政宗と三成の想いが通じ合って少し経った。

天下の情勢は徳川に傾き、敗残となった豊臣方の将は多くが処刑となるところであったが竜王を名乗る伊達政宗が1人残らず懐に収めた。
予てより堕ちたものはすべて救うという竜王の主張を聞いていた東照権現も苦笑いを浮かべながらもそれを認めた。
伊達が力を得ることを良しとしない者は数多くいたが、敢えて乱世を起こす男ではないとの家康の説得に、漸く世は落ち着きを見せたのであった。

そして、この男も。

「きぃさぁまぁああ!邪魔をしないのではなかったのか!」
「邪魔をしないとは一言も言ってないよね!」
「屁理屈をぉお!」

鍔迫り合いの音を背景に呑気に団子を食う主を大倶利伽羅はちらりと見る。

「……いいのか」
「相変わらずだよなぁ」
「……いいなら、いい」

朗らかに笑う政宗に大倶利伽羅は溜め息を吐きながらも微かに笑んで茶を啜る。

三成は秀吉を失ったあと、ひどく荒れた。
それこそ政宗の元へ一度も足を運ばなかったくらいだ。
激昂する石田軍を止めたのは家康――ではなく、徳川方についた伊達軍が文字通り叩き潰した。

――どうしても家康を殺してえってんなら俺を殺してからにしろ

静かに、諭すように。
あの時の政宗の気持ちを大倶利伽羅は痛いほど感じていた。
泣くに泣けない主を追い詰めた三成を恨みもした。

けれど、三成は結果的に立ち直った。

あの時三成が死んでいたら政宗は綺麗さっぱり忘れた振りをして、そうして何事もない顔で笑っていただろう。すべての気持ちに蓋をして。

今政宗が本当の感情で笑っていられるから、大倶利伽羅も許すことにした。
光忠はまだ腹の虫が収まらないらしいけれど。

「平和だよなぁ」
「そうだな」

この喧騒が、日常が。
主の幸せがいつまでも続くように。

今日も刀剣男士は主の側でその世界を守っている。