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エムブロは不具合が直ったようですが

みんなー!
聞いてー!

前歯、打撲した!






いやー、びびったよね。

私、梅干しが好きってーか好き超えて愛ってーか愛超えて食べちゃうもんだから、
稀にね、ガリっといっちゃうことがあるのよ。
でもこれまでは「タネあり梅干し」として注意して食べてたから大丈夫だったんだけど、
今回はね、「タネなし」を前提に食べてたもんだから、歯の言い分としてはごもっとも。
「いやいや、聞いてねーっすよ」みたいな。

そんな背景がありまして、歯医者に行って診てもらったら、歯科で聞いたことのない診断名よ。打撲。
ヴァイオレンスかよ。

「もうちょっと酷かったら脱臼でした」
とか言われてもね、分からない。
手足に置き換えたんだろうけどより分からない。

とりあえず数週間は安静に。前歯使わずに。
ということになって、
食事の取り方をね、教わったんですよ。

前歯は使わず、奥歯で噛むこと。
そのためには、最初に奥歯で噛める量をちぎってから奥歯に押し込め、と。
パンはあまりお勧めしませんと。
逆マリーアントワネット。

私もね、前歯を守りたいから言いつけを守りましたよ。
ちぎって奥へ、ちぎって奥へ。
でも人間って凄いですよね。学習するんです。
「奥に入れればいいんだよな」って。
あとちぎるの面倒くさいってのも正直な感想でした。

最初はおにぎりとかを丁寧にちぎって奥に入れてたのよ。
でも大体3日目くらいから一口サイズにするか、丸めたよね。
口の中に放り投げられるように。
お箸も怖いからオール手投げ。ピッチャー。

気持ちですか?ほぼ宇宙飛行士(宇宙食)です。

一口サイズを瞬時に奥に入れるので匂いを感じる暇もないんですよ。空間移動的に。
だからその時に一番美味しかったのは水。
味も匂いも何も無くイメージと直結する安心感。
明日壺を買わされそうになっても「だったら水でいいや」くらいには安心。


まだ治ってないので、もうしばらくヴァイオレンスと逆マリーアントワネットと宇宙飛行士の気持ちを緩められなそう。


だからね、みんなほんと歯の打撲には気をつけて。(脱臼も。)

私の体のファーストレディ

テステス....
テステステス.....

.........

大丈夫?繋がってる?

ここだけまだ、まだまだ未だ
依然として平成なんてことない?







っっぶねーーー
ほんと、ちょっと目を離した隙に令和。


「トイレいってくるー」
なんて軽く席離したら元号変わってるから。
ランチタイムからディナータイムへ、くらいの華麗なる変身。バタフライからの背泳ぎからの平泳ぎ。国を挙げてのメドレー。
こちとら27年間個人競技だっていうのに。


でもね、正直新たな元号とかコロナとか全然消化が追いつかないわけです。
最近やっとぴえんって言葉を覚えたばっかなわけよ。
ぴえん超えてぱおんとかね。差が分からない。
己の髪が伸びたのかどうかがかろうじて分かるぐらいなのに。脳が忙しい。


そんなこんなで令和がレッツスターティンしてから、
内視鏡検査的なものを受ける機会があってね。事前検査もあるんで数日かかるから、週末使ってやりましょうと。

これまで人様に見せたことのない食道からの体内を、ついに披露する時がきたわけですよ。

少し見方を変えれば、初夜です。
27歳女子。独身。満を持しての内視鏡。




んでまあ、施術にあたり点滴を要したんだけど、


あたし、血管があまり見当たらないらしくて、
看護師さんがまじまじと見るんだけどさ、
探せど探せど辿り着けなくて。

三千里訪ねてくれても、一向にない。
ないっていうか、見えない。
もうね、ウォーリーかよって。

ちなみに、腕の折れ曲がるところにならあるっぽかったんだけどさ、

そこに打つイコール
常に腕をぴーんとしてなきゃいけないのよね。
平時でさえちょっとは折れてんのに。
それはさ、しんどいよねってことでそこを避けてのルート探し、血管尋ねて三千里になったわけなんだけど、


ほんともう、腕を伸ばしたり叩いたり光当てたりあの手この手で見つけようとするも、皆無。

疎開した?ってくらい綺麗にね、気配がない。
多分血管もソーシャルディスタンス保ってたんだと思う。
小池さんに密を避けろと言われてたもんだから、自粛自粛ー!っつって。


最初に担当した看護師さんが自分じゃダメだー
って代わりの人を呼んできて、
その人もダメだーっ
て代わりの人を呼んで、
その人もダメだーっ

ってのを5回くらい繰り返して、
最終的に最初の人に戻っちゃって。

皆さん「あちゃー!」みたいに退散していくけど、担当さんからしたら全然笑えなかったと思う。
それなのに終始優しさで溢れてて、
きっと前世はマザーテレサ。きっとテレサ。
マリオに出てこない方のテレサ。

あたしだったら
え?お前まだ針入ってねーの?
何してんの?肌が鎖国なの?
って絶対思う。7回くらい思う。

ていうかさすがに3人目くらいから多分あだ名ついてたと思う。
逃走中、とか。
あいつの血管まじ追えない。まじ逃げる。って。
番組だったら賞金王ですよほんと。


そんで、
どーにもこーにもお手上げだからってんで、
しかも週末で休みで人も少ないっていう状況も相まって、

先生を呼ぼうってなったわけなのね。
内科医の方を。

「滅多なことじゃないと呼べないんですけど呼びますね。ほんと滅多なことじゃないと怖くてあれなんですけど。」

って、


ええええ

いいの?
先生を召喚する理由が逃走中のあたしの血管でいいの?
ほんとただの恥ずかしがり屋の血管なだけなんだけど、

吐血とかした方がよかったりする?
別な理由も添えた方がいい?
だって社長がテレアポするみたいなもんじゃない??

