不意に顔の前に誰かの手がつき出された。一瞬の間の後、私は足、足首、ふくらはぎ、膝、腿、お尻の順番で床に崩れ落ちた。
全く痛くなかった。全然スマートじゃない受け身だったけど、今までの人生で一番理想的な転け方だったかもしれない。

まあ問題だったのは、これがどこかの道場や稽古場ではなく職場であり、誰かというのが副責任者だったことだけども(幸いにしてお客さんは一人もいなかった)。しかもあの人、私を起こしてくれることもなく何処かへ行きよった。

緊張しない、って大事。例えば車に曳かれたとしても、変に力んでいない方が被害が少なくてすむのだとか。でも、何かが自分に向かって飛んでくるのがわかってたら、リラックスなんてしてるどころではない。
人には何故、恐怖に対する防衛本能として体を固める特徴があるのだろう?