『お題バトン』
●指定した三つの単語を使って小説を書くお題バトンです。
●小説ではなく詩でもOK
●表現できるならイラストでもOK
●一次でも二次でもNLでもBLでもOK
●更新頻度は自由。毎日ひとつずつで一週間。
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D髪/腕の中/合鍵(銀さち)
行為の後、恥ずかしがるさっちゃんに何を今更と言いながら一緒に風呂に入って。体洗ってる姿が色っぽくて、つい手を伸ばして胸を弄んだら「お風呂出てからね」とお預け食らい。じゃあ風呂出たからそのまま脱衣場で一発シケ込もうとしたら「髪乾かしてからね」と再びお預け食らい。
あーあー、いつ俺はお前ェを抱けるんだよと、タオルで髪を拭くさっちゃんを背後から抱き込んで、苦し紛れに服ン中に手ェ突っ込んで胸揉み始めて。多分すげぇ拭き辛いだろうに、さっちゃん何にも咎めねぇから調子に乗って乳首摘んだら流石に手を叩かれた。
それからドライヤーするから、って。離れないと銀さん火傷しちゃうわ、なんて言って俺の腕ン中から抜け出そうとしやがって。
あのね、俺ァ今とりあえずオメェの何かに触ってたいの。何か触って弄ってねぇとマジ息子が暴れ出しちまいそうなの。
だからさっちゃんの手からドライヤー取り上げて「俺が乾かす」って、半ば強制的に髪を乾かし始めた。今ここね。
「さっちゃんの髪はキレーだなァ。それだけは羨ましいわ」
指を通せばさらりと揺れる。そのまま下方へと梳けばしなやかに流れる。
「でも長ェと乾かすのが面倒だな」
「ご、ごめんなさい銀さん、やらせてしまって…」
いや、俺がやりたくてやってんだけどね。
「じゃあ後でさっちゃんのおっぱいで労らってくれや」
悪戯に言えば髪から覗く耳が赤くなる。こういう時普通に可愛いからね、コイツ。いつもそうしてりゃいいのに――なぁんて絶対ェ言ってやるかよ。
鼻歌混じりに手早く髪を乾かしてから、しっかりブラッシングもしてやる。本当はもっとこう女が使う椿油的なやつ?あーいうのが有りゃいいと思うけど、生憎うちにそんな色気のある物はねぇ。神楽の奴はまだ色気のいの字も芽生えてねぇからな。
それにしたってやっぱ女の髪は命って言うくれぇだしよ、ちゃんと綺麗にしとかねぇと嫌じゃん。特にさっちゃんの髪は元が綺麗だかんな、うん。よーし…こんなもんか。
髪から俺と同じにおいのシャンプーがフワリと香った。同じ筈なのに、さっちゃんのがより甘い気がする。
「おー、サラサラー。いいねぇ髪が強情じゃなくてよォ。何事も素直なのが一番だよ、まったく」
「でも私、銀さんの髪の毛好きよ。フワフワしてて、銀色も光に透けてとても綺麗」
何ともまぁいじらしい事を言ってくれる。俺は櫛を傍らに置くと、そのまま背後からさっちゃんを抱き締めた。
「さっちゃん、可愛い」
「えっ!?」
「カワイイ」
「っ……」
「バーカ、嘘に決まってんだろ」
「あ…そ、そうよね」
「の、反対の反対の反対の反対の反対」
「え、え!?」
ふふ、と笑いながらさっちゃんの頬に何度もチューしてやった。すると恥ずかしいのか、身を縮めて両手で顔を隠してしまった。
そういう事をされると余計に虐めたくなっちまうのがS心だ。抱き締めていた両手を寝間着の帯にかけ、それを無言で外す。次いで肩から着物を落とし、さっちゃんの上半身を露わにした。
「頑張って乾かした銀さんの手、労ってくれる?」
両手をゆっくり豊かな胸に添える。あったかい体温と、トクトク脈打つ鼓動が伝わってくる。
両手に力を込めれば目の前の肩がピクリと震えた。それに気を良くして、更に焦らすようにやわやわ揉みしだく。
すぐに手の中でさっちゃんの乳首が立ち上がっていくのが分かった。固くなったそれは控えめに俺の手の平を押し返す。可愛いそれを摘んで弄くってやれば、押し殺した喘ぎが漏れ聞こえた。
ふうふう肩で息しながら必死に声を耐える背中が可愛くて、なんかこう無性にさっちゃんをめちゃくちゃにしてやりたくなった。理性で抑えてんのにドSの声がやっちまえ・やっちまえと駆り立ててくる。応じるように俺の息子も臨戦体勢な訳だ。
(いただきまーす)
サラサラに乾いた髪を掻き上げて、いざ白い項に噛み付こうとした――その瞬間だった。
突然電話が鳴った。
完全に二人の世界に入ってたから、互いに体がビクッと跳ねた。うちの電話の音じゃないから多分さっちゃんの携帯だ。
「あ…」
「…いいよ、仕事のかもしんねぇし」
「ごめんなさい」
体から手を離せば、さっちゃんは身なりを直しつつ、部屋の端に畳んであった普段の忍服から携帯を取り出した。
「――もしもし。あぁ、なんだ、アンタか。…ええ。それはこっちで何とかするから」
口振りからして多分相手は痔持ち忍者だ。微妙に面白くなくて手持ち無沙汰にゴロリと横になった。
さっちゃんは早く切りたいのか、適当に急かすような相槌を打ちながら溜め息をついた。俺は黙ってそれに耳を傾けていた。
「あぁ…え?まだ?はぁ…まったく仕方ないわね、私の部屋に確か1つ残ってたわ。それ持ってっていいから」
じゃあね、と手短に通話を切って携帯を元の場所へしまった。
…なんか最後に聞き捨てならねぇ言葉が聞こえてきたんだけど。
え、何ソレ、どういう事。「私の部屋に」って「それ持ってっていい」って、つまりさっちゃんの持ち家があって、そこにあの痔持ち忍者上げるって事だよね。つーか俺さっちゃんの家どころか部屋の存在すら知らねぇんだけど。だってコイツいつも神出鬼没じゃん。ゴリラ原作者も「さっちゃんの持ち家は無い」的な事言ってたじゃん。
「銀さん…ごめんなさい」
それは何に対しての「ごめんなさい」?電話に出たこと?痔持ち忍者を家に上げること?それとも、俺に家の存在をずっと黙ってたこと?
