目の前に、私によく似た人が立っている


派手な真っ赤な髪
空の色とも海の色とも取れる青い瞳


その人は私から目をそらさない
私もその人から目をそらさない


やがてその人は優しく微笑んで、



「お前はお前しかいないんだよ」



優しい声で、私にそう言った



「代わりなんていない。誰もお前の代わりになんてなれないように。お前が誰かになろうとしてもなれないのと同じなんだ。だから、もう―――――――」









「――――蓮華!」


呼ばれて目を開くと、神楽が私の顔を覗き込んでいた。
大きくて、くりくりとした可愛らしい目に私を映している。


「こんな所で寝てたら風邪引くアル!」

「……あー…うん…?私いつの間に…」


いつの間に寝ちゃったんだろう、と言いかけた時、ふと自分が誰かの腕の中にいる事に気付いた。
温かくて逞しい腕。顔を横に向けたら、呆れそうなくらいマヌケな顔で寝息をたてている癖っ毛な銀髪の男がいた。


「……何やってんのこいつは」

「どんだけ引き剥がそうとしてもビクともしないし銀ちゃんも起きないから先に蓮華起こしたネ。血祭りにするアルか?」

「あーそうね…てか新八は?」

「新八は買い出し行ってるネ。銀ちゃん血祭りにするアルか?」

「神楽ちゃん神楽ちゃん、何気に苛ついてない?何で二回も血祭り言ったの。落ち着こう、これいつもの事だから私がなんとかするから落ち着こう」


そう、いつもの事。
それに何故か体が妙に怠くて怒る気が起きない。

そんな私に驚いたのか、神楽が目を見開く。


「どうしたアルか蓮華!!いつもの蓮華なら銀ちゃんがくっついてるの気付いた時点で銀ちゃん血祭りにあげるのに!!銀ちゃんに何かされたアルか!?弱味握られてるアルか!!??天パぁぁぁぁぁ!!!!!!お前蓮華に何したアルかそれ相応の覚悟出来てんだろうなぁぁぁぁぁ!!??」

「いだだだだだ!!!!!!曲がる腕が本来曲がるべき方向じゃない方に直角に曲がるぅぅぅぅぅ!!!!つか何の話だ!!!!!」


私が止める間もなく神楽がプロレスラー顔負けの技を銀ちゃんに仕掛け、銀ちゃんはギブアップを訴えて床を叩く。

そんないつもの、もう見慣れた光景に何故か安堵して細く息を吐いた。


「…私は私しかいない…か」


夢の中で言われた言葉。
懐かしい、昔あの人に言われた言葉。

いつも決まって最後は聞き取れないけれど、何を言っているのかは何となくわかる。

『私達』は、そう出来ていたから。




「それでも私は…まだ……」




あの人は、きっと許すだろう。
あの人は優しいから。
誰よりも心が綺麗だったから。
私が『代わり』になる事を望んではいないから。



それでも私は、私自身は、



まだ、私を許す事は出来ないんだ。



この明るく楽しい日々に、まるで麻酔や安定剤を含んだように麻痺して忘れそうになるけれど、私は忘れてはいけない。

『あの日』を忘れるな
『役割』を忘れるな

この世界に来た本当の目的を、自分が成すべき事を忘れるな


この優しい場所が、それを鈍らせてしまいそうになっても






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はい意味不明←
ちょいとだけ銀魂連載ネタバレ…?蓮華が銀ちゃん達の世界に行ったのには実は別の目的がありますはい

そして実は重要人物な夢に出てきた人物。
早く出せる日がくるといいな(おい)