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あなたなしでは生きていけない。

-あなたなしでは生きていけない-(しん風)



*************


『ちょっと…ちょっ…待てって…』

しんのすけの部屋。


壁へと追いやられる僕。

僕が逃げられない様に…
手首を強く握るしんのすけに

何だか少し恐怖する。

『…何?さっきの…』

いつもより全然低いオクターブで、しんのすけの腕に力が込る。

『だ…から…クラスの友達…』


言うな否や顎を掴まれ力一杯引き寄せられる。

『クラスの友達が、こんな事すんの?風間くんの《友達》って凄いね。《友達》になればキスなんて簡単に出来るんだ。』


確かにそれは事実だ。
僕は確かに…
クラスの《友達》と…

《友達》だと思ってた奴と…

キスをした。


いや…

正確には《された》のだけれど…


それも全て

しんのすけとの待ち合わせに遅れた僕が悪い。

《友達》というレッテルの前で油断した僕が悪い。


しんのすけを裏切った僕が悪い。


しんのすけにあんな姿を見せてしまった…僕が悪い。

全部

全部


僕が悪いんだ。


『………ふ…』

悔しさと切なさで泣けて来た。

しんのすけにとてつもない怒りと

とてつもないショックを与えてしまった事に。

切なさと悲しさで

目から次々と涙が溢れ落ちる。


『ごめん……ごめん…しんのすけ』

僕には謝る事しか出来ない。

『ごめん…ごめん…』
しんのすけの気の済む様に…

めちゃくちゃにされるしか…

僕にはそれしか成す術はない。


嗚咽混じりに謝り続ける僕に、しんのすけがゆっくりと問いかける。


『………風間くんは…俺の事好き?』


その問いに僕は何度も頷く。

だって…
大好きだから…
しんのすけ以外見えないから…



『好き。………誰よりも…』


飾る必要のない言葉をゆっくりと放つ。

見上げる先には

少し震えた瞳のしんのすけ。

『それが聞ければ…もう…いいや…』



僕に掛けられた拘束を全て解放しながら


しんのすけが言った。


『俺は…風間くんに捨てられたら…生きて行けない…だから俺を殺さないでね』

そう言いながら…


今度は優しく
僕の顎をを引き寄せる。

しんのすけの腕の中に身を預けながら

僕はもうとっくの昔に
しんのすけ無しでは生きられなくなってるよ。

と心で呟き


そっと

瞳を閉じた。

夏祭り

夏祭り(マサネネ)



『あ。』

甘い蜜の匂いに誘われて覗き見る先には、キラキラ綺麗で美味しそうな飴細工の屋台。


『おー。ねぇちゃん!可愛いねぇ-。おまけしたげるから買ってってよ!! 』

頭に鉢巻きを巻いた愛想のいいオジサンが、太い指で器用に只の飴の固まりを変身させる。


ネネはこういうの大好き。


何時間でも見てたい。

だって、素敵じゃない?


機械的じゃなくて、その人じゃなきゃ作れないモノって。


オジサンの指をジッと見てたら、フッと目尻を誰かの指がかすめて。

反射的に見やると、マサオくんが一番手前のウサギの形をした飴を手に取った。




もうネネよりずいぶん大きくなっちゃった。

一年前まではネネのが5センチ位高かったのに…


今日のこのお祭りにはマサオくんが誘ってくれた。

ホントはネネが皆を誘うつもりだったんだケド。

皆、都合悪くて結局二人きり。

まぁ。

嬉しいンだけど…


マサオくんと二人だから

いつもよりお化粧に時間かけたし…

ママに新しい浴衣も買って貰ったのに…
マサオときたらネネより『浴衣のが綺麗』なんて!ほんとに。

バカ。


でも、そんなマサオくんを…
『幼なじみ』じゃ無くて『男の子』として見ていたのは

いつからだろう…。


覚えてないや…
だって気付いたら目が追ってるんだもん。


でも…このキモチをマサオくんには言えないし、言わない。

だって…ネネのキモチを言って今の関係が壊れるのは絶対嫌だから…



そんな事を考えながら、ぼんやりオジサンの指を見ていたら。


フッとマサオくんの声がして…

『オジサン…このウサギの飴下さい。』

ちょっとビックリして、マサオくんを見たら買ったばかりのウサギをネネに差出した。

『はい。あげる…』

差出されたピンク色の甘くて小さなウサギに指を伸ばし受け取る。
やばい…

すっごい嬉しい。

ありがとうって言う前に、オジサンがもう一つ差し出しながら笑う。

『カヮイィお姉ちゃんが買ってくれたから…ハイ!彼氏の分おまけね!』

なんて。



オジサンに相槌をうちながら笑うマサオくんを見ていたら…


少しは…

頑張ってもいいのかな。

って…



そっと胸で思った。

浴衣

-浴衣-(マサネネ)





