entry title:
私より不幸にしてあげる
この件は口に出すと思い出すから嫌だったんだが、トラウマ克服の為に文章に残そうと思う。
今はもう結婚して引越したんで別の家に住んでいるんだが、七年前くらい前に住んでた実家で起こった出来事。
基本的に寝る時間が遅い俺は、大抵は夜中二時か三時に床につく。
その日も確かそれくらいの時間だったと思う。
布団に入ってうつらうつらし始めた頃、足元の方で
パキパキッ
と音が聞こえた。
俺の部屋は固めのアコーディオンカーテンで仕切られていて、マグネットで柱にくっつけて「扉を閉めた状態」にしてたのね。
それで、当時は猫を飼っていて、猫が俺の所で寝たくなったり、トイレ行きたくなったりした時、無理やりアコーディオンカーテンの下を潜り抜けて来るのよ。
そん時に聞こえる音が、そのパキパキ音なのね。
それで
「猫が来たんだなー。」
と思い、猫を腕枕する為に首を横に向けたまま、体だけ仰向けになったのね。
そしたら案の定、布団の上に何かが乗った重みを感じたんだ。
でも中々枕の方まで来ない。
「普段はすぐに顔の所まで来るのに。」
とか考えてたら、その重みの感触が変なのに気付いた。
重みが二つあるんだ。
何だろうと思って、体を起こそうとしたら完全な金縛り。
その二つの重みが交互に布団の上を移動してくる。
首が横向いた状態で体が動かなかったから、自分の足元が見えなかったんだが、そこで初めて重みの正体に気が付いた。
誰かが俺をまたいでたんだ。
そいつはゆっくりとした足取りで、頭の方へ歩いてくる。
最初親かとも思ったが、こんな時間に起きてるわけないし
「泥棒か!?」
とも思った。
必死で体を動かそうとするが、金縛りで全く動けない。
俺がもがいてると、寝る時につけているオレンジの常夜灯が影になったのが解った。
完全に誰かが、上から俺を見下ろしている状態になってたんだ。
「このままじゃヤバイ。」
と思い、どうにかしようと必死に目だけを動かして、そいつの姿を視界の端に捕らえたんだ。
そしたら髪の毛のスゲー長い人型が俺を上から見下ろしてた。
天井にある常夜灯が逆光になってるせいで、男か女かも解らん影だけに見えたが、とにかくそいつが上から
ジーーーーッ
と俺を見てる。
ホントに殺されるんじゃないかと思った。
だからこれ以上ないくらい力を振り絞って、首を上に向けて、起き上がろうとしたのよ。
その瞬間、しゃがんだんだか、首が落ちたんだか解らんが、影になってる人の頭の部分がもの凄い勢いで
ストーーーーン
と俺の頭の横に落ちて来た。
そしてそいつが俺の耳元で囁いたんだ。
「…何をしたの?」
って。
男と女の声が混ぜたボイスチェンジャーみたいな声だった。
思わず
「ひいっ!」
とか情けない悲鳴を上げてしまったんだが、それと同時に金縛りが解けて起き上がる事ができた。
もの凄い力入れてたから全身汗だくだし、翌日筋肉痛になるし大変だったよ。
しかしコイツにはもう一度襲われる事になるんだ。
category:
呪われし勇者達の死ぬ程怖い話