2017.4.9 14:55 [Sun]
微睡みの幸福
らしくないミスをしてしまった。少しでも時間があると、シオンくんの好きな歌が脳内に流れる。
らしくない、らしくない、本当にらしくない。
シオンくんが頭から離れない。胸が痛くなる。
─ガッタン、ガッタン
電車に揺られながら、今日一日を反省する。
どうしちゃったんだろ、ボンヤリ考えながら残りの乗車時間を睡眠に費やした。
「起きて下さい」
耳にすんなり入ってくる声に、意識が覚醒していく。
シオンくんの声に似てるな、と思いながら隣を見れば本当に本人がそこにいた。
「し、シオンくん?」
「もう、乗車駅ですよ」
呆れながら、シオンくんは私の手を引き、ドアの前に立つ。
何でもないようにするその動作に困惑する。まだ、夢なのではないだろうかとすら思えてくる。
ドアが開き、シオンくんが電車を出ると同時に私も釣られて外の冷たい空気に当てられた。
夢心地だった感覚が、冴えて行く。
そもそも何故、シオンくんがいるのかが問題である。
「シオンくんが、なんでいるの」
「今さらですか。今日は用があったんでよ」
「そっか」
手は未だに繋がれたまま。
それが嬉しくて、笑えばシオンくんは毒を吐く。
「なんなんですか」
「なんでもない」
なんだ、私、彼が好きなのか。
凄く嬉しくて、凄く泣きたくなった。