なんてちょっとそわそわしつつも、
まぁまぁパパッとぶっ刺してもらおうとね、大人しく来てくれた先生に身も心も預けてたんです。
軽くトイレ行きたいなーなんて思いながら。


で、滅多なことじゃ呼べない先生がきてくれたわけなんですけど、






もーーーね、
待てど暮らせど針と血管が巡り合わないの。
もしかして未来で待ってない?くらい落ち合えない。
時かけてない?
まことー。って。

先生も4回目辺りから「なんでだろう?」って疑問持ち始めちゃったしで、負けられない戦いムード全開。

もう誰か第三者を悪者にしたくて

「ほんっとこの血管の野郎がねー
悪いですよねー苦笑」って

2人の間の雰囲気を和ませようと必死で血管をdisってみたけど、
主あたしじゃんよー。
笑えねー。


それでも何回か惜しい時があって、
血管には刺さるんだけど血が返ってこないとか、
刺さったし返ってもくるけど痛いとか、
思わせぶりが半端ない。
夜の蝶かな?って振る舞いを、医療の現場で出してきやがる。


かれこれ40分くらい経った辺りかな。
先生も疲れてきてるけど、あたしの両腕も上腕から手首にかけていい感じなくたびれ方になってきて
全国公演最終日のドラマーみたいな焦燥感、よく出てたと思う。


したら先生がちょっと待っててくださいねってどっか行ったのね。
まあこんだけミスれば道具も減るわなーって思って待ってたんだけど、

帰ってくる先生の足音にプラスして聞こえるのよね、ガーラガーラって。


そんなゴツい音する器具台ございましたっけ?



お待たせしましたー

って帰ってきた先生の横に、まさかのエコー。
あの腹部とか見る時のエコー。


え?あたし点滴の針刺してもらってるんだよね?って2秒くらい真剣に考えた。
もしかして知らぬ間に違う処置になってない?って。

いやね、エコー自体は健康診断の時とか何度もお世話になってるから見慣れてはいるんだけども、それは婦人科とか腹部の検査の場合であって、注射打つ場面で出くわしたことはないのよ。
気軽にうどん食べたいって言ったら製麺から始めてくれたくらいの展開。気合が違う。


そんでいつも通り(?)エコーにジェル塗って、腕を見てもらってね。
あたしも一緒に画面見ながら、
「あ、ここにいますねー。元気なのがいます。」
「ほんとですか?真ん中のですか?」って。


なんだろう、
会話的には完全に胎児を確認する医者と妊婦。

大丈夫?それ使い方合ってる?




かれこれ針を刺し始めてから1時間弱。

もうそろ、もうそろキメないといけない。
みたいな雰囲気が2人の間に漂い始めてる。
なんならエコー出してきた手前、先生も後がない。
あたしの腕も腕で刺せる箇所が残り本当にない。

最初看護師さんが冗談で
「足も見る限りあんまないので、最悪首からですかね(苦笑)」

って発言が現実になってしまう。





さすがに、さすがに首は嫌だ。


首に刺されることが嫌というよりも、
そこまでしなきゃいけない手のかかる体ということが嫌だ。

まあもう、大分手はかかってるんだけどさ。
わがままボディかよって。



メンタル的にも物理的にもスリーアウト満塁。ケンシロウから言わせればお前はもう死んでいる状態。



先生がエコー当てながら

「いきます」

ってアムロみたいに言った。
キメようとしてきてる。



あたしもその気合にお応えしなきゃいけないと思ってね。

血管頼むぞーっ。って。
逃げんなよー空気読めよーまじで。
そろそろトイレ行かせろー。
もう膀胱ばっか空気読んでるからーって。

はたらく細胞があたしの体で実写化されたら間違いなくパワハラだと訴えるくらいには、圧かけた。


最後の勝負に選んだのは、左腕。
エコー見ながら先生が凄く褒めてた血管。
なんならそこしか褒められる血管がなかったと言っても過言ではないけど。

まさに、祈りながらって表現がぴったりだったと思う。
気のせいかな、先生、少し呼吸がラマーズ法っぽくなってた。

どんだけ刺されても慣れない、
チクッとした痛みのあと、

先生がこれまで見たこともないようなテンションで
 

先「っっ..きた!!!!!」


?!

キターーー!!
キタっぽいーーー!

