不安な時…夢を見る。
必ずと言っていいほど、一度は夢を見る。
お兄ちゃんと居る…幸せな夢…
でも昔は、親に反対されているようでコッソリだったのが、今は、けっこう祝福(?)されている夢が多い。
やっぱり今でも、お兄ちゃんが殴られるのはイヤだからかなぁ…
でもね…夢から覚めると、苦しいんだ。
まだ夢を見ることに罪悪感を感じる。
それに、せつなくて…苦しくて…泣きたくなるんだ。
会いたい…でも会えない…二度と…
現実は残酷だ。
どんなに想っても、どうしようもない気持ちがある。
それに…2人とも歳をとったわ。
もし会えても…きっと幻滅する。
夢は…あの頃のままだからね…
私は、お兄ちゃんに恋をしているのか?
と問われれば、それは分からないとしか言いようがない。
確かに居心地がよくて幸せだったけれど…
それに憧れはしていたけどね。
だって、賢くて、カッコ良くて、オシャレで、面白くて、優しいんだよ〜
私は、世界中の普通の男の子は、みんな、そういうものだと思ってたよ。
( ̄▽ ̄;)ハハハ…
なんでも、お兄ちゃんが基準だった…
そして今でも、お兄ちゃんが基準なんだ。
若干、違うとするなら、それは私が責任感の強い男が好きということくらいかな…
やったこと、言ったことの責任感がとれる男…その点だけが、お兄ちゃんと違うかな。
私が覚えていたこと。
それは、お兄ちゃんとの楽しい一時。幸せな時間だけだった。
そして、時は流れ、私は知った。
お兄ちゃんとのスキンシップは、彼氏彼女のそれだということを…
(主人に教わった)
そこで私は困惑してしまった。
と同時に少し思い出してしまった。
お兄ちゃんは、私をどう思っていたの?
裏切ったのは、もしかして、私の方?
戸籍上の結婚は出来ないけど、結婚するつもりだった?
私は、お兄ちゃんの何?
彼女より私を優先していた、お兄ちゃんの本意は何?
主人にイロイロ問われるうちに、私は忘れていたことを少しずつ思い出していった。
お兄ちゃんに何をされたか…
何を悩んだか…
そして最終的に私は捨てられたのだと思い出してしまった。
もしかしたら、私が泣き出す理由は、そこにあるのかもしれない…
怖かった…泣きたかった…最初の思い出…
そして、捨てられる絶望…
だけど、主人が言う。
私は愛されていたのだと…最期まで、愛されていたのだと…
でも主人はロマンチストな人だからなぁ…(笑)
私は無言のまま進む親族会議。その結果、その女(不倫。しかも子捨て)のパチンコ借金は、上の叔父が立て替え返済する事になり、お兄ちゃんとその女は、私の父のとこで働くことになった。
(それはそうと、何故私が強制出頭させられたかは未だに謎である)
これで、一安心。
とりあえず私はまだ、お兄ちゃんに会えるらしいと、私はホッとしていた。
(思い出しはしても、まだ、お兄ちゃんに会いたかった)
が、そう都合よくはならなかった。
お兄ちゃんら逃亡。行方不明…
私の父は、探すかと思いきや、呆れてしまったようで、放っておくと言う。
この時、私は後悔した。
暴露してでも止めるべきだった。反対するべきだった。
お兄ちゃんは私のものだと主張するべきだった。
たとえ、自分が離婚になっても、お兄ちゃんを他の女に渡すべきではなかった。
お兄ちゃんは私のものだ…
私は、この時初めて自分の…お兄ちゃんに対する強い感情を知った。
幼い執着なんかじゃない。強い強い執着。
親に殴られてもいい…誰に罵られてもいい…
私はお兄ちゃんのことが…
でも、もうそれも遅い。
もう、お兄ちゃんはいない…
私は、お兄ちゃんに見捨てられたんだ…
そして私の記憶は閉じられた。
そう…主人がこじ開けるまで…
それは、私が19歳の時だった。
親からの、親族会議出頭命令。
私は何も知らず、その場に出席した。
そこで私は思い出したのだ。
お兄ちゃんが私に何をしたのかを…
きっと私の顔は、般若と化していただろうな…
お兄ちゃんと、お兄ちゃんの体にベッタリくっついてる女を見て。
私は、お兄ちゃんを見据えた。
一時も目を離さずに、じっと…
私は、お兄ちゃんがその女に夢中なら、私の心情は関係ないだろうと思っていた。
だから、私がお兄ちゃんを見つめていても関係ないだろうとね。
でも…何かが違ったらしい。
お兄ちゃんは、私の方を一度も見なかった。
あからさまに、不自然に顔を背けていた。
私の怒りのオーラでも感じたのだろうか?
それとも、その場で、あの日のことを暴露される恐れ?
(いや、よっぽど暴露してやろうと思ったけど…お兄ちゃんが殴られるのはイヤだから堪えたんだけどね)
私の顔を一度も見ないお兄ちゃんなんて初めてだった。
どんな女と一緒にいても、私の顔を見ないなんてことなかったのに…
何故?どうして?
私の顔を見たくないほど、私のことが嫌いになったの?
それとも、その女がそんなに好きなの?
(のわりには、その女の顔も一度も見てなかったんだけど…)
私は、お兄ちゃんが益々、分からなくなった。
それでも私は信じていた。いや…信じていたかったんだ。
お兄ちゃんとは、いつでも会える。
だって、叔父と姪だから。
たとえ、お兄ちゃんが結婚しても、私が結婚しても。
私は、私がお兄ちゃんに執着しているだけだと思っていたからね。幼い執着…お兄ちゃんは、とうに忘れているだろう執着…
結婚して…まあ、以前にも書いた通り、私は幸せではなかった。
でも、それも仕方ないと私は諦めていた。
コレは、ケジメなのだ。
そして、罰なのだ。
汚れた私が嫁げた。それが幸運。これ以上は無く、後は罰が残るのみ。
その間の私は、お兄ちゃんに思いを馳せる隙もなかった。
いや…忘れていたと言った方が正しいかもしれない。
私は思い出したくなかったんだ。
幸せだった場所…
でも、そこに何があったかは分からない場所…
お兄ちゃんの気持ちを考えるのは止めた。
たぶん、お兄ちゃんにとっては遊び…
だから思い出したくない。思い出さない。
でも、会えたら嬉しいんだ。
お兄ちゃんに会えたら幸せなんだ。
もう、何故かは分からなくなっていたけれど、お兄ちゃんに会えるのが楽しみだったんだ。