けものジョニーは悩んでいた。
既に深夜の12時をまわり、2月22日……『ねこのひ』当日を迎えていた。
普段ならばフェイトの上で気持ち良く暖をとって寝ている筈のけものジョニーは、あーでもない、こーでもない、コーデがない……と部屋の隅っこで毛布にくるまってごろごろしていた。
「モリュウ領ではゲリラライブさえできないし」
昨年出された『ねこのひ禁止令』はまだしっかりと発令されたままで、出かけた先で不憫そうな目でけものジョニーを見る人までいる。
「訓練とかいって、モリュウ領の中には黒十字の人たちがいっぱいだし……そうだ!!」
ハッ!!と勢い良く頭をあげて浮かんだ極上の考えに、にんまりと笑みを浮かべた。
「シデンに行こう!!」
シデン領ならば、ジョニーとけものフェイトがいるから、路上ライブをするのも楽しそうだし、何より『ねこのひ禁止令』が出ているのはモリュウ領だけ。
ならば他に行ってしまえば、『ねこのひ禁止令』なんて横暴なモノは関係ない。
「ふふふ……これで、たくさん遊べるぜ」
にやにやと笑いながらけものジョニーはシデン領を目指して部屋を抜け出した。
―翌朝―
「いえぇぇぇぇえぇぇぇい!!着いたぜ!!シデン領!!」
朝一番にシデン領に到着するために、けものジョニーは夜通し歩いた。
海底洞窟の中を往復することはよくあるのだが、深夜と言うこともあり、モンスターは活発に動いていたが、ジョニーに習った『ねむれララバイ』で上手く切り抜けてきた。今度は『回れロンド』を習おう!とけものジョニーは胸に違った。
「……けもジョニだ」
「うぉあぁ!!ってけもフェイトか……ビックリさせんなよ」
「すまない。しかし、なぜお前がここにいるんだ?」
「あ?ねこのひだからな」
「ねこ……あぁ」
早朝の散歩に出てきていたけものフェイトと出会ったけものジョニーは、仲良くシデン領の領主の館に向かった。―シデン領・領主の館―
「なるほどなぁ」
「ほんと、フェイトはおーぼーだよな」
用意されていた朝食を頬張りながら、フェイトの事をジョニーに話すけものジョニー。
「って訳で、シデン領でにゃんにゃんライブを開催したいんだ」
「あー、うん、俺はいいと思うぜ」
「だよな!!じゃあさ、けものフェイトと一緒ににゃんにゃんライブをしてくるぜ」
「あー、いや、ほら……それは……マズイだろ?」
「まずい?」
言葉を濁しながら味噌汁を啜るジョニーを小首を傾げて見つめるけものジョニー。
けものフェイトは早々と食べ終わり、食器を台所に運んでいた。
「実はな……」
「シデン領、トウケイ領でも『ねこのひ禁止令』を出したからな」
「にゃ、にゃんだって!!」
玄関から入ってきたフェイトは、開口一番にそう言ってから、アルツールやその奥方に頭をさげる。
「そ……そんにゃ……ひ、酷い……酷すぎる」
「お、落ち込むな、な。あ!ほら、明日にさ、いっしょに路上ライブしようぜ、な」
「甘やかすな」
けものジョニーは地面に頭をつけて、うちひしがれており、それを必死にジョニーが慰めている。が、それに厳しい言葉をかけるフェイトの表情は冷たいものだった。
「う……うぇぇぇぇぇぇぇぇ、最近のフェイトは冷たい!!鬼!鬼畜ぅぅぅ!!」
「けもジョニ、飼い主に対して失礼だぞ」
「けも……フェイト、まで……」
「追い討ちかけんなって」
-完-