八月ももう半ば

昼間には煩いセミの声。

それも、日が落ちるとパッタリ止んで、聞こえてくるのは近所の公園でやっている盆踊りのメロディだけ。


『遅いなぁ……』

僕はボソリと呟きながら使い古した携帯のディスプレイを開いた。

今日が今年の夏。最後の盆踊りと言うことは、前に回ってきた回覧板で知っていた。

まぁ。
それで、いつもつるんでるメンバーに声をかけたのだけれど、それぞれ忙しいらしくて、オーケーの返事を貰えたのは彼女だけだった。

いや…いいんだ。
むしろ嬉しいというか…

来年は高校受験だし…
こんなイベント事に参加なんて出来なくなっちゃうし…

そんな事を考えながら、僕は携帯のディスプレイを閉じた。


彼女の事は、もうずいぶん前から『異性』として見ていたと思う。

気付けば自然と目が追ってるんだ。

でも、僕はこんな性格だし、彼女もあんな性格だから。

何も言えなくなってしまう。


とても好きなのに…


今のままの

この関係が、僕の一言によって崩れてしまうなら…

いっその事。

言わない方がいいんじゃないかって…


いつも逃げ腰だ。

だらしない。




『はぁ…』

浅いため息をついて、僕はまた携帯のディスプレイを開いた。



『まった?』


ふいに声をかけられて、僕は顔を上げる。


視線の先には、淡いピンクの浴衣を着た彼女。

『遅いよ…』


チラリと顔を見やれば薄い化粧を施した彼女が微笑む。


『…どう?』

そっと聞かれれば、素直な気持ちが口からこぼれ落ちる。


『綺麗だね…』


うん。

本当に…

だけど、余りにも恥ずかしくて、ついつい。

『…浴衣が…』

なんて。


『何よ!!ネネは綺麗じゃないってーの!?このおにぎりぃ!!』

彼女が細い腕を振り上げながら怒る。


『痛っ!そっ…そんな意味じゃないよ-!』


彼女の痛くないパンチを受けながら


今日は少し頑張れそうだと、胸で思った。




ぉゎり

甘い蜜

-甘い蜜-(しん風)


軋むベッド。

お気に入りのCD。

飲みかけのミルクティー。

俺の下で狂い鳴く愛しい恋人。



さっきまで散々暴れたベッドの上は紙を丸めた様にグシャグシャだ。


『風間くん…』


俺は何よりも可愛くて、何よりも恋しい風間くんの名を呼びながら、その汗ばんだ背中に何度も何度もキスを落とした。

『んっ…ぁ』


肩胛骨をなぞる様に唇を這わせると、風間くんはその細い背中を丸めて甘い声を漏らす。

かわいいな。

もっと虐めたくなって、俺は透き通る様な風間くんの背中に噛みついた。

『ぁ…しんの…すけ…』

甘い吐息ごと名前を呼ばれれば、俺の中の獣が再び目を覚ます。


獣の前で迷子のうさぎがただただ我を忘れて鳴く…

甘い。甘い。


全身から滲み出る甘い蜜は、俺の中の獣にとっての媚薬。


甘い。甘い。

いつだって…

俺を狂わすのは君。


いつまでも

尽きる事を知らない。


君の


甘い。甘い。


蜜。

打ち上げ花火

-打ち上げ花火-(しん風)


『あー。花火キレィだったね。』


毎年恒例の町内花火大会が終わって、僕としんのすけは肩を並べて家路へと向かっていた。

『最後の特大花火はマヂで感動した-』

『お前、さっきからそればっかりだな…』

『だって、マヂで感動したんだもんさ-』

幼稚園の頃は、幼なじみ五人とその親達で毎年見に行っていたけれど、だんだん。
そうだな。中学に入ってからなんて全くといって良いほど見に行かなかった。

僕はね。
ネネちゃんや、マサオくん。ぼーちゃん、それからしんのすけは何回か見に来ていたみたいだけど。
僕は勉強の方が忙しくて、それ所じゃなかった。

『まぁ。確かに、綺麗だったけどさ。』

『だよね!やっぱり- !風間くん誘って良かった!』

高校を卒業してから、はじめての夏休みのイベントがしんのすけとの花火大会だった。『俺、花火って大好きだなぁ-』


横を歩くしんのすけをチラリと盗み見て、僕も軽くうなずく。

『うん。確かに…僕も好きだな。』

『これからも毎年一緒に来たいね-』

空を見上げながら笑うしんのすけの何気ない一言に、何だかとても嬉しくなる。
だって、それは来年も。これから先も、僕との繋がりをもっていてくれると言うこと。

…だよな? そう…取っても…いいんだよな?

嬉しくて、胸が苦しくなって。切なくて…不覚にも目元が潤んでしまう。

『ね。風間くん。また来ようね。』

『うん。』

こんな顔を見られたくなくて、うつ向いたまま応えれば、しんのすけが歩みを止めて僕を見る。『……泣いてるの?』

『…ないてない。』

言葉とは裏腹に、瞳からは意思とは関係ない涙が、次から次へと溢れ落ちて、頬にその名残を残し続ける。


『そっか。』

『うん。』

しんのすけの長い指先が、僕の『勝手』な涙をすくって、笑う。

静かに。

続ける。



『これからも…大好きだよ。』



溢れる涙を隠すのも忘れて、顔を上げればそこには今にも泣き出しそうな笑顔のしんのすけがいて。

ソレを隠す様に僕の唇にキスをした。
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