卑屈な考えが段々と不満に変わり、それが怒りへとエスカレートした。
「そういえば俺、さっちゃんの家知らねぇんだけど」
「え?」
「連れねぇよなァ…俺さっちゃんと遊びでこんなにセックスしてる訳じゃねぇのに、情通わした女の家すら教えられてねぇなんてよォ」
「銀さん、違――」
「しかもさ、さっきの言い方からしてアイツはお前ン家の合い鍵持ってるんだよね?なんかショックだわ」
自嘲ぎみに笑うと、さっちゃんはブンブンと首を何度も振って俺に縋った。
「違うの銀さん!」
「何が違うってんだよ」
「私、自分の持ち家なんてないわ」
「……は?」
「いつもは旅籠を転々としているし、それに“部屋”っていうのは倉庫みたいな場所の事なの」
さっちゃんの話はこうだ。
忍はその職業柄ゆえ特定の場所に家を構えることはない。その代わり元御庭番の元締めが統括している忍の拠点があり、そこに各忍又は部隊ごとに割り振られた小部屋があるという。組織から活動に必要な武器や薬物が定期的に補充され、主に倉庫として利用しているらしい。まぁ当然具体的な場所などは教えて貰えなかったが。
「紛らわしい事を言ってごめんなさい…。でももし仮にそんな家があったなら、真っ先に銀さんに教えているわ!」
懸命に説明するさっちゃんの声を聞きながら、俺はふと気付いた。
(持ち家がないってことは、帰る場所がないってことだよな…?)
さっちゃんはいつも旅籠を転々としていると言っていた。つまり任務に出る前も、帰ってきた時も、こいつはいつも一人ってことだ。
そこでようやく俺は、今まで何故さっちゃんが執拗に万事屋に侵入していたのかを理解した。
(もしかして、寂しかったのか…?)
突然屋根裏から顔を出して居間に居座ろうとするのも。必要以上に俺に絡もうとしたのも。来る度何だかんだ言いながら新八・神楽と戯れていたのも。もしかしたら、一人で寂しかったからなのかもしれない。
そういえば毎回俺に怒鳴られて帰る時、顔は笑顔なのにどこか悲しそうな様子だった気がする。その時は「怒鳴られたからだろう」くらいに考えていたが、本当は人の温もりを求めていたのかもしれない。
そう考えると、さっちゃんが無性に愛しくなってきた。
「――家が無ェなんてよく言えたもんだよ。万事屋の屋根裏やら壁裏やらを勝手にリフォームしといてよォ。まるでお前の家じゃねぇか」
「ご、ごめんなさい…」
「リフォームしたからには、ちゃんと責任とって有効利用して貰わねぇとなァ」
「…え?」
「だァから!もうここがお前ン家でいいっつってんの!」
言いながら脇の箪笥からスペアキーを取り出し、それをさっちゃんに投げ渡した。
「帰る場所が無いなんて寂しいじゃねぇか」
驚きながら鍵を見詰めるさっちゃんを、有無を言わさずに抱き締めた。
「…っ!」
「本当はずっと寂しかったんだろ?」
「銀、さん…」
「辛ェ仕事やりながら、その辛さを独りで耐えるなんざ女にゃ荷が勝ちすぎるよ」
さっちゃんを抱く腕に力を込める。
「もう十分逃げた。十分回り道した。それに…十分ヤることもやったしな。そしたらいい加減答え出さねぇと…男として」
そして合い鍵を握るさっちゃんの両手を、その上からそっと包み込んだ。
「坂田家のお嫁さんにならねぇか、さっちゃん」
言い終わってめちゃくちゃ恥ずかしくなった。勢いで言葉を零しちまったが、冷静に考えたら俺さっちゃんに普通にプロポーズしちまったじゃん。何でこういう一番遠回しにしたい時だけ素直になってんだよ俺。
「っつー訳で、明日から、いや今日から?いや明日?あ"ーもうどっちでもいいわ、猿飛のさっちゃんから坂田のさっちゃんに変更だから!はい返事!」
「はっ、はい!」
「よし、寝る!」
照れ隠しもいいとこだ。勝手に言い置いて頭から布団を被った。暫くしてゴソゴソ布団の背後が動き、さっちゃんも寝る体勢になったのが分かった。
「銀さん」
「…………」
「銀さん」
「…………」
「ありがとう、私、全力で銀さんを幸せにするわ」
ぴったりと背中にくっ付いてきた温もりに寝たフリを決め込みながら、寝言のように呟いた。
「…俺のセリフ取らないで」
FIN.