螺旋状に突っ走って死にたいプロフィール
2018/10/9 Tue 07:16
飛べないウサギが孵化したって


話題:自作小説


光の眩しさをもってしても、彼を起こすのには不十分である。彼の身体から伸びている管という管。
それらは彼を生かすために機能するが、彼の瞼をこじ開ける力はない。

彼は生きている、彼は生きている、それでも生きている。
生の定義は曖昧で、彼に意思はないとしても、彼は生きている。

そう主張した医者が昨日の今頃自殺した。


質問してもいいだろうか。
ウサギは空を飛べるか?
一羽、二羽、三羽と数えられても、羽はない。
孵化もできない。

ウサギを飛ばせば何が変わる?


働かない電気ネズミの歌をうたう吟遊詩人は、決して世界を許しはしない。
その怨念は道行く人達を侵食し、ありったけの悪意が電波に乗って快速急行で目的地へ向かう。

ボタン一つで意思表示ができるご時世。何も良くないくせに。

変容した自意識の撒き散らしは、便利なツールで簡単に可能。
不快なら見るなと叫ぶたびに、胸に刺さる虚しさを共有したくともできない。

ウサギは飛ばない、ウサギは飛べない。卵は産めない、孵化できない。

あなた達は変わらない。また同じことを、違うフリしてこなすだけ。

たとえ孵化しても。


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