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怪しくも高らかな笑い声で黒い火の玉を打つ者と、静かに笑みを浮かべ、細身の真っ黒い剣を淡々と振り回す者。

そして、

火の玉をひたすら受け流す小さき生命と、黒い剣撃に槍と風で対抗する少年。


これは、妖精二人を率いる少年―リュウ―が、カゲの手下兄弟を相手に戦闘を繰り広げる一部始終である。




「いつになればここまで来られるんすかねー? ここまで来ない限り、僕の魔法は止められないすよー?!」


狂ったような身振りで放ってくる「弟」の火の玉は、確実にリュウへ向かってゆく。
それをすかさず、妖精の二人が身体をはって他方へ投げ飛ばした。



「んあー! あのいいまわしムカつくー!」
「落ち着くのよレト! リュウさんは力をつくしているでしょう?」
「分かってるよラト姉! だからこそリュウ! も っ と が ん ば っ て ー っ!」

リュウの耳元で、妖精のレトは声を張り上げた。それに応えようとリュウは槍を振るう。

しかし、形だけのその行為は、「兄」の剣さばきにたやすく負けてしまうのだった。



「詰めが甘い。さっきの威勢はどうした」

敵への目線は外していないリュウではあるが、声は出ない。

「これでは面白くない」と兄は吐き捨て、肩で息をする槍使いの目の前で、剣を放り投げた。


「あとは任せるぞ、弟よ」

「まちなさい! にげるつもりね!」

「レトちゃん! 戻るんだ!」

「そうだ」

がし、と兄は接近してきたレトを掴む!


「こうなるのだぞ」

「いや! はなして!」

「レト!」
「レトちゃん!」

「よそ見してていいんすかあ?」

その言葉を追うように、兄の背後から弟の火の玉が飛び出した!


「散り失せろ!」

「きゃあっ!」

ラトはリュウの肩にしがみつき、丸まった。
リュウはラトがいる肩を後ろへ引いてそれから、もう目をつむることしか出来なかった。

場は弟独特の笑い声に包まれる。




のは、つかの間。


「その手にある妖精を、離してもらおう」

「――ハ、あ、兄さん?!」


ー変。
レトを掴んでいる兄は胸ぐらを掴まれ、朱色に輝く波状の長剣を、のど元に向けられていた。


「というより、どうして僕の魔法が槍使いに効いてないんすか!」

そう。
火の玉に当たるばずのリュウとラトは無傷。

その代わり、彼の後方左右では、地面に小さく焼け跡があったのだった。


「この剣で振り払ったまで」

そう言った「女性」は、驚きを隠せない弟の姿を凝視しつつも、武器と兄の胸ぐらを持つそれぞれの手の力は抜いていない。

冷静に、かつ鋭く見据えるその女性に、弟はひたすら歯をきしめる。
静かに黒い火をまとわせながら。


ただしその行為も、女性は見ずとも分かるらしく。


「その両手のホノオを打ってみろ。
 こいつの首を、お前のホノオと共に切り捨てる」

こう言葉を投げかける。

弟はしばらくして「ちくしょう」と吐き捨て、攻撃の構えを止めた。


「さあ。あとはお前が妖精を離すだけだ」



兄が目をふせたとほぼ同時に、静かにレトが手放された。
女性は握っていた手が開かれたことを確認すると、「それでいい」と言って勢いよく兄を突き放す。


そして、束ねた青髪をなびかせながら、静かにリュウがいる方へ歩み寄ってきた。



「危ないところだったぞ、リュウ」

「……ありがとうございました、ミズキさん」

「気にするな」と一言。ミズキはそっとリュウの肩に手を置き、耳元へ顔を近づける。


「マルーとアスカが妖精の捜索に向っている」

「 !! 」

「敵はリュウとの戦いでこの事実を知らないだろう。むしろ、敵がつくった幻影で苦戦しているとでも未だに思っているかもしれない」


言い終わり、ミズキは改めて剣を構えた。



「さあ、おもいきり行こう。さっさと吹き飛ばすぞ」

「はい!」

「わたしたちも!」
「がんばるんだもん!」

「二人共、大丈夫なの?」

「「かぜのかご」がある限り、がんばれます!」
「わたしたちはこれでもタフなんだから! まかせて!」

「いつまでそう図に乗っていられると思っているんすか? ねえ、兄さん?」

「人が増えようが同じこと。楽しもうじゃないか、弟よ」



「(マルー、アスカ、頼んだよ)」

 ――ここで僕が、
  カゲの手下をけちらす!――


─━─━─━─━─



「妖精さーん!どこー!?」

「あの人達はどこかに放っただけですから、この辺りにあるはずです」


―マルーとアスカ「妖精探し」



「どんな袋だったかな、妖精さんを閉じ込めてたのって」

「小汚い袋の口を、真っ黒いひもで縛っていた気がします」

「小汚い袋で、真っ黒いひも、――あっ! あったよアスカ!」


マルーの目に留まったのは、アスカが言った通りの色をした袋。
口とひもだけが茂みからはみ出ていたそれを、マルーはがっしり掴んだ。


「せーのっ」

「ふぬ!」の声で引きずりあげるはずが、いとも簡単に袋は茂みを抜けてしまう。
引っ張った勢いで、彼女は後ろへ転げ倒れた。



「いったた。お尻と背中打っちゃった……」

「マルーさん、それ――」

「ん、これ?」

「 !! やっぱり破けてますよ!」

「へっ!?
 えええっ!?」

何度もマルーは引き上げた袋を見直した。

しかし、いくら凝視しても、「袋に穴が空いていた」事実は変わらない。



「そんなあ。私、逃がしちゃったってこと?」

「いいえマルーさん。あれを」

アスカはたんと木の枝を指差した。
その方向には、マル一が持つ袋の口と色が似た布切れが。

アスカは手早く布切れを枝から外し、マルーが持つ袋と重ね合わせる。


「間違いありません。偶然にも袋は枝に引っ掛かり、重みで破れてしまったのでしょう。困りましたね……」

「早く見つけて、リュウのところへ戻らなきゃいけないのに」

ため息と共に、マル一の威勢が抜け落ちる。


「こんなに広いところ、全部探さなきゃいけないのかな――」


上の空になっているところをふと、何かがマルーの視界に入った。

目を凝らしてみると、ぽうと浮かぶ艶やかな羽ばたきが。


「何だろう、あれ」

マルーは引っ張り上げられるように身体を起こし、羽ばたきと共に獣道に吸い込まれていく。


「マルーさん? ――待って下さい!」








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