prof:bkm:
30代/二次元/メンタル/お洒落
さようなら
17:49 2015/7/5
話題:さよなら

退職届けを出して以降、原田さんには仕事を辞める事を伝えられずにいました。時々職場で顔をあわせて話を切り出そうとしても「あっハウさーん!おはよう!今日も綺麗だね!デートしようよ!」「俺嵐のCD買ったよ!今度貸すね!」みたいなノリで来るため、なかなか本題に入れないまま休憩時間が終わってしまって。そしたら同期の子と女子トイレの洗面所で会った時に「ハウさん。なんかですね、原田さんハウさんが仕事辞める事もう知ってましたよ」と報告を受けたんです。まだ正式な退社発表はしていない頃でした。

「えっ……どこで知ったって言ってありましたか?」
「それが、誰から聞いたんですか?って尋ねても絶対に教えてくれなくて。もしかしたら誰かが話してるのを聞いちゃったのかもしれませんね。ハウさんは原田さんから何も言われてないんですか?」
「はい……」

その日原田さんをあまり人の来ない3階へ呼び出し、自分の口から直接仕事を辞めると伝える事にしました。うぬぼれた考え方だとは思うんですけど、仮にもわたしの事を好きだと言ってくださる人だから、朝礼で発表がある前に挨拶をしておきたかったのです。しかし原田さんはなかなかわたしの話に耳を傾けてくれませんでした。こちらが真剣な顔で何か言おうとすると、嵐の相葉ちゃんのドラマがどうだとか、忍たま乱太郎がどうだとかドラゴンボールの新しいアニメがどうだとか、そういった話題で声を遮るんです。

わたしはいよいよどうしたらいいのか分からなくなり「ごめんなさい」と力なく頭を下げました。するとさっきまで大ボリュームだった声が突然ぴたりと止まり「ごめんなさいって事は、ハウさんは本当に行ってしまうんだね」との問いかけ。「はい」「俺ともお別れって事だよね」「はい」おそるおそる顔をあげると、原田さんは眉尻の下がった笑みを浮かべていました。そして頭の後ろで両手を組み「あーあ!そっか、お別れか!ありがとね、ハウさん。あなたは僕が好きになった人。だから潔く見送るよ。さようなら」と言いました。「短い間でしたけど、お世話になりました。あなたの明るさにいつも救われていました」「あっ、そういうのやめて!俺大人だけど普通に泣くから。はやく!はやくハウさん行って!」わたしはもう一度頭を下げ、言われたとおり原田さんに背中を向けて廊下を歩き出しました。

その日から今日まで原田さんとはお話していません。この間食堂で見かけた時は新しく入った事務員の女の子達に「君たち可愛いね!名前何ていうの!?」と声をかけていました。さようなら、原田さん。どうかお元気で。

拍手してくれた方々どうもありがとね。

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