何十年住んでいても時々


ここが自分の家だと思えない母


夜に家を出ようとする


ちょうど私がいなかったからか


帰ると母が玄関口で座っていた


「私がいくら言ってもきかないのよ。目が離せないわ」


妻が困り果てていた


「何やってるの?もう寝る時間だよ。自分の部屋があるんだからさっさと布団敷いて」


私が言うと


「今日はここに泊まらせてもらおうかねぇ」


といった具合


認知症は当人に自覚はあるものの


それを他人に悟られぬよう、取り繕うものだが


時々自分から


「何が何だか分からなくなってきた」と言う母


介護する側される側


正気を保つ闘いが続く