話題:介護


糞爺夫婦が入所している老人ホームにはひと月からひと月半に1回のペースで面会に行く神田です

会う度に2人共劣化してる

体の機能も弱くなりつつあるけども、一番は頭

爺も奥さんもついに俺が誰だかわからなくなった

顔を見せれば「あ〜♪」と声を上げ、知り合いが来たと認識するようなんだけど、実際どういう関係の者なのかがわからなくなってるんだな

「あんた、兄弟だったかな」なんて爺は言う

奥さんは自分からは何も言わないが、俺が誰だかわかる?と聞いても答えられないでいる

けどまあ、俺がいつも持っていくヤスダヨーグルトとコアラのマーチをバッグから出すとニコニコして手を伸ばしてくるから、誰だかわからないけど、『飲み物とお菓子をくれる人』と認識してるのかも知れないな

もう自分達がどこに居るのかさえもわかってない

何十年も住んだ家の住所も記憶から消えた

極めつけは、爺は奥さんを自分の兄弟と言っていたこと

兄弟だから一緒に居るのだと認識してるような

少し前、「バカになってしまった」と爺は言っていた

だから今回、バカになっちゃったの?と聞いたら「バカとは何だ、失礼な」と答えた

バカになったことを自覚していた頃は辛かったと思う

色んな事を思い出せないもどかしさで頭の中が一杯だっただろう

今はその時期を過ぎて、開けることができる記憶の引き出しを探してる状態かな

そのうち尿意便意を訴えることすら忘れてしまうかもね

そしたらただ生きてるだけになるのかな


このことをボストンにいる爺夫婦の息子に報告した

電話口の向こうで息子は声を失った

国際電話なんだから早口で話せと言いたかったが、事が事だけに時の流れに任せるしかなかった

爺夫婦は子供の存在も忘れている

自分達に子供がいたことを忘れちゃってるんだ

夫婦かどうかもわからないのに、子供が居たかどうかなんてもっとわからないだろう



ただ、話してると少し思い出すこともある

それは子供の頃のこと

子供の頃の記憶は相当昔のことなのに、何故か覚えてるんだね

脳味噌の中身、つまり記憶をつかさどる部分については専門外なので確かなことは言えないが、子供の頃に経験したことは脳に強く刷り込まれるのだろうね

だからその頃の記憶だけは忘れないんじゃないかな

面会はその子供の頃の話を聞いてやることで終わる

大抵笑顔で終われるから



夫婦は一緒に居た方がいいと思って、今の施設は費用が高額だけど思い切って入所させたんだよ

だけど、お互いに夫婦と認識しなくなった今、安い施設に別々に入れてもいいかなと思う

でも安い施設を探すのが大変で、またそういう所は待機者がいるからすぐに入所という訳にはいかない

東京から離れれば何とかなると思うが、今度は面会が大変になるから、どうしようかなってとこ

そのことを考え続けるのが面倒くさいので、もう少し様子を見ようかな、の神田でした