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先生と教え子




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―スペルク魔導学園「園長室」



「サイクロンズよ。君たちの活躍で、学園の危機は免れた。改めて礼を言おう」

「ありがとな!」
「ありがとう」
「ありがとうございますっ」

「そして私は嬉しい。この事件を経て、皆それぞれ成長できたと言うのですからね」

「はい!」

「みんな、魔法が使えるようになったよねー♪」

「それにこいつはいつの間に青の戦士だしね。 あれ、夢かと思ってたのに」

「夢じゃなかったんだな〜♪」



「そして、お嬢さんたちには最後に決めてほしいことがある」

「何ですか?」


学園長は、ある人たちに指をさしてこう告げた。



「処分の仕方だ。事件の元となった者たちの」


こう言われたルベン先生とローゼ先生の顔が曇る。



「そんなこと言われても……みんな、どうしたらいいかな」

「さあな」
「そうね…」
「むー…」


「なぁ先生。先生は、本当に何も覚えてないのか?」

「…小汚いローブをまとった者がくれた「秘薬」というのを飲んでからさっぱりなんだ」

「じゃあ、しょうがないんじゃねーか?」

「あんた被害者でしょ! 変な機械にくくりつけられて、魔力吸いとられて!」

「でも俺生きてるし――」

「そういう問題じゃなくて!! あんた、下手したら瀬戸際よ。危機感もってよ! あんたに魔力がなくなったら! 元から体力ないんだし、ちゃんと考えなさいよ……」

レティの目がわずかにうるむ。


「すまなかった。私が教え子たちに多大な迷惑をかけていたことは――」

「 謝ればいいだなんて思わないで!! 」

なんとレティは、ルベン先生に近づくなり胸ぐらを掴み、そして思い切って壁際へ押し付けたのだ!


「レティさんやめて下さいっ!」

「レティやめろ!俺たちの先生だぞ!」

「黙って!! ……この人が全く何にも覚えていないとしても、危険な目に合った教え子達――少なくとも私達は、この人がしたことを覚えている! そういう人達のことを考えて、もっと心を痛くして! この瞬間も……これから先も!!」

言い切ったレティは、先生を押しつけることを止め、数歩後ろへ下がった。
そしてレティはマルー達の方へ向く。


「私、こう思うの。先生は、教え子と向き合うことで罪を償うべきだって。何も覚えていないのなら、これから覚えればいいんだわ。それに私、ローゼ先生の授業、受けていたいから」

「 !! 」

「ローゼ先生はこの人に利用されただけだもの!
張本人ではないわ。だからせめて、ローゼ先生にはこれからも授業してほしいわ!」

「俺だって、ルベン先生の授業受けていたいぞ! せっかくやる気になってんだ。先生が先生でなくなったら許さねぇ!」

「私もですっ! 私を変えて下さった師がいなくなってしまうなんて……私は嫌ですっ!」

「君たち……」

「これならもう決まりじゃねーか? こーやって先生を慕うやつらがいるんだからよ」

「……そうだね。学園長先生!」

「うむ。これからも、この学園の師として、教え子を導いてもらおう。ルベン殿、ローゼ殿」


この言葉を聞いたリックら三人は、仲良く万歳をして喜んだ。ローゼ先生は何度も学園長に頭を下げ、ルベン先生は一言お礼を述べた。


「恵まれていますな、二人は。これからは、己の本当の力で導かなくてはなりませんな」

ローゼ先生とルベン先生がこくとうなずく。

「二人は十分に強い力を持っているのです。それに自信を持たなくては、やがて他の何か――偽りの力であったり、人の圧力であったり、――に呑み込まれ、己が消えてしまう。そこから抜け出すにはやはり「人」が必要。そのことを身をもって知ったであろうからね」

「……」

「これからも、誰かが信用し続けてくれる。そういう者であり続けなさい」

「「 …はい、学園長! 」」

「さて、お嬢さんたちはこれで、全ての問題を解決していただいた。これからもあるのでしょう、人を助ける仕事が」

「そうですね」

「なら、これ以上この学園に留めるわけにはいかない」

「もしかして、お別れなのか!?」

「そっか……帰らなくちゃね」

「先生方は、正門までサイクロンズを送ってもらいたい。三人は、各自教室へ戻るように」

「がくえんちょー。俺たちも行っちゃ――」

「いけないよ」

「むー……」

「また会えるといいわね!」

「これからも頑張って下さいっ!」

「……またな! 俺はいつでも図書館で待ってやる!」

「学園で、だろ? サボるんじゃねーぞ」

「また手合わせしよ! レティ!」

「僕ともだよー?」

「今度会うときは、あたしも強くなってるんだからね!」

こうして、サイクロンズは園長室を後にした。


廊下を歩く中、先頭にいたルベン先生が立ち止まる。


「ルベン先生、どうされたのですか?」

「……決めたことがある」

「何でしょう?」というローゼ先生の声を背に、マルー達と対面した。



「君たちに頼みがある」

「何ですか?」

ルベン先生がふところから取り出したのは、石のかけらのような赤い物質だった。


「これが、私の言った「秘薬」というものだ。 あの時飲んだはずのものなのだが、今朝私が着替えを始めたときに見てしまったんだ。上着から床へ、これが落ちるのを」

「何だよそれ。なくなったはずなのに戻ってきたとか言うのか?」

「定かではないが、これがあの時もらった秘薬というのも間違いではない」

「石みたいだねー。キラキラしてるよー?」

「薬には見えないけど、この大きさなら飲み込めそうよね」

「手元にあれば、また飲んでしまう気がしてならないんだ。私を救ってくれた君たちになら、これを最適な使い方に導いてくれると、そう思うんだが」

「……分かりました! 大切にします!」


マルーはルベン先生から赤色の秘薬をもらった!


「こんなのもらう必要あんのか?」

「ラビュラさん達に見せれば何か分かるよ! 帰ったらすぐ報告しよ!」

「……先へ進もうか。時間を取らせてしまったね」



やがて、マルー達は正門までたどり着いた。振り返れば、学園までの長い道が視界に広がる。



「私達はここまでです。困ったことがありましたら、いつでも訪ねて下さい! 力になりましょう」

「私も協力しよう。その日まで、君たちより強くならなくてはね。自身に秘められた、本当の力で」

「はい、先生!」

「本当にお世話になりました!」

「先生方も、頑張って下さい」

「また呼んで下さいー」

「あたし達はいつでも、味方でいますよ!」



こうして、サイクロンズは二人の学園の師に見守られながら、スペルクを去ったのであった。



 Flag:3 へつづく!


……一方その頃



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