先「これは逃せない!力抜いてください。
これは大丈夫だ!痛くないですか?
これはいける!」


って、歓喜と冷静な確認をテンポよく繰り返す先生に、大縄に入るみたいにタイミング図りつつ、

「はい!大丈夫です!はい!」

って元気よく応えた。
思い返すと、7割ぐらいトイレ行けるって嬉しさ混じってたと思う。




開始から1時間弱



お互い
「お疲れ様でした。本当に。」


と、倒置法を織り交ぜながら挨拶し、
先生は本来の居場所に戻っていった。
あの疲れきった背中は向こう3年くらい忘れないと思う。




終わった。

長い戦いが終わった。

体は正直っていうくせに、全然正直じゃない。
ひん曲がってる。知恵の輪くらいひん曲がってる。








そんなこんなでようやっとトイレにも行けてめでたしめでたしー
って思ってたんだけど、
その後看護師さんやお医者さんの間で

「エコー出してまでとった血管だから絶対ルート殺すな」
ってお達しが出てたみたいで、





「もう、できれば動かさず、大事に。
できれば伸ばして、」




「あとほんと、できれば、
点滴が終わるまでご無事に。。」




って、左腕をドラクエのいのちだいじにって作戦くらい丁寧に扱ってくれたので、
今度から一番だいじなものは?って質問には
左腕って答えようと思います。

歩調を合わせてからが2018年!

2018年2018年言ってますが、
今回の、2018年の成長具合がヤバい。

12月31日、「大晦日!大晦日!」ってはしゃいでて、
ちょこっと日本酒飲んで、
まだ22時だったので、
ちょこっと仮眠しようかなー!


と思って起きたら、
既に2018年から数時間経ってた。

あれれれれーー??って。
コナンくんぐらいわかり易く驚いてみたけど、

早い。2018年の登場の仕方が、
高度成長期ぐらい目まぐるしい。

こちらとしては、
まだ全然2018年に突入する準備が出来ていないというか、
なんなら風呂も入ってなければ着衣も2017年のまま、ヨネスケっぽく2018年が来やがったわけです。

でも待って待って、
そもそも、365日も生きましたっけ??
って聞かれると、ちょっと怪しい。

まだ2017年のライフポイント残ってる気がする。

っていうのもですね、





2017年のね、夏真っ盛りと言われる夏にね、
仕事帰りでよっこらよっこら坂を登りまして帰路についたとある日、
もういち早くお風呂に入りたくて入りたくてね。


疲れと汗を、なんなの?ディメンターなの?
ってくらいの勢いで吸い取った服を、
キューティーハニー並の速さで脱ぎ捨てた。
インナーとブラを一気に脱ぎ捨てた時は、
一瞬ハニーフラッシュが炸裂するかと思ったよね。

それくらいね、すぐにお風呂に入りたかった。

で、ものの見事にスッポンポンなわけ。
マンモスとか食べそうな時代っぽく。
石器時代って名を人生で語れるとしたら、
あの瞬間がピークでした。

こんなに丸腰って言葉が似合うの、
ナメクジかあたしかっつー。
生まれたての赤ちゃんだって颯爽と看護師さん達が毛布でくるんでくれるっていうのに。

それでも現代人のプライドっていうか、
タオルを浴室に持っていこうとタンスをごそごそ探したんだけど、


もう全然、現役のタオルが見当たらなくて、


おめぇ、最後に仕事したのいつ?

みたいなハンカチしか出てこないの。
既に定年迎えましたみたいな。


っていうのも、あたしんち、結構タオルの守りが堅くて、
マヌエル・ノイアーでもいるのかなと錯覚するくらい、
ちょっとやそっと使っただけでは無くならないんですが、
その守りにあぐらをかいて、
1ヶ月くらいタオル洗ってなかった。

暑さが引きこもりに拍車をかけて、
プライペートな外出をしない分、ずっと出勤時のスーツだけおしゃれ洗いしてたけど、
まぁ、気づいてた。
未洗いのタオル勢、山の如しって現実には。

ホテルで用意されてるような、洗剤のCMに出てきそうな外向けのタオルも何枚かあったんだけど、
ここぞとばかりに使いまして、タオルっつータオルの、ライフ0。
夏場っつーか、もはや山場。

なんとなく夏のテンションで、なんとかなるっしょっ!
って気楽に考えてたのが悪かったんだと思う。
なんってーか、織姫と彦星も年1の頻度で上手くやれてっから。ヨユーヨユーってね。

現実は、ドラクエだったら所持金なくて、皆棺桶って場面。
あんなに心強かった仲間(タオル)が一転して、
なんなの?なにしてたの?屍なの?みたいな目で見てくる。

でも、スッポンポンっていう、
もうお風呂入る気満々って意気込みがどの角度から見ても伝わるこの状況において、
今から洗濯する気なんて全く起きませんし、
かと言って定年後のハンカチを取り出す勇気もちょっと足りない。


だってそのハンカチね、
折りたたんでるの拡げようとしたら、

パリッ っていったからね。

絶対めっちゃ汗かいてるけど、あたしのが綺麗。
最近階段登る時、膝ら辺パキッ っていうけど、
いい勝負だとしても多分きっと勝ってる。



でも、さすがにタオルなくして風呂は入れないんじゃない?
手やら足やら振り回して水気を飛ばすのも、
なんかちょっと怖い。お祓いみたい。
勢い余って塩とかね、撒いちゃいそう。

って思ってたんだけど、あまりにお風呂入りたくて、
なんかもう、いいかなって。

戒めのために水気が乾くまで生まれたての姿でいるのも悪くないかなって、
子鹿だって産まれた直後に「立つ」っていう試練与えられるわけだし。

と、ふと部屋の隅に視線を落とした時、



あった!

