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幼少下町2

二人の少年は傘をさしながら歩いていた。

その帰り道は無言でユーリはこのあと何を言われるかわかっていた。

無言だった二人の間でフレンが口を開いた。

「なんで、ケンカなんてしていたんだ」

明らかにこれは怒っている。

「なんでって、理由なんかあるかよ。ただむかついたからだってーの」

ユーリはそう言ってフレンから顔をそらした。

しかしフレンはそうさせてはくれなかった。

自分の傘を放り投げ両手を使ってユーリの顔を無理やりこっちに向かせる。

顔の生傷に触ったのかユーリは痛そうに顔をしかめたがフレンは引き下がることなく問いつづける。

「ユーリが理由もなく、相手に手を上げるなんて僕には考えられない」

それを聞いたユーリはずっとうつむいたままだった。

さっきまで怒っていたであろうフレンにもう怒気の色はない。

心配そうに澄んだ青色の瞳がユーリの方をみてくる。

それに耐えられずユーリはフレンを置いて1人走り出してしまった。

「ユーリ!待てっ!!ユーリ!!」
虚しくも彼がふりかえることはなかった。








幼少下町1

窓を開けて外を見ると雨がぽつぽつと音を立てて降ってきた。

「母さん!ユーリはどこにいった
の?」

彼の姿が見えなくて心配になったから僕は母にそう訊ねた。

「ユーリだったら今おつかいを頼んでいるところよ」

傘立てをみると傘の本数は減っていない。

「僕、ユーリに傘届けてくる!」

自分用の傘とユーリ用の傘をもってフレンは家を出て行った。

ーーーーー

「確か、近くの果物屋までだよね…。」

早足に雨の中を歩いていく。


唐突に怒鳴り声が聞こえた。

「「お前、生意気なんだよ!!」」

怒鳴り声がする方に急いで向かうと3人の年上の男子達に囲まれている人影があった。ユーリだ。

「生意気?俺が?お前らがの間違いじゃねぇか?」

売り言葉に買い言葉。まさにそういう状況だった。

一体、雨の中傘もささずに何をしているんだ!

状況を理解せずに突っ込むのは良くないとは知りながらも我慢できずにユーリの元へと急ぐ。

「ユーリっ!!君、何をして…!?」

ユーリがこっちを向いた時、フレンは体が震えた。

振り向いたユーリの顔には喧嘩をしたであろうアザが無数にあったのだ。

なんで、こんなこと…
なんで喧嘩なんてするんだ。


「ふ、フレン!!」
ユーリはびっくりしたように目を見開いた。そのあとすぐに顔を背ける。

「ユーリ…、君ってやつは…」
呆れながらもこの場をどうにかしなくてはと思考を巡らせる。

上級生をみると微かにだが殴られた痕がある。ユーリも反撃したんだろう。なら、こっちにも非がある。

「ユーリ…。謝るんだ」

「なっ!なんでだよ!!!」
俺は悪くない、という目でフレンに訴えかける。

男子達はそれをみて鼻で笑った。

「さすがだなぁ。シーフォさん家のフレンちゃんよぉ。成績優秀。顔立ちもいいし。すべてが恵まれてる。オマケに真面目で人がいいだって?笑わせてくれる。お前みたいなのがいちばんなぁ………む」

そこまで言ったとき、このあとなんと言われるからフレンは察しがついた。

"むかつく"

ただそれだけの言葉。

『うるせぇよっ!!!!!!』

ユーリが声を張り上げた。
もとから声が小さくはないとおもうがかなり大きな声で、親友を侮辱しようとした言葉を遮った。

フレンはびっくりしてユーリをみた。当のユーリはフレンの方を見ることなく、男子達をずっと睨みつけていた。

しばらく時が流れる。



『こらぁ!!!お前ら何してんだ!!!!』
近所の魚屋のおじさんの怒鳴り声が聞こえた。

「やっべ!お前ら逃げるぞ」
魚屋のおじさんが来る前に男子達は素早く逃げていった。

瞬間ユーリが地面にへたりこんだ。
フレンがユーリのそばに駆け寄って様子を伺う。

ユーリは俯いたまま顔を伏せている。

しばらく沈黙。

雨がぽつぽつと二人の沈黙を破る。

ーそうだ、僕は傘を渡すためにー

ユーリに言いたいことがたくさんあったがその言葉を飲み込み、傘を手渡した。

「ユーリ…帰ろう?」
「あぁ…」










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