病み注意。
気が付くと真っ赤に染まったぼく。周りには幾千の屍。
ずしりと手に重みを感じて、視線を向ける。そこには赤く濡れた凶器。
しばらくそれを見つめ、そして理解する。あぁぼくが殺したのか。
不思議となんの感情も浮かんでこない。もしかしたら麻痺しているのかもしれない。
ぼくはそのために造られた化け物。そうだとしてもおかしくない。
殺したくなかったけど、……化け物だからしかたがないんだ。
(本当に?)
重い身体を引きずりながら歩く。ぴちゃぴちゃと音を立てながら血が滴る。
ふ、とガラスにうつる自分をみた。笑っていた。ひどく楽しそうな、狂気に歪んだ笑顔。
――っ!!
コ レ ガ ボ ク ?
「あ゛ぁあ」
ふいにフラッシュバックする記憶。逃げまどう人々、おもしろがって追いかける自分。
死にたくない助けてくれと懇願する声を無視して頭を打ち抜く。飛び散る脳髄。命をむしり取る快感。
自分の身を守るはずが、いつしか残虐な無差別殺人鬼。
しかたがないなんて嘘だ。だってこんなにも殺しを楽しんでるじゃないか!
「ぅあぁあああああぁああ」
突如として麻痺していた感情がわき起こる。
人を殺してしまったことに対しての、それを楽しんでいた自分に対しての激しい嫌悪感。
「ぁああぁああ……ぁ」
肺のなかの空気を全てはき出してもまだ、足りない。
のどが痛い。苦しくて吐きそうで、でも自分が殺してしまった人たちはもっと痛くて苦しくて、そして怖かったんだろうな。
手に持つそれが目にはいった。頭に突きつける。引き金に掛かる指がふるえる。目を瞑る。
『おいおい、逃げるのか』
どこからか声がした。
ここにはもう自分以外誰もいないはずなのに。
反射的に目を開けた。そこには自分とよく似た、しかし自分とは違う金色の瞳を持つ少年の姿。
『死ぬなんてじょーだんじゃねぇ。おれはまだ殺し足りないまだ生きていたい』
聞き慣れた自分の、でも自分じゃない声。
ガシャンと、音がした。手から滑り落ちる凶器。
自分が自分じゃなくなる感覚。
遠のく意識のなか、最後に聞こえたのは、やさしい声。
『死ぬなよアレルヤ。おれも一緒に背負うから』
殺したくて殺したくなくて、死にたくて死にたくなくて。
でも人殺しの罪を背負って生きるにはぼくはあまりに弱すぎて。
だから、きみが生まれた。
+ あとがきというなの言い訳 +
ハレさん誕生捏造話。く、暗い。こんなはずでは!
でもイっちゃったアレは超楽しかった(ぇ
実は最後のくだりが書きたかっただけというシロモノ。