タオルあった!!

出会っちゃった!!!

高揚を隠しきれずにデューク更家みたいなウォークで近づいてね!
これこれ!タオル!水気を取る感じのこれー!!




って、というより、まぁ、

タオルって言っちゃうとちょっとおこがましくて、
ハンカチにちょっと毛が生えた感じの割と大きめな生地っていうか、
会社の人からお土産でもらった日本酒に巻いてあるやつで、


いえばまぁ、名も無き布なんですけどね。


お遊戯会でいえば友人Bが持ってる木の枝的な位置。

渋めのデザインが良さげだったので、
さっと手洗いして軽く干してたこの布が、
ここにきて主役級にクローズアップされてる。
ノーマークだった布がまさかのメインキャラ。

ちょっとね、一瞬躊躇った。
布かー、、って。

でもね?

「ラスボス(風呂に)いる部屋にはいりたかったら、俺をもっと活かしてみ?」って雰囲気出してる。
「欲しいんだろ?俺が。」っつって。

オーケーオーケーっ。
乗ってやろうじゃんよ。って、
おもむろに窓を開け放してちゃちゃっと取ろうと思った瞬間ですよ、




このタイミングで入ってきたまさかの、蝉。




数週間のうちにメスとイイ感じにならないと、
地中での生活がマジ卍っていう、蝉。ご来宅。



まじで?



こんなにも自由度の高い空の世界で、
おめぇ、、なんでこの窓選んじゃった??
晩御飯時に突撃訪問する時にはせめてインターホンは鳴らそうってヨネスケに教わらなかった?

こちとらスッポンポンっていう状況を加味して、
割と控えめに若干腕が出るくらいの開閉度でしたし、20代も後半に入りたてですから、昨年よりも大目に恥じらいも出してたつもり。

ここにきて蝉の積極性を、恥じらいが逆に刺激するとはなー。



もう飛び込んできた瞬間、
あたしの顔の横をシュバっと通り過ぎた瞬間、
貴乃花の物真似する日村かな?ってくらい顎引きながら
「っっっめい‥‥!!!!」って、上体を後方に反らしながら咄嗟のイナバウアーで回避したわけですが、

まじで人って、状況が飲み込めない恐怖に出くわすと、声、出ないから。

「キャー!!」とか、女子っぽい美しいハーモニー奏でてらんないわけよ。音域がせめぇ。

なによりも喉より先に手足が機敏に動いて、取り敢えず防御。
上と下の大事な部分、取り敢えず防御。


この一人暮らしの女子の家に半ば強引に訪問してきたにも関わらず、

「無事、着陸。」

みないにすましてるからね、
こちらも片膝立ちで大事な部分隠しながら、臨戦態勢。
いつ火蓋を切って落とされてもおかしくない状況。



でもね、

まーまーまー、1回状況を整理しようぜ。


そちら、夏の風物詩かなんか知らないけど、見て。
こちらをまじまじと見て。


全裸なの。
今まさに風呂に入らんとしてるの。

んでさ、ここはお互いに平和にいこうよーって。
はいはい羽休めがすんだならさぁさぁ飛び立て飛び立てーー。大空を飛び交えーって、
三三七拍子で手拍子をして促してたんだけど、



あいつの羽音のが全然、手拍子よりでけぇ。
そしてめっちゃ飛び交ってる。
家の中めっちゃ飛び交ってる。

しかもさ、蝉ってね、割とデカイ。

ボディビルダー並みの胸筋。大空を飛び交う羽。
尚且つ、見事なまでのシックスパック。
そのくせピアニストを匂わせる繊細な腕、指。
あとね、体に似合わず落ち着きがない。

正直、申し訳ないけどちょっと怖い。


せっかく孵化して出れたシャバ(地上)を楽しもうと、あっちこっち行ったり来たりするもんだから、
こちらとしても全く気が抜けない。
同点ツーアウトで、俊足プレーヤーがサードホームから常に「リーリーリー」って言ってるくらいの緊張感。
オペ中だったら餅つきのリズムで、助手が手早く汗拭いてくる賑やかさ。


もう、あまりに元気よく家の中を飛び交うもんで、
ちょっとした家宅捜査みたいになっちゃって、
あたしもあたしで「そこはダメ!!」とか初めて彼氏を家に連れてきた彼女みたいな動揺の仕方でね。
その辺に置いてあった海鮮丼屋の出前のチラシで追いかけ回したんだけど、

出る気配、無し。
ところどころであいつ小休憩入れてっしね。

でもあたしも、風呂入るってミッション抱えてるから、めっちゃ誘導した。

日本に来たの初めてっていう外国人に、
凄くわかり易く道を伝えるみたいにね。
身振り手振り交えつつ、なんなら自分で1回外に出る真似してみたり。

こっちだよーって。
ここから向こうが外だよーって。



もうね、挙句の果てに電気の上とかにとまっちゃって、
数年間見て見ぬ振りをしてた誇りをね、
季節外れの雪のように落としてきたり、

時々姿消して、強制かくれんぼさせられるわけ。
ずるくない?高いとこに隠れられるその羽ずるくない?


