「おっはよーリナリー!」
「あ、有紀!おはよう!
身体はもう大丈夫なの?」
「ああ!俺は怪我治んのスゲー早いからな♪
あ、一緒に朝飯食おうぜ!」
「もちろん♪」
「やた♪え〜と、じゃあ俺はエビドリアと…」
朝。
食堂に来たら、いつもの風景と有紀が居た。
有紀はリナリーやジェリーさんに笑いかけて何も変わりが無いように見える。
何も、無かったみたいに。
「……有紀………」
小さな、食堂の喧騒で自分でも聞こえないような声で彼女の名を呟き、僕は一昨日の出来事を思い出した。
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「……え………?」
有紀の言葉に、思わず我が耳を疑った。
「な…何言ってるの有紀?アレンくんだよ?変な冗談は…」
「いや、冗談とかじゃなくてマジで初対面。俺、コイツに会った事ないぜ?」
キョトン、としながらそう言う有紀。
その目は嘘を吐いているようではなくて、有紀が本気で言っているのだとわかる。
リナリーも僕も、思わず固まった。
「え、何その反応?;;
…悪ィ、もしかしてどっかで会ってた?俺全然覚えてなくてさ」
有紀は苦笑し、いつも通りの笑顔を僕に見せた。
「えーと、はじめまして、でいいんだよな?」
――ズキン。
有紀の言葉と笑顔に、胸が…心が痛んだ。
「俺は神山有紀!有紀が名前な♪目の色とか違うけど神田と同じ日本人だ!
お前の名前は…」
「――ッ」
ガシッ
気が付いたら、僕は有紀の両肩を掴んでいた。
嫌だったんだ。
「ちょっ…なんだよおい!」
「アレンくん!?」
「有紀!!僕です!!アレン・ウォーカーです!!わからないんですか!!??」
有紀の中から僕だけが消えて、僕との思い出も全て消えてしまうのが。
怖かったんだ。
「有紀!!思い出してください!!」
「アレンくん落ち着いて!!有紀は怪我してるのよ!?」
まるで、僕と有紀が出会った事も今までの記憶も思い出も、全てが嘘幻にだったみたいで、怖かったんだ。
「有紀!!!」
「――ッ痛ッ…!!」
有紀の小さな声で聞こえた言葉に、僕は我に帰った。
僕は興奮から有紀が怪我をしているのも忘れて、怪我をしている肩をいつの間にか強く掴んでしまっていた。
痛みに顔を歪める有紀を見て、慌てて手を離した。
「っす、すみません有紀!!大丈夫…」
「ッなんなんだよお前!!初対面なのにいきなりワケわかんねェ事言うしなんかキレだすし!!俺が何したってんだよ!!」
「有紀、傷に響くから大人しくして!ね?」
リナリーに宥められて、有紀は僕を睨んだまま横になり、僕に背を向けた。
僕は自分のした事への後悔と心の整理がつかない事から俯いた。
「アレンくん、リナリー。ちょっといいかい?」
呼ばれて振り返ると、コムイさんが居た。
僕とリナリーは有紀を気にしながらもコムイさんに従って部屋を出た。
「兄さん…有紀が……!!」
「うん、わかってるよ。
…有紀くんは今、一部だけ記憶喪失になってるみたいだね」
「そんな事…有り得るんですか?」
コムイさんは僕に頷いて、続ける。
「ボクも詳しくは知らないんだけどね。
たまに居るらしいんだよ、記憶喪失になる直前まで脳…心に強く想ってた人の事だけ記憶喪失になるケースがね。
有紀くんはきっと、アクマの攻撃を受けて頭を強く打った時に記憶を失ったんだ。その時一番強く想っていた人…アレンくんの事をね。」
コムイさんの言葉に、僕は強く拳を握りしめた。
「僕…有紀が任務に出る前に有紀と喧嘩したんです。
僕が変な意地張って、有紀と仲直りするのを躊躇って……。
…有紀が記憶喪失になったのは、僕のせいなんです。僕が素直になってれば、有紀は……!!」
「アレンくん…」
「……大丈夫だよ。
記憶喪失と言っても、記憶が消えたわけじゃない。
何かきっかけがあれば、思い出せる。
時間はかかるかもしれないが…絶対思い出せるよ。」
そう笑顔で言ってくれたコムイさんに、僕は俯いたまま静かに頷いた。
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「きっかけ…か……」
一体何をすれば、彼女は僕の事を思い出してくれるのだろうか?
一体、何をすれば………
「お!アイツは確か…アレン!」
聞き慣れた声につい肩をビクリと跳ねさせた。
前を見ると、僕に笑顔で手を振る有紀とリナリーが。
「お前も一緒に飯食おうぜ!」
そう言ってくれる彼女を見て、記憶喪失だなんて嘘なんじゃないかって思う自分が居た。
ぼーっとしている僕に首を傾げる有紀に、僕はいつもの笑顔を見せて。
「――はい!」
そう、答えた。
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久々ブログがSSの続きとか…(笑)
なんかどんどん長くなるなコレ…他にも書きたい小話いっぱいあるんだけどな〜まぁいいか(笑)