18/01/12 23:11 (:単発/妄想(ジャンル無節操))
  ルチルと。35
話題:妄想を語ろう
「‥貴方本気で言ってます?」


沈黙を破ったルチルの声


深夜に
ふたつの澄んだ光がユラユラ煌めく


「‥うん」


折れた不完全な指が
ルチルの指を絡めて離さないまま


「そうですか‥」


彼女を抱き寄せ額を合わせる。


まるで

本気か嘘かを探る様に‥暫く黙ったまま心を探る


「私は構わないのですよ‥。寧ろ貴方に居てもらった方が安心します」


ルチルの賛同を得て漸くホッとする

〈にんげん〉


抱き合うふたり


自然と呼吸が合う


心地良い時間


理解を得る幸せ


それに‥


間近で見るルチルは息を飲む程美しい


「貴方の髪も象牙質が増えましたね。艶も出て綺麗ですよ」

額を合わせたまま


独り言みたく呟く


(温かい時間‥)


「ひとつだけ聞かせて下さい」


ルチルの声


やさしい、やさしい

ずっとここに居たい

「貴方は‥この国を隠れ蓑にしていませんよね」


ルチルの言葉


甘えた脳に
冷たく響く


「宝石である我々では、貴方の本当の所までは理解出来ないのです‥貴方はそれで良いのですか?」


「それは‥」


〈にんげん〉の世界を殆ど 語らない理由

「貴方‥元の世界に未練は無いのですか?」


ルチルの言葉を受けた彼女の瞳


向こうでの生き方、考えが浮かんでは消え‥

困惑だけが色濃く
プカリと浮かぶ


「悩ませてしまいましたか‥まぁ彼方に戻るにしても此処に残るにしても‥。後悔だけはしないで下さいね」


白磁の様な耳に囁く

「‥うん。」


俯く彼女に
頬を寄せるルチル


「どちらにせよ」


思案し離れた彼女を軽く抱き寄せ、呟く

「私は貴方の味方ですから」


脆い指は
ベッドに散らばったまま


淡い光が頼りない


「もう一度治しますよ‥今度は折らないで下さいね」


〈にんげん〉の世界

〈宝石〉の世界


此処でも彼方でも。
生きるには中途半端な存在の貴方と


「もし、貴方を見つけたのが私じゃない他の者だったら‥どうなっていたのでしょうね」

イエローダイヤモンドなら?


スフェンなら?


ボルツなら‥?


フォスフォフィライトなら?


指を丁寧に治す


部屋には甘く爽やかな香りが漂う。

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