その間ね、着々とあたしの体温は下がってるわけですよ。
サーモグラフィーで言えば黄色から紫になりかかってる。

夏といえど、そろそろ寒い。
あいつとの戦いで出た汗も息付く間もなく冷める冷める。


なので、決意した。

これは刺し違えてでも刺し違えてでも刺し違えてでも刺し違えてでも、、、一戦交えようと。


一瞬たりとも目を離さず、足の感覚だけでキンチョールのあるところまで移動した後に、
電気の上にいるあいつに近づこうと、
テーブルの上に登った。
左手にはキンチョールの蓋。
右手にはキンチョール本体。
そのうえ全裸。

しかも電気の下ですから、
いい感じで光に裸体が照らされてる。
ちょっと絵画っぽい仕上がり。ルーベンス的な。
フランダースの犬だったらネロがあたし見て感動する場面なんじゃないの??


で、少しだけ、ほんと少し、お気持ちばかりを「プシュッ」ってかけてみた。

正確に言うと、ちょっと狙いを外して驚かせて外に出てってもらおうって魂胆でかけてみたけど、

いやまぁ、ちょっと予想してた。
案の定ね、怒りに触れたみたいで、
怒りの羽ばたき方が半端ない。
ヘリの着陸みたいな迫力がね、部屋中にひしひしと伝わってくる。

笑顔で話してたヤクザに誤ってタメ語で話したらいきなりチャカ構えてきた感じで、部屋中飛び交う飛び交う。

その間のあたしっつったら、
「おっとっと」っとかってお菓子の名称唱えつつ余裕こきながら、
身近にあったうちわで腰引き気味に応戦の姿勢を見せるも、心の中では白旗。

もうほんと、マジ卍。

咄嗟にね、友人へのプレゼントを買った時の高島屋の袋があったのでね、
これだ、、!って、

本当は袋ごとあげようと思ったら、
「あっ!こっちの袋に入るじゃ〜ん!」って、
他の人のプレゼントに文字通り丸め込まれたんだけど。

「えっ、、っと、あ、効率的〜!」って、
変な褒め方になったのは、今となってはほろ苦い過去ですね。



んでまぁ、その丸め込まれなかった袋で捉えようと、
西部劇並みにお互い睨み合いながら、先方の出方に注目。
室内なのに砂埃でも立ちそうな勢い。
掃除を怠ったせいでか、砂と誇り、どちらも兼ね備えてるからねーこの部屋。


あいつのサイズに合わせて、腰を低く落とし、ジリジリと詰め寄る様ったら、まるで夏場所。
日馬富士もびっくりの構え方。

結構重度のドライアイかつ、眼精疲労持ちのあたしとしては、瞬きを封じ込めるの、頑張ったと思う。
ちょっと涙出そうだったもん。ウミガメの産卵を思わせるくらいに。

で、
一瞬、あいつが少し横を向いた瞬間、その一瞬を見逃さなかった。

「今!!!」

渾身の力を込めて、あいつに被せた!

やった、、!

捕獲、、!!!

よくやったあたし!さぁそれを!早く!下界へ!!



って、頭では分かってるんだけど、
なんせ床で捕らえたものなのでね。
そんな機敏に動けないの。体は正直ってやつ。

床で捕らえて、そこから四方をビシッと手で抑えながら、スッポンポンのまま窓にスライドする様は、どこから見ても蟹みたいでしたね。ええ。
なんせ袋の中で「ジー!ジ、ジー!!」って暴れてるので、一瞬たりとも気を許せませんから。

で、四苦八苦しながら、見事に窓の外に逃がして、


終わった、、

勝った、、、!!


もうようやっと風呂に入れるーと、
ベランダで一息ついた後、

よっぽど居心地が良かったのか、
逃がしたあいつが「ジジジッ!」って舞い戻ってきて、
網戸にガッシリしがみついてきた時は、
咄嗟にブルース・リーのヌンチャク並の手の動きで網戸越しに威嚇したよね。

手、絡まるかと思った。


いやもうほんと、「ちょ待てよ」
みたいな背後からのアクションしていいのキムタクだけだからなまじで。木村と拓也じゃなくてキムタクだけだからなほんと。

って感じで戦いを終えまして、
ようやっとお風呂に入り、その後数ヶ月、
いつも通り過ごてたんですけど、


2017年、師走。
先日ですね。ええ。


えっと、

実を言うとあの日、捕獲に使った高島屋の袋の中に、友人にしたためたレターが入ってたのね。
プレゼントと一緒に渡そーって。

でもその日、渡すの忘れて、
後日、友人が見てるその場で改めてしたためました。
見られてるなら書くより言った方が早くない??と若干疑問に思いながら。



で、先日です。
洗濯物を干してた時に、蝉を逃がした時の高島屋の袋が、クーラーの室外機の後ろからですね、
紙袋とは思えない生命力とともにベランダ脇から、
カサカサ、って申し訳無さげに、擬音と共に出てきた。
あの死闘を繰り広げた袋が。

蝉事件の後、なんとなくもうあたしの中では過去のことになってたので袋の回収とかね、しなかったんですね。
窓開けたらまた来るかもしれないしなーって。
しかも室外機の裏っぽいところに入ってったしなーって。
引っ越す時でいいかーって。
引っ越す予定ないけど。


で、
結構、袋の中のレター的にも、まだまだいける、読める、みたいに現役感出てきたので、
一応、友人に一部始終包み隠さず事情を話しつつ、
「この前あげた手紙と、内容変わらないんだけどねー!」って
でもちょっと受け取って欲しさを醸し出しながら、
おずおずと出してみたんだけど、

「あ!じゃあ大丈夫!」

って、フィギュアスケート並みの華麗さで断られたから、
2017年も華麗に滑って、終わった!!


