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届かぬ手 君想う声:3



「おっはよーリナリー!」

「あ、有紀!おはよう!
身体はもう大丈夫なの?」

「ああ!俺は怪我治んのスゲー早いからな♪
あ、一緒に朝飯食おうぜ!」

「もちろん♪」

「やた♪え〜と、じゃあ俺はエビドリアと…」












朝。

食堂に来たら、いつもの風景と有紀が居た。


有紀はリナリーやジェリーさんに笑いかけて何も変わりが無いように見える。














何も、無かったみたいに。

















「……有紀………」







小さな、食堂の喧騒で自分でも聞こえないような声で彼女の名を呟き、僕は一昨日の出来事を思い出した。





















*************

「……え………?」






有紀の言葉に、思わず我が耳を疑った。






「な…何言ってるの有紀?アレンくんだよ?変な冗談は…」

「いや、冗談とかじゃなくてマジで初対面。俺、コイツに会った事ないぜ?」






キョトン、としながらそう言う有紀。
その目は嘘を吐いているようではなくて、有紀が本気で言っているのだとわかる。

リナリーも僕も、思わず固まった。






「え、何その反応?;;
…悪ィ、もしかしてどっかで会ってた?俺全然覚えてなくてさ」






有紀は苦笑し、いつも通りの笑顔を僕に見せた。







「えーと、はじめまして、でいいんだよな?」

















――ズキン。

















有紀の言葉と笑顔に、胸が…心が痛んだ。













「俺は神山有紀!有紀が名前な♪目の色とか違うけど神田と同じ日本人だ!
お前の名前は…」

「――ッ」


ガシッ















気が付いたら、僕は有紀の両肩を掴んでいた。












嫌だったんだ。

















「ちょっ…なんだよおい!」

「アレンくん!?」

「有紀!!僕です!!アレン・ウォーカーです!!わからないんですか!!??」















有紀の中から僕だけが消えて、僕との思い出も全て消えてしまうのが。










怖かったんだ。















「有紀!!思い出してください!!」

「アレンくん落ち着いて!!有紀は怪我してるのよ!?」


















まるで、僕と有紀が出会った事も今までの記憶も思い出も、全てが嘘幻にだったみたいで、怖かったんだ。

















「有紀!!!」

「――ッ痛ッ…!!」













有紀の小さな声で聞こえた言葉に、僕は我に帰った。

僕は興奮から有紀が怪我をしているのも忘れて、怪我をしている肩をいつの間にか強く掴んでしまっていた。


痛みに顔を歪める有紀を見て、慌てて手を離した。







「っす、すみません有紀!!大丈夫…」

「ッなんなんだよお前!!初対面なのにいきなりワケわかんねェ事言うしなんかキレだすし!!俺が何したってんだよ!!」

「有紀、傷に響くから大人しくして!ね?」






リナリーに宥められて、有紀は僕を睨んだまま横になり、僕に背を向けた。

僕は自分のした事への後悔と心の整理がつかない事から俯いた。










「アレンくん、リナリー。ちょっといいかい?」






呼ばれて振り返ると、コムイさんが居た。

僕とリナリーは有紀を気にしながらもコムイさんに従って部屋を出た。








「兄さん…有紀が……!!」

「うん、わかってるよ。
…有紀くんは今、一部だけ記憶喪失になってるみたいだね」

「そんな事…有り得るんですか?」






コムイさんは僕に頷いて、続ける。






「ボクも詳しくは知らないんだけどね。
たまに居るらしいんだよ、記憶喪失になる直前まで脳…心に強く想ってた人の事だけ記憶喪失になるケースがね。

有紀くんはきっと、アクマの攻撃を受けて頭を強く打った時に記憶を失ったんだ。その時一番強く想っていた人…アレンくんの事をね。」






コムイさんの言葉に、僕は強く拳を握りしめた。






「僕…有紀が任務に出る前に有紀と喧嘩したんです。
僕が変な意地張って、有紀と仲直りするのを躊躇って……。
…有紀が記憶喪失になったのは、僕のせいなんです。僕が素直になってれば、有紀は……!!」

「アレンくん…」

「……大丈夫だよ。
記憶喪失と言っても、記憶が消えたわけじゃない。
何かきっかけがあれば、思い出せる。
時間はかかるかもしれないが…絶対思い出せるよ。」






そう笑顔で言ってくれたコムイさんに、僕は俯いたまま静かに頷いた。



















**************

「きっかけ…か……」






一体何をすれば、彼女は僕の事を思い出してくれるのだろうか?



一体、何をすれば………

















「お!アイツは確か…アレン!」






聞き慣れた声につい肩をビクリと跳ねさせた。


前を見ると、僕に笑顔で手を振る有紀とリナリーが。






「お前も一緒に飯食おうぜ!」






そう言ってくれる彼女を見て、記憶喪失だなんて嘘なんじゃないかって思う自分が居た。






ぼーっとしている僕に首を傾げる有紀に、僕はいつもの笑顔を見せて。
















「――はい!」

















そう、答えた。
















**************

久々ブログがSSの続きとか…(笑)

なんかどんどん長くなるなコレ…他にも書きたい小話いっぱいあるんだけどな〜まぁいいか(笑)
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