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あたしに眠る力・中




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「ちょっと! 応えてよあたしの杖!」

その場を動かず集中し続けたリンゴ。いくら経っても反応しない杖に嫌気がさし、ついに諦めてしまった。


「大切なことは目に見えないって言ってたけど、まずそれって何? 分からなかったらやってても意味ないわよね? ふんー……」

リンゴは少し考え始めた。


「そういえば、あの人――エンさんに何か言われたわね。イメージするだの想像力だの実力だのって……たいしたヒントじゃないわね。――女王様は確か、あたしのパートナーのこの、玉の部分を「心臓」なんて言ってたような……」

彼女はふと、握りしめていた杖を見る。



「あの時は痛かったのかしら? それだったらとても申し訳ないわ。この世界で最初にできた友達なんだし、もっと大切にしなくちゃ……そうよ!! 友達――いや親友なのよ! あたしがマルーを信じるように、自分から杖を信じてあげなくちゃ。そうしなかったら、相手も信じてくれないわ……」



あたしは信じるわ。あなたが必ずチカラを貸してくれるって。だからあなたも、あたしを信じて――リンゴはそう願い、再び杖を構えた。彼女の周りでわずかに風がそよぐ。



彼女は自然と、胸の奥でわき出る何かを感じていた。次第にその何かは熱を持ち、大きくなってゆく……!

鼻から短く息を吸い込み、リンゴは一声! 杖を前へ突き出した瞬間! 重みと共に熱風が巻き起こったのだ!



その熱風は彼女を後ろの壁に叩きつけ、前方で爆破音を鳴り響かせる!

土埃の中、リンゴは痛みを噛みしめながら、ゆっくりと目を開けてみる。



「 !!! これ、まさか“あたし達”が……?」

なんと、目の前の壁に、ぽっかりと大きく穴が空いていたのだった。


「すごいわ! やったわあたし達!!」

リンゴは初めての魔法の発動に、跳ね回り大騒ぎ。

「――これで、先に進めるのね」

リンゴは気を落ち着かせ、空いた壁の先へ進んだ。
穴の先は、これまで歩いていた遺跡とは全く違う、心が洗われるような空気に満たれていた。そんな広間の中心には、等身大の柱のその上に四角い箱が置かれてあり、その傍でひたすら祈る者がいたのであった。



「女王様!」

『!!』
「あっ、ごめんなさい。また大きな声を……」

『心配はいりません――それよりもリンゴさん、魔法を発動出来たようですね』

「はい! この杖のおかげ――」

リンゴは再び杖を眺める。すると、彼女の顔がだんだんと陰ってゆくのだ。終いにはため息が止まらなくなっていった。

『――リンゴさん、どうされましたか?』

「……よく考えたら、魔法が出たのは杖のおかげであって、あたし自身の力じゃないんだな、って。そう考えたら、ちょっと――」

『それで良いのです。どんな魔法使いでも、始めは杖の力を借りて魔力を育てるのです――』

「でも――」



「おーーーーい!!」

「……この声! マルー!」

「よかった! 無事だったんだね!」

「ええ。途中でここに詳しい女王様と一緒になったの。だから大丈夫よ!」

「女王様って?」

「ここをさまよう幽霊よ。ほら、今マルーの目の前に立ってるわ」

「……ねぇどこにいるのー? なんにも見えないよー?」

「え?」

「冗談にも程があるだろ。怖がりすぎで、ついに頭イカれたんだな」

「冗談なんかじゃないわよ! ちゃんといるもの!」

『――私の姿はどうやら、彼らに見えていないようですね』

「がっかりだわ。誰もが惚れる美人さんなのに」

「僕にはお見通しさ。ほら! ここだろう?」

「そこじゃないですよ」

「え? ……ああココにいたんですか! 移動早いですね!」

「違いますよ。しかも女王様は一歩も動いてませんから」

「じゃあココ……
「嘘をつくのはやめてください。女王様、ウソつきは嫌いって言ってますよ?」

「な、……これは失礼いたしました女王様!」

「だからそこには立ってませんって……」

『あの、私は一言もあんなことは――』

「いいんですよ。どうせあたし以外見えてないんですからっ」

『ですけど人を騙すのはいけないこ……っ!!』


突然、女王が頭を抱え、しゃがみこんでしまった!

『う――うう――っ!』

「どうしたんですか!? しっかりして下さい!」

『――あなた方の侵入に気が付いて、あ、あの人が――!!』

「あの人ってもしかして、王様!?」

「つっ……!!」

「 !! 師匠! 大丈夫ですか!?」

「なんとかね……どうやらあの墓から何か出てくるようだ」

『――気付いている方がいるようですね。ではあの方に今すぐ、ううっ!』

「女王様!! ――エンさんあの! 女王様も急に苦しみだしたんです! 成仏しきっていない王様が目覚めてしまうって言ってます!」

「成仏しきってないだって……!? そうか! あの墓には王様が――!」

『――どうか伝えて下さい。私が愛した人を、この世から解放し……くあぁあっ!!!』

「女王様!!」

『私は、いつでも――たの、ソバに――!!!』

「女王さまあっ!!!」

「リンゴ! どうしたの!?」

「……どうしようマルー! 女王様が、消えちゃった――!」

リンゴと行動を共にしていた遺跡の王妃は、なんと墓から現れた邪悪な力によってかき消されてしまった! ぽろぽろと涙をこぼすリンゴを襲うように、墓が今にも動き出そうと音を立てる!

緊張感が、マルー達に降りかかる。



 くおおおおおおお…!!


「うおーお! なんか出たー!」

「あれが王の未練ってやつ、かあ゛っ!!!」


「「 エンさん!! 」」

邪悪な力は依頼人のエンをひざまずかせた!

「すまない。頭痛と耳鳴りがますます――!」

「もうしゃべっちゃダメですよ! まずは出来るだけここから離れて! リンゴもエンさんと一緒に! ボールとリュウは私とアレを何とかするよ!」

「よし!」
「ほい!」

「リンゴー! エンさんを頼むねー!」



マルーはそう言い残し、ボールとリュウを連れて「黒いぼうれい」との戦闘を始めた。

「はあっ!!」

まずはマルーが一撃!


「りゃあ!!」
「えいっ!!」

ボールとリュウが、マルーに続いて攻撃する。


「どうだ?」
「あまり効いてないみたいだねー……」

「――もう一度だよ!」

そう言いながらマルーは、敵へ向かって走り出した。


がその直後! ぼうれいが腕を振りかぶった!

「うわっ!」

床を広く跳ね上げた勢いで、マルーを大きく吹き飛ばす!


「マルー大丈夫ー!?」

「うん。しりもちだけだから、平気!」

「あの一振りでここまで衝撃が来るんなら、近づいたときはもっとヤバいな」

「近づいたり離れたりしなきゃだねー」

「うん。コツコツ作戦!」


三人はあらためて武器を構える。

「マルー、それぞれ違う方向から攻撃しよう。隙をつくらせねえんだ」

「あ! それいいアイデア!」

「じゃあ、僕はあっちから攻撃するねー」

「俺は向こうへ行く。マルーは正面を頼む」

「分かった!」





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