ってことで今いくよ!2018年!!

お疲れなみんな、お疲れ!

日本中のお疲れな皆さん!お疲れ!
その中でも電車が通勤手段の皆さん!お疲れ!
その中でも不意を突かれてカップルに挟まれちゃった拙者!お疲れ!


やれマックが新商品で生姜焼きを挟んだヤッキーだとか出してる中ですね、
世の課長が部長と係長の板挟みに悩んでる中ですね、
便乗したつもりもないのに、挟まれました。
気づいたらカップルに電車で。


あたし横浜から20分くらいのとこに住んでるんですけど、
いつもなら座れない横浜ですぐ座れまして、
こりゃラッキー!うひひ!と思いながら座ったわけです。
少しスマホに気を取られながら。
言うとWeb漫画に気を取られながら。

したら電車でよくある、
離れてるけど空いてるから別々に座りましょう的なやり取りが目の前で行われていた
ことに、

挟まれる二秒前に気が付きまして、




もうここでまず遅いの。







もっと早く気づけば、あたしがちょちょいと一つ隣に移動し、カップルをカップルとして隣に座らせ、
カップルが漂わせる雰囲気を傍から見守り、
「暑いな今日は。ふふ。」
なんて思いながら帰路につくわけですよ。
甘酸っぺーなって。


それがね、

EXILEがステージで各人のポジションにつくように、
流れるような速さで両隣、着席。
あたしもポジションで言えばセンターを思わせるんですけど、
気持ちはまだEXILEのオーディションにエントリーするかしないかで葛藤するくらい
の、弱さっぷり。



将棋で言えば斜めの角がくるかとおもいきや、歩。
オセロで言えば知らぬ間に黒に角取られてて、1列白。って感じですよ。




完璧に避けるタイミングを逃した。
定時間際に繰り出される打ち合わせくらいの逃げ場の無さ。


えっと、あたし全然この席じゃないと駄目とかなくて、
さっきはたまたま、たまたまWeb漫画読んでて、
主人公がヒロインと一線超えるかどうかみたいな盛り上がりだったから、
夢中になっちゃっただけで、
なんなら座席に限らず、ケツを支えてくれるならなんでもいいっていうか、

あと、空気っつーのも人並には読めるし、
ラーメン屋では麺硬め味濃いめでお願いしたいところを、混んでると麺硬めまでにしとこうと。
茹で時間の短縮にもなるしね!

コンビニで炭酸水とおにぎり2個買ったのに、「袋に入れますか?」って聞かれても、表情一つ変えずに「是非お願いします」って返しますよ。
そこは店員さんとの間柄を壊さないために空気読んで。


入れて欲しいよ!そりゃ入れてほしいよ!
そのままお店から出ちゃったら堂々とした泥棒か
店員に嫌われて入れてもらえなかった可哀想な人か
自らエコロジーを選択した変な人じゃん!

全部嫌だ!!


でね、

あたしがあなたたちを遮ってるっぽいって分かってる。
応援側だよー味方だよー。
交換するよー席。ズレるよー右でも左でも。



でもこのカップル、結構TPOがしっかりしてるお二方でして、
きっと近くのコンビニとTUTAYAでもちゃんと服装変えるタイプ。
あたしなんてコンビニも一駅隣の歯医者も部屋着で行くのに。



控えめなコミュニケーションで収めてくれてる分、
逆に立ちづらい譲りづらい動きづらい。

やや前屈みで座るあたしの頭の後ろ越しで、
アイコンタクトを取ってるカップルへの、遅ればせながらの気遣いで、
あたしが突然、「交換します?席」なんてどちらかに言っても、
「っえ」みたいな微妙な空気が流れると思うんですね。

その前にライオンハートという名の繊細なハートで生きてますから、
控えめなスキンシップくらいじゃ声かけらんないですよ。
もっとこう、ラテン系くらい激しくいちゃついてくれないとっていうか、
サンシャイン池崎くらいの勢いを所望するっていうかね。



今ならクッパにでもさらわれたい。
割とさらわれたい。
あーんいでよクッパー。



あたしの悲痛な思いを知ってか知らずか、
クッパじゃないけどわりと救世主が、きた。





いける、と。
これ以上ない理由だ、と。

席を譲ってあげるべき人。
ごく自然な離席を叶えられる人!!
(まぁ普通に65歳くらいのおばあちゃんなんですけど。)


