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届かぬ手 君想う声:2

僕が医療班に着いた時、有紀はベッドの上で眠っていた。

頭や肩、身体中に痛々しく包帯を巻かれ、その顔は色白の肌がさらに白くて。きっと怪我からの出血が多かったせいだろう。

有紀の横には有紀のゴーレム、メイがぴったりとくっついていて、有紀を心配している事がわかる。




「有紀くんは、自分が致命傷を負う覚悟で子供を庇ったそうだよ。」




コムイさんが、静かに話してくれた。



有紀は、街の住人に既に防御の技をかけていて、アクマからその子供を守る為に技を施すだけの時間が無く、自らを盾にして守ったのだ、と。

勿論、探索部隊の人はそれを止めた。「危険だ」「死ぬかもしれない」と。

でも、有紀は……















「たった一人の命も守れなくて何がエクソシストだ!!死が怖かったらエクソシストなんかやってねェよ!!目の前に助け求めてる奴が居んのに、じっとなんかしてられっか!!」













そう、言ったらしい。







「有紀くんらしいといえばそうなんだけどね……その子供は助かって、今はご両親と一緒に安全な場所に避難したみたいだよ。」

「本当…有紀らしいですね……」




言いながら、僕は有紀の頬をそっと撫でた。
少し低いが、有紀の体温が手に伝わって安心した。




「…有紀、大丈夫なんですよね…?」

「うん。普通の人間なら2回は死んでるけど…有紀くんの中のイノセンス、阿修羅姫の治癒能力のおかげでね。ただ、それでも数日は目が覚めないけどね。
本当…神に感謝するよ。」




そう言って苦笑するコムイさんに、僕は小さく微笑み返した。


有紀を…大切な人を失わずにすんだ事を、僕も神に感謝した。
このぬくもりを、失わずにすんだ事を。


















************

あれから数日。
有紀は、まだ目が覚めなかった。

もうすっかり顔色も良くなって、後は有紀が起きるのを待つばかりだ。




「有紀。おはようございます。」




有紀の病室に入り、挨拶する。
今日も、有紀は起きていない。

僕は有紀の眠っているベッドの横にイスを置き、それに座って有紀に微笑む。




「さっきですね、ラビと食堂で会ったんですが、ラビったら僕のみたらし一本盗み食いしたんですよ!
仕返しに僕はラビの朝食の最後のウィンナーを奪ってやりましたけどね」




そう小さく笑いながら、些細な、たわいのない話をする。

有紀に聞こえているかはわからない。

でも、聞こえていると願いながら話す。




「それでですね、その時ちょうど神田も朝食に来て、ラビが神田を名前で呼んだら神田が六幻を抜刀して食堂が大騒ぎになったんですよ!
リナリーが止めてくれたんですけどリナリーが来なかったらどうなってたか…神田でもリナリーには勝てませんからね」




いつもなら、ここで有紀のあの笑い声が聞こえて、僕も大好きな笑顔を見せてくれる。

でも、今はそれは叶わない夢のようで。



僕は一度有紀の寝顔を見つめ、有紀の手を優しく握った。




「有紀……早く起きてくださいよ。僕…有紀に話したい事がたくさんあるんです。」




そして、謝りたい事も。





僕は有紀の手を両手で包み、神に祈るように目を伏せた。




「アレンくん」




呼ばれ、振り返ると…リナリーが立っていた。

リナリーは僕の隣まで来ると、僕と同じように有紀に笑いかけた。




「おはよう、有紀」




そう、リナリーも挨拶するが…やはり反応は無い。

その事にリナリーは悲しそうに顔を僅かに歪ませた。




「まだ、目が覚めないんだね。」

「はい…でも、もうすぐ目を覚ましますよ。」




そう言い切った僕に、リナリーは小さく笑った。




「毎日、時間さえあれば有紀に付き添ってるアレンくんが言うんだからそうかもね」

「Σなっ、何で知って…!!」

「教団の皆知ってるよ?まるで恋人同士みたいにずーっと付き添ってるって」




リナリーの言葉に、僕はつい顔を赤くした。
まさか教団の皆に知られてたとは……。




「…有紀が目が覚めたら、何か美味しいもの食べさせてあげたいね。」

「そうですね…でも有紀も寄生型の適合者ですから量半端無いですよきっと」

「アレンくんが言うとなんか説得力あるな〜」




言って、リナリーがまた笑った。
僕も、ついつられて笑った。














その時………















ピクッ















有紀の手が、小さく動いた。













「…………リ……ナ…リー………?」















掠れた、か細い…でも聞き慣れた声。



声の主は、聞かなくてもわかる。














「有紀…!!」






有紀が、目を覚ました。




有紀は虚ろげに視線を彷徨わせ、リナリーを見る。





「リナリー…ここ……は………?あの子……ど…なった……?」

「ッここは黒の教団の医療班…有紀が守った子なら、元気だよ……!!」

「そ…か………ょか…た……」

「よくないわよ!!有紀が大怪我して……皆すごく心配したんだから!!」

「ハハ……ごめん、リナリー……」




苦笑する有紀。


ああ、有紀だ。僕らの知る、有紀だ。


嬉しさが込み上げて、僕が有紀を抱き締めようとした時……












「有紀!!」

Σどん!

「Σい゙っ!!;;;」

Σべしゃっ








………リナリーに突き飛ばされ、リナリーが代わりに有紀に抱き付いた。

…リナリーも有紀を心配してたから仕方ないけど…;;;




僕は苦笑しながらも有紀のベッドに掴まって身を起こした。

ふと、有紀がじっと僕を見つめていた事に気付く。


なんだろう…?やっぱりまだ怒ってるのかな……。


僕がそう思った時………

















「なぁ、リナリー。









こいつ、誰?」


















時が、止まった気がした。














***********
まさかの記憶喪失……!!(笑)

「続きが読みたい」とのご意見をたくさん貰ったので書いてみた続編!皆様ありがとうございます(*^^*)


そしてまだ続く!どうなるアレン&有紀!!(笑←オイ)
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