その日も何気なく校舎の中をぶらぶらしていた。
(イヤ、やめて、ねぇ!やめてよ、
声が聞こえる空き教室を覗いて驚いた、君がいたから、それからのことはなんにも覚えていない、ただ気がついたときには僕は病院にいて、おかんが泣いていた。
あの子は大丈夫だったのだろうか、ぼーっと、考えてた。
ガラガラッ
『あっ!目さめたんだ、大丈夫?ごめんね、ごめんね?グスッ』
「良かった、無事だったんだ。泣かないで、泣いてる君もキレイだけど、笑ったほうがもっと綺麗だと思うよ」
『うん、ありがとう』
そう言って泣きながら笑う君は本当に
綺麗でかわいくて僕がこれから先ずっと守っていきたいと思った。
それから君は毎日病院にきてくれて、いっぱいいろんな話をしたね。そして、退院する日、これから会えなくなっちゃうのはイヤだなと思って、そしたら自然と言葉がでてきてて、「好きだ。一生君を守りたい」なんて言ったんだ。
そしたら、君は『ずっと守ってくれなきゃ、許さへんから』なんて言ったんだ
結局、僕はあの日入学式に間に合わなかった。
入学してからの僕はクラスのムードメーカーになって、毎日楽しく過ごしていた。でも、頭の中ではずっとあの日ぶつかった彼女のことばかりを考えていたんだ。
僕はストラップを弁償しようと思ったがどんなのだったか思い出せなくて、僕が可愛いと思ったウサギのストラップを買って、毎日学校に持ってきていた。
ーもう一度君に会いたい。
「やばいやばい!遅刻する!おかん、なんで起こしてくれへんかってん!もうー、初日から遅刻なんて(ドンっ
「いってー!んやねん!」
『そっちこそなんやねん!ぶつかってこんとって!こっちは急いでんねん』
中学の入学式に遅刻しそうで朝から全力疾走していたところ、十字路でばったりぶつかってしまった。ちらっと、顔を上げてその子の顔をみると、驚いた。
世の中に、こんな可愛い人がいるなんて、衝撃的だった
『なに、ぼけーっとしてんねん!あっ!ストラップ壊れちゃったやん!どうしてくれんねん!』
「あっ、す、す、すみません!ストラップ……、弁償します!弁償しますから!お怪我はないですか?一緒の学校ですよね?一緒に行きましょう!なんか本当に運命の出会いみたいですね。こんなことってホントにある『なに、わけわからんこと言ってんの?もういい、私いくね!弁償とかいいから、じゃ』
彼女が行ってしまっても僕はしばらくその場から動けずにいた
世の中には、どうしようもないことがあるんだ。僕たちは、それでも、生きていかなければいけないんだ。
ーきっといつかは雨も上がると信じて
すべての始まりは8年前のあの日
「もう、花火、始まっちゃったやん。いつくんねん、あのバカ」
「ハァハァ、りぃちゃん、ハァごめん」
「もう!おそい!花火始まっちゃったやん、バカ」
「ほんっとにごめんな」
「もういいよ、ほら、いこ?」
かわいい。僕のリュックにつかまって歩きはじめるりぃちゃん。僕の遅刻にも怒ってたけど、怒ってたってよりすねてたかんじで、かわいかった。
僕の隣で花火に歓声を上げる君を抱きしめてしまうことができたなら……
りんご飴、綿菓子、たこ焼き、きゅうり、イカ焼き、焼きおにぎり、ラムネ、君が欲しがるものは全て買った。二人で縁石に座って花火をながめる。
花火をながめる君の横顔の憂いに気づいてしまうのは、僕が君を一番良く見てるからだろう。少しの変化ですら気づいてしまうのだ。
きっとまたあいつが原因だ。
ケンカしたんだろう。
僕なら君にこんな顔はさせない。
でも、わかってるんだ。
君を一番笑顔にできるのはあいつなんだ。僕には、君をあの笑顔にさせる力なんてないんだ。
『りな』
「えっ?なんで?なんで、ももか?」
「ごめん、僕がよんだ。りぃちゃん、仲直りしぃや?僕用事思い出したからいくわ!じゃあね!楽しかったよ!」
『まゆが、今すぐ来いって言ってきてん』
「あたし、ケンカしたなんて話してへんのに。なんで、またまーちゅんにはばれちゃうんやろ」
『りな、ごめんな?俺が悪かった。大好きやから、一緒にいてくれ』
「うん!」
僕は、君にサイコーの笑顔をさせることはできないけど、君の笑顔を守ることはできる。僕は永遠に君の笑顔を守る存在でいたいんだ。僕は、りぃちゃんのことが大好きだから。
永遠のナイトでいるために、君にこの想いが届かないように祈りをこめて綺麗な花火を1人、見つめた。