おばちゃんが視界に入った瞬間に確信した。
誰も傷つかない傷つけたくない出来ればあたしも無事でいたい
って欲求を全てを満たしている。

ここであたしが笑顔で「どうぞー!」って言って!紳出して!なけなしだけど出し
て!
おばあちゃんが「あらいいのよ。すぐに降りるのよ。」って一回ジャブかわして!
それでもあたしが「いえいえ一駅だけでも!」って強めに紳士出して!なけなし全部
出して!
したらおばあちゃん観念して「そう?それじゃありがとうね(にこ)」って言ってくる
から!!
立ち上がってくるっとおばあちゃんと軽くワルツした後に、少しズレた位置に立つ。



完璧だ。完璧なシナリオ。
この計画で大事なのは折れない心。

そこまでのご高齢じゃない場合、
大抵1、2回は遠慮されること、
席を譲ったことがある人であれば、容易に想定が出来る。

たまに忘れそうですけどあたしも営業って職業ですから、
遠慮する人の気持ちとかね、強引さが必要な時とかね、
嫌よ嫌よも好きのうちってね、
なんとなく分かる、気がする。

だからこそ折れちゃいけない。
少し気を引き締めて、3回は遠慮する人だって想定しておけば、
いける。この計画は確実にいける。

グッバイ前傾姿勢!ハローつり革!!



あたしはもう一言目の「どうぞ」をすごいタイミング良く言おうっておばあちゃんが
あたしの付近を通る時にすごいタイミング良く言おうってちょっと少し立ち上がり気
味に言おうってタイミング良く言おうってタイミングが大事だって思ってもうこれは
タイミングの問題だって思って



(きた...!)

(いまだ!!!!)



「どうぞ!」

「あらあらいいのよいいのよ」

「いえいえどうぞ!!」

「いいのよ大丈夫よ」

「降りるんであたし降りるんで!!」

「本当に大丈夫よ、ありがとうね」

「大丈夫ですよ!座ってください!」

「立ってるの好きなのよ」









...うっそーん




みんな〜!
世の中のおばあちゃんが、
皆座りたいって、思ってない?

じゃあ、質問です。

素敵な服を着たモデルさんが、
ファッションショーの場で座っても良いよと言われて、
座ると思いますか?


座らない。立ちたいの。





いやいや待って。あたし折れたわけではないけど、

ちょっと想定よりは断られたけど。

なんならお互い譲り合い過ぎて、
その座席がなんか嫌われ者っぽくなったけど。

おばあちゃんがね、悪いからとか遠慮とか、
そういう気持ちで断ってくるならね、
あたしにも勝機は、あった。8割くらいで確信してた。

まさか「希望」が返ってくると思わなくて、
こんなに輝かしい2文字なのにどうして目頭が熱くなるのかしら。


立ちたい。って、

立てる。じゃなくて立ちたい。って、

したらもう、あたしに残されたカードなんて2枚しかないわけです。

「座り直す」or「ちょっと降りる」

そりゃあもう「あ...そうですか!(にこ)」
って、
「じゃあすいません座りますね!(てへへ)」って、
座るしかないじゃない。









今でも日本のどこかでブルゾンちえみが、
2人のマッチョの足に座っているかもしれないのに、
あたしはしょっと嫌われ者っぽくなった座席に座り直すしかなくてね、
おばあちゃん凛々しく立ってるから。



まぁその後もカップルの慎ましやかだけれども、
時折あたしの頭を挟んで会話をしたり、
LINEでやり取りしてるのか、
ふふって頬を赤らめ合うシーンとかですね。

キリンかな?ってくらいの視野の広さで見てましたから。
Web漫画見てるふりして。








もし今ここでもし救世主のバーガーが現れて、

「おめーなーに熱々のパティ共に挟まれてクォーターパウンダーチーズしてんだよ。
レタス。」

「フレッシュが売りのグリーンが、あいつらのお熱で台無しじゃあねぇか。」

「こいよ。パティも一人ならチーズなんて洒落たもんもねぇが、バンズが上と下にあ
りゃあ、
 やってけるさ。俺とお前なら。」


なんて優しく肩抱かれたら一夜を共にしちゃうかもしれない。
シングルベッドでキツく抱きしめちゃうかもしれない。



なんてこと考えてたら、最寄りについたので
颯爽と降りました。


日本はっていうか
あたしの付近はまだまだ寒いなって思いながら。

名言への共感は時と場合によりましてね。

「自分の力じゃどうにもならないことがあるから、人生面白いんじゃないの。」



っていう、最近同じ人に三回続けて失恋した先輩の、深そうで特に意味は無い発言に、
まさか意味を見出すことになるとは思いませんでした。



仕事で都内に行くことが多く、
移動手段が基本電車なんだけれどね、
やっぱり日によっては朝早かったり夜遅かったりするわけです。

昼間ならユーザー数が多い電車でも、
そこまでの乗車率でなく、吊革掴めるし、
なんなら運がよければ座れて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん!
なんて感じで嬉しい時もあるんですけどね。
飛び出ませんけど。

問題なのが通勤帰宅ラッシュに、
乗車率300%の電車に乗らなきゃいけない時ですよ。

いやいや、人飛び出とるやん。

てな電車でもいざ踏み込まなきゃいけない時ですよ。

もう体の様々な可動部分をフルに使って、
こう、自分の位置を確保しながら乗るじゃないですか、身動きは取れないけど安全な位置ってとこを。
多少膝曲がってるけど、、いける!!みたいな。

