露知らず、ロッソはふと何か思い出したように声を上げた。
「ねーねー知ってる? 今人間の街で面白いイベントやってるんだよ!」
「へぇ、何ですかそれ」
「色んなチョコが売られてるまさにチョコの祭典……! 大切な人にあげてもいいし、自分で食べてもいいんだよ。すっごい美味しいチョコとか面白い形したチョコとか色んなのがあるみたいですっごい気になるー!」
どうやらバレンタインの事を言っているようだ。
うっとりと目を細めチョコへと思いを馳せているロッソ。
「ああ、そんな行事があるらしいですね。何でも、主に女性が日頃の想いをチョコレートに込めて大切な人にあげるのだとか」
「そうらしいけど自分で買って食べたっていいじゃん!? チョコ好きとしては見逃せないよねこれ! って事でちょっと買ってくるね」
「え、今から行くんですか? というか、多分女性客だらけだと思うので貴方思いっきり浮くと思いますが」
善は急げとばかりに今にも此処から飛び出しそうなロッソに対し、ぎょっと顔をしかめるヴィオーラ。
逆にロッソと言えば何故ヴィオーラがそんな事を口にするのか皆目理解出来ない様子で、
「ん、何か問題ある? 美味しいチョコ買う為なら多少並ぶのも問題ないし」
「はぁ……全く、普段はやる気ゼロなくせに好きなものが絡むと途端メンタルが強くなるその胆力一体何なんですか」
「だってチョコ食べたいし!」
キラン、と目を輝かせながらきっぱりと断言するロッソ。
一方のヴィオーラといえば、深々と盛大に溜息を零した後何かをぶっきらぼうにロッソに押し付けてみせた。
「……? 何これ? 箱?」
「幾ら貴方が女性客に紛れて自分用のチョコレート買うのが恥ずかしくなくとも、そんなのが自分の主だなんて私が困ります。情けないです。……なので、仕方ないのでこれを差し上げます」
「え? えぇ? どーいう事? 若しかしてこれ……」
「いいですか、仕方ないから貴方にあげるだけですから、他意はありませんからね他意は!!」
顔を見られるのが恥ずかしいのか、終始俯いたまま一方的にそう捲し立てるとぐいぐいと可愛らしいラッピングの施された小さな箱を押し付けて挙句そっぽを向いてしまうヴィオーラ。
一方、何が何だかさっぱり事態を飲み込めずぽかんとしていたロッソであったが、やがてその表情にはふにゃりと気の抜けた笑みが浮かぶ。
「ふふ…そっか、そっかぁ。じゃあ有難く貰うね」
「そうですねそれじゃあさっさと食べたら如何ですか」
照れ隠しなのか否かは定かではないが、相変わらず早口で捲し立てるヴィオーラ。
しかしロッソと言えば何か考え込むように視線を彷徨わせた後、にっこりと晴れやかな笑みと共にこう言い放った。
「じゃあヴィオも一緒に食べよう? 折角のチョコだし、1人で食べるより2人ではんぶんこした方が美味しいよ」
「……!」
予想だにしない言葉にがばっと顔を上げるなり返答を忘れてしまったかのようにぽかんとするヴィオーラ。
視線を上げた先にはロッソの満面の笑顔が飛び込んできて、さらに言葉に詰まってしまう。
そんなヴィオーラの返答を待たずに早速ラッピングを開けようとするロッソの元に、不意に一つの声が飛び込んできた。
「あれ、これどうやって開けるんだろ…あー絡まったー!?」
「どんだけ不器用なんですか貴方は。貸して下さい、私が開けますから。……全く、貴方がそんなに言うのならしょうがないので一緒に食べてあげますよ。後でお茶でも入れてあげますから待っていて下さい」
──楽しい事も、嬉しい事も、好きな事も。
2人ではんぶんこすれば、きっと二倍幸せになれる。
◆◇◆
18.2.14 21:00 Wed
/
comment
0