SPEAK/24

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2018/7/21 14:56 +Sat+
太陽のパスタ、豆のスープ/宮下奈都

結婚式直前に突然婚約を解消されてしまった明日羽(あすわ)。失意のどん底にいる彼女に叔母のロッカさんが提案したのは、ドリフターズ・リスト(やりたいことリスト)の作成だった。
思いつきや勢い混じりではありつつ、やりたいことをリストに挙げてそれを実行に移すうちに、過去を振り返り自分の心を見つめ直すことが出来て明日羽は少しずつ成長してゆく。

恋愛でもそれ以外でも、誰かとの関係を続けるのが難しくなった時って、ある意味でとても大きなチャンスだと思う。
その関係において、自分は無理をしていなかったか?伝えたいことをきちんと伝えられていたか?
無理をしている状態が現在進行形だと、意外とその無理に気づかないままだったりする。そして不意に関係が途切れた時に、そのことに気づいたりする。同時に、相手がどのように考えていたかも、想像出来たりする。
この物語の主人公・明日羽もそうで、結婚目前だった恋人に振られたことで悲しいながらもフラットな状態に戻り、自分の心を見つめ直すことで、自分が本当にやりたいことが徐々に見えてくる。

とは言え悲しいのだけどね。別れはいつだって。
でも「転んでもタダでは起きない」のはとりわけ女性の特性ではないかな。笑
ゆっくりではあるけれど、明日羽にも大いにそういう要素が。時間の経過というのはとても偉大だ。

食べ物が出てくる小説はやはりエネルギーがある。読んでいて力が湧いてくる感じ。
この小説における“太陽のパスタ”はけして美味しい料理ではないのだけど(笑)、愛情を感じるという意味で、やはり太陽だ。
明日羽は周りの人たちにとても恵まれている。リアルではないかもしれないけれど、悪い人間が一切出てこない小説というのも、たまに必要だ。



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