いつからなのだろう?
たぶん…ずっと怖かったのだと思う。
だけど、私が認識していたのは父や夫の怒鳴り声だけだったんだ。
まさか、全ての怒鳴り声が苦手…怖いなんて、自分でも知らなかったんだ。

私がそれに気付いたのは、息子を叱ってる主人の声を聞いた時だった。
その時息子は確かに叱られるようなことをしていて、叱るのはやむを得ないことだった。
それは分かっている。分かっているのだけど…
その声を聞いた瞬間、私は言い表せない感情に包まれていた。
言葉には出来ない…物凄く嫌な気分。
できることなら逃げ出したい。その場から消え去りたい。その声が聞こえないとこまで駆け出してしまいたい。胸が苦しい。
泣いてしまう…このままでは泣き出してしまう…
私は耳を覆いたくなった。
自分が怒鳴られているわけではない。それが分かっているのに、私はそれを自分に向けてのことのように感じてしまっていた。
そしてそれは、なにも息子に限ったことだけではなかったんだ。
私があまり意識しないでいただけで、ずーっと私は自分向けではない怒鳴り声…知らない子供がおそらく親であろう人に叱られている…その声にまで反応して、その場から逃げ出していたんだ…

ずっと知らなかった。
ずっと気付かなかった。
なんでこんな風になってしまったんだろう?
なんでこんな人間になってしまったんだろう?
私は未だ、その言葉に出来ない娘な気分がなんなのか分からない。
ただ小さい頃から感じていた気分だったことに間違いはない。