ハンジに言われた事を、リヴァイは考えながら古城へ向かっていた。古城の前では、エレンがペトラと一緒に、訓練をしていた。リヴァイに気付くと二人は、同時に敬礼する。
エレン/ペトラ「リヴァイ兵長、お疲れ様です!」
リヴァイは二人に、軽く頷く。
リヴァイ「訓練していたのか。他の者は?」
ペトラ「他の三人は、買い出しです。エレンが立体機動の訓練をしていので、一緒にしていました。」
リヴァイ「そうか。」
リヴァイがチラッとエレンを見ると、エレンもリヴァイを見ていて目線がかち合った。
リヴァイ「・・・・・やってみろ。」
エレン「え?」
リヴァイ「立体機動、して見せろ。」
エレンは数回瞬きをした後、はい!と元気よく答えた。
ペトラ「エレン、さっきまでの練習、思い出して。」
応援の言葉をくれるペトラに、エレンは頷く。エレンは呼吸を整えると、木にアンカーを撃ち込み、飛び上がった。
ペトラ「どうですか?兵長。」
気持ちよさそうに飛ぶエレンは、まるで鳥のようだった。以前までのぎこち無さが、ない。
リヴァイ「ほう。悪くない。」
ペトラ「でしょう?エレン、ずっと訓練してたんですよ。早く上手になって、リヴァイ班の一員になりたいって。」
ペトラは自分が褒められたように、嬉しそうに言った。エレンが努力しているのは、リヴァイも分かっていた。エレンは日に日に苦手なものを、得意に変えていく。飛びながら方向転換するエレンを、リヴァイは見つめた。これは明らかに、エレンの実力だ。
リヴァイ「エレン、もういい。降りて来い。」
リヴァイが言うと、エレンは降り立った。
エレン「どうでしたか?」
不安そうに見るエレンに、ペトラは笑顔で頷く。エレンはそれに応えると、リヴァイを見た。
ハンジ-褒める事で、伸びる場合もあるよ-
ハンジの言葉が、蘇る。今まで、一度も褒めたことがない。リヴァイはエレンに近づくと、口を開いた。
リヴァイ「方向を変える時に、動作にまだ迷いがあるな。」
エレン「は、はい。」
リヴァイ「壁外ではその迷いが、命取りだ。」
エレン「はい・・・・・」
リヴァイ「・・・・・だが、動き自体は良くなっている。」
そう言うと、エレンはパッと顔を上げた。
リヴァイ「苦手なものを必死に訓練する姿勢は、悪くない。これからも、精神しろ。」
エレン「!、はい!」
リヴァイ「分からない事があれば、聞け。上官や先輩は、教える為にいる。」
エレン「はい!」
リヴァイ「・・・・・それから、」
言葉を切るリヴァイを、エレンは真っ直ぐに見る。
リヴァイ「・・・・・お前は、リヴァイ班の一員だ。俺の部下だ。」
リヴァイの言葉に、エレンの目が見開かれる。
リヴァイ「一人じゃないんだから、抱え込むな。」
エレン「・・・・リヴァイ、兵長。」
リヴァイ「分かったか?返事は?」
エレン「はい!」
返事をしたエレンの目は、潤んでいた。
リヴァイ「泣き虫め。」
エレンの頭を撫でると、リヴァイはそのまま城に向かって行った。
ペトラ「やったね!エレン!兵長、褒めてくれたよ。」
エレン「はい!ペトラさんや、皆さんが教えてくれたおかげです。ありがとうございました。」
ペトラ「仲間の苦手は、自分の苦手だよ。」
エレンは零れそうな涙を、拭いて笑った。


ペトラと笑い合うエレンを、リヴァイは城の窓から見ていた。
リヴァイ「・・・・あんな風に、笑うのか。」
エレンの笑顔を見て、リヴァイは悪くないと思った。

これから少しずつ、リヴァイのアプローチが始まっていく。