話題:なんかなー


年寄りの世話は最初はN女史がやってたんだよな

その頃は食事を作って持って行くくらいのことだったのだけど、爺の性格が強いと言うかワガママなせいで何か嫌なことがあったんだろうな、俺が帰宅するとN女史が泣き出すことが何度かあったんだよ

これを続けさせると精神を病む恐れが出てくると判断して、緊急避難的にN女史を豪州に行かせたのだな

N女史は豪州に居る間は穏やかで楽しくしてたみたいだから

そこからは俺が代わりに食事を運ぶようになったのだが‥

この爺は何にもしないからね、食事運搬作業だけでなく、ゴミ捨てから何から何までやってやらなきゃいけないことに気づいた

ゴミは最初は外の物置の中に隠してあったのさ

冷蔵庫の中も食べ残しでパンパンになってたね

トイレは何年も掃除してないような感じだった

ゴミ屋敷の一歩手前のような異様な有り様だったよ

そこで一気に片づけるには専門業者に頼むか、素人でも人手を増やして取り組まないと無理だと思って、パパさん百合子さんに協力を求めたのだよ

その時パパさん百合子さんが「私たちも年だし、腰でも痛めたら大変だからね‥」とハッキリとは断らないまでも、協力はしないという返事だったのさ

これにはカチンときちゃったよね

自分達の老後の面倒を娘とその配偶者に見てほしいと言うならば、実際作業はしなくてもいいけど、今助けが必要な人の現状を見るだけでもいいから「何もできないかも知れないけど、取りあえず一緒に行って見てみましょうか」くらいのことは言ってくれると思ったのよ

だが、その話はしてくれるなって感じだった




N女史と別れても俺は糞爺からは逃げられない

それは何故かと言うと、成年後見人になったから

成年後見人ってのは、年をとって判断力が低下した人の財産を管理する役目を担うんだな

糞爺とは喧嘩をしたり色んなことがあって嫌な気持ちは今も持ち続けてるけど、この糞爺が信用できる人間は俺しかいないってところまで来ちゃったんだよ

N女史やN女史側の一族とは一切関係なく、糞爺は俺と個人的な契約を交わしたことになり、俺はこの爺の死に水を取ってやらなきゃならないんだよ

俺一人では世話が難しいとなれば、爺を施設に入れることもできる

その費用の管理も任された

その後の葬儀のことも全て

最後に残った財産は貰えることになったけど、これまでの糞爺に対する嫌な気持ちやストレスを忘れることができるほどの大金は残らないと思われる

この話をパパさんにしたんだよ

そしたら「うまくやったねー」と言われた




N女史より先に、俺は彼女の両親と縁を切りたいと思った

パパさんは以前から失言が多い人なんだけど、この発言だけは許せない

さすがは糞爺の一族だよ

いつも気に障ること言うんだよ

まあね、期待してた長男のところは離婚協議中だしさ、娘も孫達も日本に居なくて寂しいし、自分達の老後の不安もあるしでイライラしてたのかも知れない

でも「うまくやったねー」はないだろ

俺が毎日どんな大変な思いをしてるかってのが、この人が少しでも理解してくれていれば、そんな言葉は絶対出てこない筈!


だからね、N女史よりもパパさん百合子さんと別れたい気持ちの方が強いんだよ

N女史なんてどうでもいいのさ

俺の頭がどうかしちゃったのかも知れないんだけど、N女史との事は後回しでいいんだ

それより彼女の親が気に食わねー!