話題:本日の恋心模様

長い歳月をかけて、間違ったしあわせをおぼえているのかと心配になりますとメッセージが送られてきたのは、なにもない休日の昼下がりだった。彼とは何年かSNSだけでやり取りをしている。あたしよりも10歳以上離れているからか、相談事に対してのアドバイスは大人な意見ばかりで、不意を打つような言葉の数々は盲点だったり、痛いところだったり、学ぶことばかり。育ってきた環境や過ごしてきた時間の一部を断片的に俯瞰して聞いてくれる彼からするとあたし自身の信じる価値観の歪み、しあわせの意味の履き違えに違和感を抱くらしく、もう少しわるい子になってもいいと思うと感想を述べるのであった。誠実さや一途さは、そうしてくれる相手のみにするものであり、受け取ってくれないもの、踏みにじるようなものには、やさしさなんて持つだけ無意味で、人生という時間の無駄遣いだと指摘する。
ほんとうは、わかっている。惰性で続けることに価値がないことも、そんな時間がないことも。それでも、行動できないのは、しあわせの意味を知らずにおぼえてしまったあたしの変な期待と手を伸ばせば届く可能性を見てみぬフリしてしまうからだ。自分にはそんな力がないと決めつけ、身動きが取れないところに自分を勝手に追いやっている。


夢を見た。想われて愛される夢を。知らない男にやさしくされて、大事にされる。目が覚めて、かんじたことのない柔らかさに包まれる。全身で、わすれたくないと夢の中の体温を思い出す。そこには、長い歳月をかけて崩壊された愛の真実があった。
愛されたいと思った。そのやさしさにずっと包まれていたいと。夢が覚めなければいいのにと思ってしまった。気づいてしまえば、一瞬で崩壊してしまう張りぼての愛の箱庭。うそは、ほんとうにはならない。