2011.10.5 16:13 [Wed]
身長差と手の大きさ(ジュド+リタ/学パロ/※なりきりネタ)
遂先日、最近出来た学校に転入した。理由は特に無いけど、しいて言うなら校則が厳しくなさそうだったから。正直、学園生活において付き物ではあるが…校則程面倒な物は無いと思う。
時間厳守に食事管理、スカート丈は膝下に自転車通学にはヘルメット。下校時間は部活動を含めて7時迄、挙げ句の果てに帰りは必ず寄り道禁止だの二人以上で下校しろ…エトセトラ。
校則は大事だし分かるけど、頭が痛くなる。
頭を悩ませ苛立ちがピークに達する直前、そんな時にパンフレットが届いたのだ。
新しく出来た高等学園。中を開くと出来たばかりなのも有り、内装はとても綺麗で何よりも校則が驚く位少なかった。好きな時間帯に授業や勉強も可能らしく、その他中庭や屋上へも自由に行き来出来る。そして学校と街が近く、この学校自体は高台に有るが数分足らずで街へ行き来が可能。
とはいえ、この学園は通う為に寮生活を強いられる。寮というと普通はルームメイトが付き物、人付き合いは得意では無いし干渉される事自体あたしには無理。
…が、どうやら敷地が大きい為かはたまたお金が有るのか。入学した生徒には一人部屋が用意されるらしい。こうして、あたしはそのおいしい条件に釣られ転入したのだった。
そして現在(いま)、時刻は夜の9時を過ぎた頃。校内にある図書室に居るあたしの目の前には大きな棚が並び、幾つか有る本棚の隅に有る棚の前に立ち本を見上げている。
何を読むとか特に決めていなかったからか、さ迷わせた目線は丁度一冊の本に目が止まった。背表紙には猫の写真集とタイトルが付けられていて、少し分厚めの表紙。
読みたい物、というより興味を惹いた物が出来た所で問題は高さ。
「何でこんな妙な場所に片付いてんの…!?」
本は微妙な位置に納まっていて、あたしの身長よりは上。でも手を伸ばせば届くか届かないか、そんな微妙な位置だった。
取り敢えず普通に手を伸ばして見る事にするが、まず届く筈が無かった。次に爪先立ちで精一杯手を伸ばす。指先の腹が背表紙の一番下、角を撫でただけに終わった。
椅子や梯子、脚立を取りに行けば良かったと後で気付くものの、今更取りに行くのも面倒に感じてしまう。でもどうしても手に取りたい。その一心から、あたしは辺りを見渡す。
「………、」
話し声はおろか本のページを捲る音も聞こえない…周りには誰も居ない、それを目で確認後その場で膝を曲げてバネを作り力一杯床を蹴り上げた。
「っあ…!も、もうちょっと…!」
先程よりは指先が本に触れる様子に自然と心が躍る。あと少し、そう思ってもう一度ジャンプしようとした時だ。背後から手が伸びてあたしの取ろうとした本を掴み上げたのだ。
(あたしが取ろうとしてたのに!)
時間を掛けて取ろうとした物を突然背後からかっさらうなんて!しかも簡単に。沸々と苛立ちが込み上げ、文句を言おうとした刹那。
「はい。…君が読みたかったのってこれ?」
肩を叩かれて振り向くと、さっきの本を差し出す人物が居た。見た所歳は同じ位、でも身長は少し高い気がする。
「あ、あの…」
「え?あ、ああ…」
じろじろと眺めて反応を見せないあたしに、目の前の人物は困惑していた。本を差し出した侭何とも言えない顔をしている。本の表紙には可愛い白と黒の猫が仲良く眠る写真が印刷されていて、つい口元が綻ぶも慌ててそれを引たくる。恥ずかしさで顔から火が出そう。
「あ、あ…り、がと」
「うん、どう致しまして」
普段言い慣れぬ礼を呟くように吐き出すと、そいつはにっこりと笑う。そして本とあたしの顔を見比べてから意気なり笑い声を漏らしたのだ。
「猫の写真集…可愛いよね、猫。好きなの?」
突然何を言うのかと眉を寄せた瞬間、思い出した。今手元に有る本を取ってくれたのは"目の前のこいつ"だったって事を。
笑いながら問う人物を前に恥ずかしさから湧き出る殺意を覚え、この時程本で人間を原型を留めない位、滅茶苦茶に殴りたくなった事は無い。
(何よ、どうせ似合わないって思ったんでしょ。ああもうっ、ちょっと背が高いからって…!なんかムカつく…)
(そんな事思って無いよ!だって僕は男の子だし。背も手の大きさも、君より大きいのは仕方無いよ)
(そのわりに顔の方は随分と女顔よね)
(う…。言わないでよ、ちょっと気にしてるのに…)
だって、"似合わない"って思われたく無かったから人が居ない時間帯を狙ったのに。