なつつき


なつのみどりが目にいたい。みどりに飲まれそう。
そういえば僕はどうして夏にここに来たがらないのか不思議だった。
そしてそれはこの屋敷を目にしたあたりで気づくことになった。
暑いのだ。疲れるのだ。スライム程度のHPしか持たないのでたどり着く頃には蒸発してしまいそうになる。
そしてやってきたはいいものの、当然どこも閉館しているので絵本読みもできなかった。
発情期の猫のような虫たちに追われながらぐるりと敷地内を歩いたので、気持ちのいい暑さだね等と達観することもなく、突然もう帰りたいのと泣きわめく子供みたいな格好でへたり込んだ。
でもへたり込んだときに水の流れが涼しさを運んでいることに気づいて、すこし救われた。
上から下へ流れる絶対的で完璧な法則はひとりの人間を簡単に救えるのだ。さらさら。

帰りには通り雨が降って傘を持たない僕はそれを浴びて帰ったのだけど、思わず走りたくなってしまうほど気持ち良かった。
そうして僕は大きな滴を離したがらない紫陽花を撮って、夏の月への覚悟をきめた。

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2020 7/2(Thu)
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-エムブロ-