どこかのだれか
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2017.4.9 15:02 [Sun]
恋の香り

「あっ、お姉さんだ」

出先のショッピングモールで、ルキがポツリと呟いた。シオンは、何を言っているんだと口を開くとアルバが先に言葉を発した。

「本当だ! おーい」 

アルバが女を呼ぶ。
そんな筈は、ない。女がいれば自分が何より先に気づく筈だとシオンは思い周りを見渡す。
何処にいる。
すると、此方に向かってくる人物が目に入った。黒のワンピースを着こなし、ワンピースとは対象的な白のコートを着こなしていた。 

「こんにちは」

それは、紛れもなく女であった。普段の服装とは打って変わり、大人たものであった。化粧も丁寧にされていた。
シオン達といる時とは、別人の格好に腹立たしさを感じた。

「お姉さん、綺麗」

ルキの素直な感想に、女は照れるように笑った。

「ありがとうね、ルキちゃん」

女は、視線をルキと合わせる為にしゃがみルキの頭を撫でた。

「僕は気づかなかったな。何時もと、雰囲気違いますね」

アルバの言葉に、女は立ち上がり困った顔をした。

「へんかな…?」

「あっ、いや、そう云う意味じゃなくて。驚きました。すごく、すてき、です」

アルバは言い慣れない言葉を言った為か、ボッと顔が赤くなる。そんな、アルバを女は可愛いものを見るように眺め「ありがとう」と嬉しそうに微笑んだ。
やってやれない。
シオンは、この状況にヘドが出そうだった。

「なぁ、シオン。お前もそう思うだろ」

アルバがシオンに同意を求めようと話を振る。シオンは、重たい口をのっそりと動かした。

「なに、色気ずいているんですか。男と会うんですか」

「おっおい」

「バレたか。流石、シオンくんだね」

相変わらず女は、シオンの言葉は気にせず会話を続けた。
そんな態度にも、腹が立つ。

「お姉さん、かれしと会うの?」

「彼氏ではないけど、男の人と会うよ。じゃ私、行くね」

手を振り去る女を、シオンは複雑な気持ちで眺めていた。別に、女が誰と会おうが構わないが彼氏でもない男と会うのにあの気合いの入れようがシオンは気にくわなかった。
自分と会うときとの差はなんだ、と思いながら。
女からした、甘い香りが鼻に残っていた。

「香水付けすぎですよね。公害かよって、感じですよね」

アルバに同意を求めるように呟けば、アルバは難しい顔をした。

「香水? そんな匂いしなかったぞ」


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