(余談ですが昔埼玉から横浜まで、
乗車率300%の中をS字になって1時間乗り続けた時は骨盤が一揆起こすかと思いましたね。)



先日、通勤ラッシュの電車で出社しようとした時のことです。



やっぱりドアが開く度に人がびよ〜ん、て飛び出るくらいの乗車率の電車に乗ったんですけど、

いや〜、あたしとしたことが油断したよね!
もうまさに一本とられた〜!
こ〜いつ〜(ツンっ)♪

って感じで、



乗り込む時にめっさ両腕持ってかれて、
というか持ってこれなくて、
両腕が後ろにいっちゃって、
お縄された犯人みたいになっちゃいましてね、
犬夜叉の走ってる時っぽい格好なの。
こう、なんか前傾で。
待ってろかごめ!的な必死な感じ、
結構良く出てたと思う。



で、それはしょうがないと思うんですよね。
誰が悪いわけじゃないし、皆乗りたい気持ちは一緒ですし、気遣いながら仲良く乗りましょうね〜人類皆兄弟、ゆっくり行きましょ人生は!!

なんて思ったんですけどね






目の前のおばちゃんがとても直角に首曲げてて、

あたしと顔向き合っちゃってる。



すんごい丁度いい具合に、
見つめ合っちゃってる。


しかもなんだろう、なんかもう、乗車率の高さに諦めちゃってる感じの雰囲気で、半ば顔が死んでるのね。時の流れに身を任せ過ぎてるのね。今はあなたしか愛せない状態。



それならそれでいいんだけども、
何も触れないんだけども、

それならそれで、



目 を 閉 じ て ほ し い 。





多分見てるけど見てないみたいな感じで意識はないんだろうけど、もうめっちゃ視線ど真ん中なのあたし。

黒目があたしを捉えて離さないっていうか、
距離近すぎてなんならちょっと寄り目っていうか。なんならちょっと怖い。

あたしもあたしで犬夜叉状態かつ、
首を動かすのもままならないので視線を外すわけだけど、

すんごい気になる。

約30cm向こうの目が
すんごい気になる。

こうなったら必死にね、意識ずらすしかないわけです。
心ここにあらず状態にするしかないわけです。

っていうと、こういう時はやっぱ九九っしょ。王道っしょ。

つってまぁ脳内で唱えたりしたりね。

(しろく24ー)

(ししち28ー)

(しは32ー)


(四苦八苦なうー)






九九すら出来ねぇ……






あたしもね、薔薇も恥じらう24ですよ。
そろそろこちらも恥じらう時期でしてね、

降りようと。
電車一本くらいなんだと。
始業5分前、ギリに出社する道だとしても、

あたし今この場にいるあたしを、自分を、救ってあげたい!!

もういいからって、
もう無理に九九を唱えなくていいからって!!


主要の駅で皆がドアから流れ落ちる様に出る時を、ひっそりと待ってたんだけど、





っれーーー?


あたし的にはね、あの江戸時代の「ええではないかええではないか〜」「あ〜れ〜!」
くるくるーっ

みたいなやつを狙ってたんですけど、
やだもう〜激しい〜降りちゃう降りちゃう〜これぞ不可抗力〜☆

みたいなやつを狙ってたんですけど、




なんか、乗ったドアと反対のドアが開くのね。しかも期待する程降りねぇの。
ドア側の少人数が降りて〜また乗って〜の繰り返しで、

全然降りないの。皆さん。
ウェーブなんて起こらず起こさず

the 静止。



「ちょ待てよっ!」

なんてキムタクる気も起きない。


諦めと朝の眠気と同時に意識が薄れていきまして、
もう目の前のおばちゃんに内心語りかけてたよね。



おばちゃん…

今のあたしはきっと数十分前のあなたで…

きっと今のあたしのように四苦八苦した結果が…

今のあなたなのね…

人が相手の気持ちを理解できる時っていうのが…

同じ境遇に置かれた時だなんて、ふふ。


皮肉よ(ね)「降ります!!!!!!」







寄り目だったおばちゃんが凄く力強い声とともに、起きた。
(なんならあたしも起きた。)



さっきまでの時の流れに身を任せきってたおばちゃんからの、まかさの転身。
鳥山明の世界だったら間違いなく髪逆だってた。サイヤってた。


「降ります!!」「降りまーす!!!」

って、寿司詰めの車内を掻き分けて降りる様に、

もう目が奪われちゃって、

目が離せなくて、

っていうかなんか、

意識朦朧としてたからなんかつられちゃって、

あたしもそのおばちゃんが降りれるように協力して道を開けてあげてね、
はい降ります降りますよーどいてどいてーってぐいぐい掻き分けてね。

やったねおばちゃん!下車成功!あたしGoodjob☆

なんて思ってたらね










気づいたらあたしも降りてた。

全然着いてないのに。





去りゆく電車にあんなにも疑問を抱いたのは初めてかも知れません。
あんなに静かに、「…何で?」
と呟いたのも初めてかも知れません。






職場最寄りから遅刻ギリでダッシュする中、
先輩の


「自分の力じゃどうにもならないことがあるから、人生面白いんじゃないの。」



って言葉を噛み締めましたが、

どちらかというと、辛いって感情が大きかったです。





(時と人と感情には流されないようにしなくちゃいけませんね、ええ。)
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