いつものように、かぶき町をブラブラしてると土方を見つけた。なんだこれ運命じゃねーの、と声を掛ければ、うざい、と心底見下した視線をこちらに向けてきた。まったくもって久しぶりに会う恋人に向ける態度ではない。 「ノリわりーんだよテメーは。冗談でも"俺も会いたかったぜ銀時ィ"って言えねーのか。」 「"俺も会いたかったぜ銀時ィ"。こないだバックレやがったツケを返してもらいたくてウズウズしてたんだ。金とは言わねーから一発殴らせろ。」 「すいません僕が調子に乗りました」 刀に手をかけ笑うその姿は、攘夷浪士を前に臨場体制のそれである。てゆーか殴るつったのに斬ろうとしてんじゃん!殺ろうとしてんじゃん! 俺の情けないまでの抵抗が功をそうしたのか、はたまた周囲の好奇の目を気にしてか、土方は刀から手を離した。代わりに柄の悪すぎる舌打ちが落とされる。 くり返し言うが、それはヤクザな態度であって、恋人に向ける態度ではない。 「ねぇ、土方くん」 「なんだ」 「もう少しこう柔らかい態度で接することはできないんですかね」 「無理だな」 「即答っておかしいから。人として間違ってるからね、それ」 ほんとかわいくないよね知ってたけど! 愛想の欠片もないこんな瞳孔開きっぱバイオレンス野郎のどこがいいんだか。我ながら呆れる。それでもこいつに完全にやられちまってる自分に心底同情する。 「なんだ急にしゃがみこんだりして。ついに持病の糖尿が悪化したか」 「うるせーな何度もいうが俺は糖尿じゃねーから寸前だから。しいて言うなら恋煩いです」 「アホだろテメー」 アホだアホだと大変失礼なことをのたまいながら、土方は楽しそうに笑う。 ああ、もう腹立つなコノヤロー。しかめ面で見上げてみるものの、浮かれる気持ちは止められない。 (そのはにかんだ笑顔が、) (かわいい、なんて) (ぜってー言ってやんねーけど!) |