紅茶一杯。



呪いとモブ(2夜目)
2018年11月16日 14:54


話題:二次創作文

※モブサイコ100
※ユルいグロあり
※見切り発車注意



茂夫が瞼を開けると、いつもの真っ暗な空間に、ぽっかりと人が居るところだけ明かりが灯っていた。子供達の明るい歌声が聞こえる。
今日はどうやら花いちもんめをやっているらしい。茂夫は目を凝らし、遊んでいる子供達の中から霊幻の体を探す。
しかし見付けることが出来ず、とりあえず仲間に入るために近付いた。
「あの、こんばんは。…僕も入っていいかな。」
なるべくフレンドリーにと心掛けてみたが、やはり慣れないからか、ぎこちない。しかし子供達は快く受け入れてくれて、まずは一安心した。
遊んでいた子供達は、近付いても繋いでいる手から肩までしか見えず、人の形ではあるものの、様子も顔も真っ暗で分からなかった。なので霊幻がどれなのか分からない。曖昧な部分が多い。大人の腕と子供の腕なのだから見分けるのは簡単なはずなのに、探そうとすると形がボヤけてしまう。茂夫は何度も目を擦ったが無意味だった。
どちらに霊幻がいるのか分からないまま片方のチームに入り、促されるままに隣と手を繋いだ。
ヒヤリとした感触に目を向けると、青白いを通り越した腕には血管が透き通り、おどろおどろしさが増していた。
少しばかり肌が粟立つのを感じながら、茂夫は向かいを見た。歌が始まり、順調にあの子が欲しい、あの子じゃわからんと続く。
相談しよう、そうしよう。と来て、茂夫は仲間と輪になった。腕しか見えない者達は何を言っているのか茂夫には分からない。聞き取れないのだ。何かは言っているが、映像を早送りした時のような声が飛び交うのだ。
(どうしよう。師匠を探さないといけないのに。)
チラリと相手側を見ると、並んで待っている相手の中に霊幻の右腕を見付ける。
さっきまでは見分けがつかなかったのだが、微かに霊幻の気配が有ることに気付いたのだ。
(そうか、気配を辿ればいいのか。)
そして辿った結果、一番端に霊幻の右腕は居た。あとはもう回収するだけだ。
何を言っているか分からない子供達の話し合いに、意を決して茂夫は一人の肩を叩いた。そして、霊幻を指差す。
茂夫は無言だったが、その子供は茂夫の案に乗ったようだった。
話し合いが終わり、また横並びになると、隣の子供が茂夫を前に押し出した。茂夫はちょっと戸惑うが、選ぶ権利をくれた事に感謝し、霊幻の右腕を指差した。
「その人がいいです。」
これで霊幻の右腕を回収できた、と安堵も束の間。相手のリーダーらしき者が抗議に出た。言っている事はやはり分からないが、えらく憤慨しているのは雰囲気から分かる。茂夫が狼狽えていると味方側も怒りだし、いくつか言い合いが飛び交ったあと、乱闘騒ぎとなった。
ワッと揉みくちゃにされながらも、混乱に乗じて霊幻の右腕を掴みに行った。タックルして腕を抱えると、『ぶつり。』と霊幻の腕が何かから千切れた感覚が伝わった。それに茂夫はゾクゾクと寒気を感じ、恐怖を振り払うようにダッシュした。
何かが付いていた。霊幻の腕だけでは無かったのだ。腕だけが浮いているかと思っていた。
見えないだけで、体が付いていたのだ。ということは、つまり。
茂夫は走りながらギュッと目を瞑った。取り返さなければいけないんだ、そうしないといけなかったんだと自分に言い聞かせる。
真っ暗な世界を、霊幻の右腕を抱えながら走る。どこまでくれば良いのか分からないが、とにかく走った。しっかり掴んでいるから、早く目覚めてくれとも思った。
走りながら茂夫は霊幻の事を考えていた。この事(呪い)を言うべきか、秘密にしておくべきか。いや、下手に知ったら夢に来てしまいそうだ。そうなったらややこしいだろう。下手をしたら死んでしまうかも知れない。
(師匠には、言えないっ…!)
息を切らして走った。どうやったら目覚めるのか分からなくて何度かエクボを呼んだが、来ることは無かった。
一度呼んでしまうと、頼ってしまうと、心細くなった。呼んだときに現れてくれない事がこんなに悲しいのだと茂夫は知ってしまった。


目を覚ますと、エクボが片手をあげて挨拶してきた。
「よう相棒、無事に帰ってきたな。」
陽気なその姿に、涙目をしたモブは無言でエクボの頬を引っ張った。



(2夜目おわり)

子供達との遊びは参加しないといけない縛りなんですが、普通に途中退場してんなって思いました。呪いの目的が解りませんね。私も分からないです(見切り発車)



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