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シェアハウスかざみどり

『シェアハウスかざみどり』
著者 名取佐和子

“当たり前のように親から愛されて、世話をしてもらえると信じて疑わない。”
誰かの愛情を信じられるように育てられたということ。

正直過ぎて内定をもらえない大学生。
何も知らないフリを続け、心だけ少女のまま年老いたおばあさん。
高校を中退し母親となったお母さん。
方向音痴なのに運転手をしている中年親父。

家賃も光熱費も無料でクリスマスまで住めるというシェアハウスかざみどり。
集められた4人は、管理人の弓月くんとともに
期間限定の同居生活を始める。

各々の抱える問題を解決へと手助けしてくれる無愛想な管理人との距離が縮まってきた頃、管理人は父親を殺し、少年院に入っていたことを知る。
刑期を終えれば罪は償ったのか、その命題が各々の頭に浮かんだ時、かつてタクシー運転手をしていたという中年親父の話を聴く。産気づいた義妹を病院まで送ろうとし、方向音痴の為焦り、女子高生を轢き殺して服役していたという中年親父の話や、今まで一緒に過ごした時間で管理人や中年親父の人となりは既にわかっている。彼らを受け入れた4人は、このシェアハウスに無料で集められたのは偶然ではないのだと、管理人から知らされる。

通信販売会社社長の孫だという管理人は、社長の持ち物であったシェアハウスに、社長の恩人達を期間限定で集める事を依頼された。

社長は子供の頃、口減らしの為、丁稚奉公をしていた自分の心の支えだったおばあさん。
借金で首が回らなくなり、自殺しようと乗ったタクシーで方向音痴により別方向に連れていかれ、再起しようと思った中年親父の運転手。
大きな地震で息子を失い、もう生きていたくないと思った最中、人々が絶望の淵で出産を手伝った女子高生だったお母さん。
そして、不祥事で再び窮地に立たされた時、1番大切にしていた創業理念を思い起こさせてくれた就活中の大学生。

また1から踏み出そうとする、せつなくも暖かい話だった。

ことづて屋 停電の夜に

『ことづて屋 停電の夜に』 濱野京子

可愛がっている店員達が、自分には内緒で定期的に出掛け、その為の衣服を提供するが、何をしているか聞く事はない。その距離感を守り続けられるのってすごいと思った。
陳腐な言い方だけれど、自分なら、仲間外れにされているかのような感覚を持ってしまいそうだし、明らかに疲れて帰ってくる彼女を守ってあげたいと思い、手を貸してしまうかもしれないなと思った。

追想五断章 米澤穂信

『追想五断章』
著者 米澤穂信

亡くなった父が残した、自筆の小説の最後の一行。その5篇の全容が知りたくて、父の蔵書が売られたという古本屋にやってきた女性。
父が亡くなり学費が払えない為に休学していた俺は、お金に目がくらみ店主である伯父に黙って、小説を探すことを引き受ける。

探していくうちに、女性は小説を探すことで何か別の目的があるのだと気づく俺は、作者が海外生活の中で妻を銃殺した疑いを持たれ、日本で話題となった人物だと知る。
どれも妻と子供が出てくるその小説は、女性の疑問、自分が母を殺してしまったのではないかという答えを隠すため、最後の一行が別々の物語に振られていたものだったのだ。

謎解き広報課 天祢涼

アマネ
『謎解き広報課』天祢涼

「僕にとって広報紙は、恋人以外にありえません。別れた後…僕が異動した後、よくなってもさみしいし、悪くなってもさみしい」

地方の広報紙の存続可否を、東京出身の新卒に担当させて考える話なんだけれど、この言葉がなるほどと思った。好きな気持ちはまさにこれかも。相手の幸せを願う一方、自分が相手を幸せにしたかったからこそ、近況を知りたくない気持ちもあって…。なんか刺さった言葉でした。

夜の床屋

『夜の床屋』
著者 沢村浩輔
発行元 株式会社東京創元社
ISBN 978-488-43711-4

【夜の床屋】
男二人で出掛けていた俺は、帰りの電車時間を見誤り、駅で一晩明かすことになった。薄暗い駅から見えた床屋に好奇心から近付いて行くと、確かに先程まで、どう見ても営業している様子はなかったのに、綺麗になっていた。
昼は工場で働いているのだという店主は、売上はないが、近隣には床屋がない為、村人へのボランティアのようにして予約制で夜、 床屋さんをしているのだ、と聞く。

良ければシャンプーだけでもしていかないかと言われ、シャンプーと髭剃りを各々してもらう。妻でもないのに店主の助手として若い女の人がいたと不思議に思った俺達は、翌日、飲み屋で夜の床屋の事を話していた。するとこの村では誘拐事件が起こっており、店主は床屋に令嬢を閉じ込め、お金を無事に手に入れたので電車の線路を使い、令嬢を送り届けようとしていたところ、駅に泊まろうとしていた俺達の目を掻い潜ろうと、床屋を営業していると見せかけ、俺達がシャンプーなどで目を覆われている間に令嬢を連れ出したのだ。

他の短編はあまり印象に残らなかった。
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