話題:野菜


いつもの八百屋さんに行くと、何やら文句を言っている主婦がいた

前日買ったほうれん草がもう傷み始めたと主張する主婦に対し、それはあり得ないという店主

店主の奥さんは「新しいのと交換してあげればいいのに…」と、他人事のように小さな声で呟いた



まあね、店をやっていれば思いは同じかと思うが、ここの店主は前日までの売れ残りを売ってしまいたいがために、電話で配達を希望した客には売れ残りを正規の値段で持って行くんだな

買う方はその日仕入れた新鮮な野菜を希望するに決まってるけど、その気持ちに応える時とそうでない時がある

ほうれん草は傷みやすいから、すぐに調理せずに部屋に置いておくと、葉の先っぽが萎れてきたり、色が変わったりするよね

買い物をしたこの奥さんも、そんなことは百も承知な筈

だから、かなり前に仕入れたほうれん草をよこしたんじゃないかと文句を言う訳だ

それに対して店主は、客の保管が悪かったんじゃないかと言う

暖房の効いた部屋に置いておいたんじゃないかとね

だが、それにしてもここまで傷むことはまずない

1日半くらい暖かい部屋に置いてあったとしても、夏じゃないんだから、こんなに見た目が変わることはないと思った

だから絶対、何日か前に仕入れた古いほうれん草を配達したに決まってるんだよ

こういうところも商売が下手な証拠なのよ

商店街の中にあるからやって行けているだけの話で、この店だけを目指す人はあまりいないかと

奥さんは正直だし、古い物は値引きしてくれるんだけど、店主は客を騙しても平気な人

ただ、このほうれん草にしても他の野菜にしても、一般の八百屋さんより質の良いものを置く店なので、固定ファンはいなくはない

だがその固定ファンをも平気で騙すから、店主は好かれてはいない

でも天気が悪い日でも配達に応じてくれるので、多少変な物が紛れ込んでいても、みんな我慢してるんだと思う




結果はどうなったかと言うと、主婦の方が折れた

何を言っても通用しないので疲れたのだろうよ

これで、その主婦はこの店から離れる

こういうのの繰り返しなんだな、この店は



在庫のほうれん草を確認した店主、「同じ日に仕入れても、こういうのがたまにあるんだよな」と、傷みが少し進んだほうれん草を俺に見せた

ここまで傷んだ物を在庫として持っているというのがおかしい気がした

早いとこ調理しちゃって、惣菜として売ればいいのにと思うが、そこまでの頭が無い店主

「傷んだ部分は摘まんで捨てて、食べられる所だけ食べなよ」と言って、その傷んだほうれん草を俺にくれた

この店の前には『どこよりも新鮮、葉もの野菜』と書いてある

嘘ばっかり(笑)



そのほうれん草、家に帰ってすぐ調理した

傷み部分は全体の1/3ほど

まともな部分をソテーにしてオヤジと妹に出した

妹は「ほうれん草、久しぶり〜♪」と喜んでいたので、まあ良かったんじゃないかと


だけどまともな値段ではなかなか買えない

トマトだって、このくらいの値段するからね

もう少し安くなってくれるといいのだが…